When The "Saints" Go Marching In Ivalice   作:N22b

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38-3 Way to The Doomsday (Alois Orks)

B.B. 761 8月12日 ザランダ

ユードラ帝国国軍第1機動戦術群

第1旅団本部

 

「全旅団をオーボンヌに?どういう事です?」

電話口に向かって第1旅団長アロイス・オークスが叫ぶ。電話口の先は西方オーボンヌにある群司令部だ。帝国内最精鋭を誇る第1機動戦術群(1機戦群)は、主戦力たる4つの旅団を国境地帯のユードラ側境界に接するザランダの郊外に置く一方、それらを指揮する司令部はオーボンヌに置かれていた。帝国の斜陽化が顕著になり、20年程前に法王と皇帝の国家運営方針に相違が目立ち始めた頃、1機戦群の強力な即応戦力がライオネルの皇帝の手元にある事を懸念した法王府が、司令部と主要幹部の住居だけをオーボンヌに移させた。首から上と下を分けようとしたのだ。

 電話口の向こうでは、司令部の幕僚長がアロイスをなだめながら事情を説明する。曰く、「法王猊下が、即応対処を担う1機戦群を特別に表彰したいと言われている。」「表彰式はオーボンヌの群司令部で行われる。ついては隷下全4旅団を同地に集結させよ、との命が下された。」とのことだった。

「ウチは9月から即応旅団ですよ?ザランダを空けられるわけないでしょう!」

アロイスは一際大きな声を上げた。

 1機戦群を構成する4つの旅団は「即応」「即応予備」「整備」「訓練」のローテーションを回しながら運用されている。あらゆる事態への即時対処を求められる即応旅団が駐屯地を離れる事などあり得なかった。

「それに、命令とはどういう事です!?我々は皇帝旗下、統合軍元帥の直轄部隊です。法王府の指図を受ける筋合いはありません!」

受話器の向こうの首席幕僚は引き続きアロイスをなだめにかかる。

「わかる!我々も同じ事を言った。だが先方は「近年、冷却化した法王府と行政府の関係改善の象徴としたい。」「皇帝陛下は快諾された。」の一点張りだ。各旅団のオーボンヌへの滞在は9月10日のみ、武器・装備等は基地・駐屯地に置いたままでよいとの事だ。その日の国境監視は僧兵軍が肩代わりする、とも言っている。これ以上ゴネると、奴等、陛下に直接、難癖を付け始めかねん。」

 皇帝に面倒を掛ける訳にはいかない。アロイスは特大の溜め息をついて了承した。たった一日の行事のために第1旅団だけでもこれから5000人に移動の準備をさせなくてはならない。高機動力が売りの1機戦群だが、コレは流石に士気が上がらない。人間の移動だけで良いというのが、唯一の救いだろう。

(まあ、今、一番胃が痛いのは幕僚長だろうな。これから各旅団に同じ事を言うのだろうが、特に整備・休養ローテの第3旅団の反発は我々以上だろう・・・)

時魔道士上がりの温和で気の小さな幕僚長の顔が脳裏に浮かぶ。

 

8月15日

 アロイスは旅団付の宗教士官から、戸惑い気味に「非ファラ教徒の少数民族将兵の内、西大教区内の出身者を帰郷させるように」との指示を伝達される。全国一斉の統一指示なのだ、と。

 アロイスは迷うことなく撥ね付けた。

「ミュロンドに伝えろ。筋が通らんにも程がある。文句があるならかかってこい、とな。」

普段はねちっこい宗教士官も、この余りに無理筋な指示の趣旨を伝えられていないのか、それ以上、何も言うことは無かった。

 

9月8日

総勢2万の帝国軍最精鋭部隊員が、礼装の入ったスーツケースを携えて、輸送艇とトラックに乗り込む。行き先はオーボンヌにある第1機動戦術群司令部。ほぼ全ての装備と、僅かな当直員だけを基地・駐屯地に残しての出発だった。

 

9月10日

 早朝、アロイス達は僧兵軍の約半分が「叛乱軍」として蜂起したことをニュースで知る。当然、表彰式は中止。これが謀略だと気付かない程、愚かなアロイス達ではない。速やかにザランダに戻るべく、準備を整える。だが、彼等が出発するよりも先に、ザランダの当直員達から「基地を叛乱軍に接収された。」との一報が届いた。

 アロイス達はオーボンヌでの籠城を決断する。

ライオネルの統合軍総司令部と連絡を取る。総司令部は混乱していた。叛乱軍に加担しなかった僧兵軍と連携して鎮圧に当たる、という皇帝の方針は示されたものの、僧兵軍の動きは鈍い。30万の叛乱軍を国内で鎮圧するための作戦計画など事前に準備されているわけもなく、全てをこれから始めなければならない。どの基地・駐屯地も自隊の警備体勢を維持するのが関の山だった。

 

9月12日

 叛乱軍の動きから、その目標が国軍ではない事が分かってきた。彼等は籠城する国軍基地には目もくれず、国内のヤードー〜ドーター・ライン以西に点在する少数民族自治区へと歩を進めている。その目的を導き出せる者は居なかった。

 

9月13日

 ライオネルの総司令部を通じて、国軍各基地が派出した偵察部隊から、余りにも非現実的な報告が続々と届く。一言で表現するなら、それは「虐殺」だった。叛乱軍は自治区の各市町村を炎で囲い、誰も逃げ出せないようにしてから無差別に砲爆撃を加えているという。正気の沙汰ではない。

(西大教区の少数民族出身者を帰せと言ってきたのは、このためだったのか・・・!)

アロイスは法王府の指示に従わなかったことに心底安堵した。

叛乱軍の目的・・・声明かなにかは出ないのかとアロイス達は報道を確認するが、何もない。何の意思表示もなく、ただ黙々と少数民族を殺し続けている。こんな事があり得るのか?

旅団内の少数民族出身者が取り乱し始める。

「我々だけでも、出ましょう!作戦命令が下るのを待っていては、皆殺しになってしまう!」

アロイスは逡巡する。この数ヶ月、法王府に気取られることのないよう、この「群司令部」で「準備」を進めてきた。ザランダの装備がなくても、当面戦える装備と弾薬は、ある。だが、それはこの事態の為に用意したものではない。しかしながら、この事態を看過して良い理由もまた無かった。「鎮圧」という皇帝の大方針だけは出ているのだ。自分が進言すれば、恐らく群司令は承認されるだろう。サディアには済まないが、やるべきか・・・

 その時、ライオネルから、さらなる追い打ちをかける情報が与えられた。

「同盟諸国軍、国境地帯を越えて侵攻」

「敵はヤクトをグロセア機関で航行。大型戦・爆・揚陸飛空艇群多数の来襲を確認」

「敵の先制攻撃により、国境部レーダー・防空サイト壊滅」

「ライオネル総司令部は、同盟諸国による本格的侵攻と判断」

アロイス達は驚愕する。

同盟諸国軍が集結していることは知っていた。だが場所は国境地帯から離れた内陸部。情報部門は、「例年よりは大規模だが、関連情報によれば定例の年次演習だ。」

と評価していた。関連情報とは何だ、と詰め寄ると、法王府の人的情報(ヒュミント)だと言っていた。

 仮にその情報が間違っていたとしても、「内燃機関のエンジンであれば」とても国境地帯を越えて侵攻出来るような能力は無いものと、皆、高を括っていた。だが、現地の情報が間違っていなければ、敵は主力飛空艇群をヤクトを越えて送り込んでいる。

 

アロイス達は気付く。全てがグルなのだと。

「叛乱軍」の蜂起と、同盟諸国軍の侵攻がほぼ同時に起きた。

僧兵軍は、叛乱軍への対処を理由に、同盟諸国に対しては動かない。国軍からの支援要請にも応えない。

国軍は、何を置いても同盟諸国軍の侵攻に対処しなければならない。即応対処の要たる第1機動戦術群を無力化された状態で・・・叛乱軍への対処に回す余力はない。

「全部、繋がっていたんだ・・・叛乱軍、叛乱に加担しなかった法王府の連中、そして、同盟諸国も・・・」

ライオネルの総司令部も同じ結論に達した。

敵は、ランベリーを主体とする同盟諸国軍と、法王府の連合体。法王府の目的は、ユードラ帝国の一方的解体と、彼等が新たに領土と定めた西大教区内の民族浄化。そして、同盟諸国の目的は、切り離された東大教区、すなわちライオネル管区とルザリア管区東部の占領。双方の利益を一致させた連合作戦。

手元にある兵力をどうすべきか・・・アロイス達、1機戦群幹部の思考は振り出しに戻る。混乱する総司令部を当てにはできない。自分達で作戦計画を練り上げて上申するしかない。それでもダメなら、独断専行だ。

 

 総司令部経由で情報が更新される。フォボハム方面に展開した叛乱軍主力の一部が壊滅したという。ザランダから奪われた、要塞化陣地制圧用飛行砲艦「インビンシブル」も、そこで沈んだ、と。

「何処かの国軍部隊が独自にやってくれたのか?どこの部隊だ!やるじゃないか!」

少しばかりの希望が見えてきたと、アロイスは総司令部に確認する。だが、フォボハム方面の国軍部隊から出撃報告は上がっていない、とのことだった。

(情報が錯綜しているだけかもしれない・・・)

そう考えたアロイスは、一旦、小用の為に席を外す。もうじき正午になろうとしていたが、朝から一度もトイレには行ってなかった。

「アロイス」

人気のないトイレを出たところで、呼び止められる。聞き慣れた声だ。

「・・・サディア」

振り向くと、そこにはサディアとゲルンの姿。

「どうやって入ってきた?すっかり、人外になっちまって・・・」

アロイスはこの日初めての笑顔で突っ込む。

サディアも、伏目がちに笑い返すと口を開いた。

「起きたよ。「最悪の事態」だ。」

アロイスは頷きながら返す。

「この状況か・・・君はどれだけ把握してる?確かに最悪だな。」

しかしサディアは首を横に振る。

 

「「聖天使」が起きた。フォボハムだ。

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