When The "Saints" Go Marching In Ivalice   作:N22b

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08 Prepalation to pick her up

B.B.754 9月15日、フィナス河中流部上空

 

「アカツィア24、フィナス・ベース」

アレクサンドラ・ネフスカヤ少佐が被るヘッドセットの受話器に、基地からのコールが入ってきた。

「こちらアカツィア24、どうぞ」

「アカツィア24、コール・オフだ。約15分後に雷雲が基地周辺を通過する。」

「アカツィア24、了解、コール・オフ、フィナス・エアベースに帰投します。ブレイク、訓練項目については全て終了。」

「フィナス・ベース、了解。現在、基地周辺、雲量3、雲底1000ftの層積雲、風は260°13kt、視程15km」

「アカツィア24、了解、ありがとう。」

 ベースとの交信を終えると、ネフスカヤ少佐は旋回方向を確認し、操縦桿を左に倒す。ゆっくりと水平線が時計回りに回転し、やがて機首が左へと動く。正面に黒い点のように浮かぶ基地が見えたところで操縦桿を右に倒し、機体を水平に戻す。基地の周りの雲はまだまばらだが、その背後には、高々と塔状積雲がせり上がっていた。ベースが言っていた雷雲だろう。

「でかい雲ですね。間に合いそうですか?」

ネフスカヤが後ろからの声に気付いて振り返ると、先ほどのホイスト訓練でピックアップした陸軍特戦隊員が兜を脱ぎながらコックピットに顔を突っ込んでいた。

「あと10分ほどで着陸よ。運が良ければ、ずぶぬれになる前に基地内まで戻れるかもね。」

「そいつは良かったです。しかし、コール・オフがかかる前に、山岳地ホイスト・ピックアップ訓練を最後まで出来たのは運が良かった。やはり、あの高度まで降りると、相当「やられる」んですかね?」

「そうね。砂漠の山岳地帯で低高度のホバリングなんて、一番、整備屋泣かせには違いないわ。ミミック菌と砂のダブルパンチで、エンジンが一気にダメになる。だからあなた達陸軍特戦隊の山岳地ピックアップ訓練は4半期に1度だけ、というわけ。」

そこまで答えたところで、ネフスカヤは基地の管制塔をコールする。

「フィナス・タワー、アカツィア24、基地から5マイル、リクエスト・ランディング」

「アカツィア24、風向250/15ノット、着陸許可します。」

 管制塔から早々に着陸許可が出た。ネフスカヤは機を着陸態勢に持っていく。とはいっても、降着ギアは出す必要もなければ、高度を下げる必要もない。前方のフィナス・エアベースは「浮かんで」いるからだ。

「アキュラ中尉、戦死の想定終わり、通常業務に戻りなさい。」

ネフスカヤが、それまで黙って横に座っていたモーグリの副操縦士に伝える。

「コ・パイロット了解、では、以後、管制交話はこちらでとります。フィナス・エアベース、基地基点高度3000フィートを保持。推奨高度3050フィート。」

「了解、3050フィート」

 オート・パイロットを切り、速度を落としつつマニュアルで高度をキープする。やや風に息があるが、ネフスカヤの技量であれば問題は無かった。

 進入灯に沿って機体を進める。基地を空中に支える巨大なグロセア・リングが視界の両脇へと流れていく。

「フィナス・タワー、アカツィア24、基地内に進入、3050フィート」

「アカツィア24、3050を維持、グラウンド・コントロールにコンタクトせよ。」

「了解、コンタクト、グラウンド」

 アキュラ中尉は手元の交話機の周波数を管制塔から基地内コントローラへと切り替える。

「フィナス・グラウンド、アカツィア24、基地内に進入。」

「アカツィア24、ゲート・ナンバー16」

「ナンバー16、アカツィア24」

 グラウンド・コントローラから駐機ゲートを指示されたアキュラは手元のチャートでゲートの高度をチェックする。ナンバー16は、基地の基点からプラス50フィート。すかさず機長のネフスカヤにリコメンドする。

「ゲートナンバー16、高度3050フィート、現高度維持してください。」

 どうやらベース側で、高度変換しなくてもいいようにゲートを調整してくれたようだ。

「了解、3050フィート、ゲート16、視認」

 当然、ネフスカヤもアキュラもどのゲートが基地のどこにあるかは頭に入っている。しかしそれでもチャートを見、リコメンドし、復唱することが軍のパイロット達にはたたき込まれている。過去、慣れにまかせて基本手順を怠り、事故を起こしたパイロットは数知れない。

 空中に浮いたまま、ゲートの脇に到達したネフスカヤは、設置されたライトの指示を頼りに、機体の位置を適正に保つ。やがて軽い衝撃が機体の下部に響き、ライトがオール・グリーンになった。ゲートが機体の拘束を完了した証拠だ。ちょうどその時、コックピットの風防に雨粒がひとつ、ふたつとシミを作り出した。

「っと!さ、急ぎましょう。」

 ネフスカヤに急かされたアキュラは、迅速かつ正確にエンジンカットのチェックリストを読み、手順をこなしていく。グロセア・エンジンの回転が止まったのを確認し、最後にバッテリーをカット、これで手順は終了だ。

「どうも、ご協力ありがとうございました!」

 先ほどの陸軍特戦隊員が礼を言う。ネフスカヤ達も会釈で返した。チャートをフライトバッグに詰め込み、急いで機体を降りると、ラッタルを伝って基地施設内に入る。後から入ったアキュラがドアを閉めるのと同時に、急激に雨足が強まりだした。アナウンス・マイクが入る。

「基地雷注意報発令、作業員、総員屋内に退避」

 ネフスカヤがほっと溜息をつくと、脇にいた整備係長が冷やかした

「ゲートに入るところを見てましたがさすがですね。ネフスカヤさんじゃなかったら、今頃ずぶぬれになってますよ。」

「やっと勘が戻ってきたところよ。産休のブランクは大きかったわ。」

「またまた、ご謙遜を・・・コーヒー飲みます?」

「ありがとう、でも先に司令に報告しないとね。アキュラ中尉、デブリーフィングは待機室でやるから準備しておいて。」

「了解しました。」

 アキュラが体の半分ほどもあるフライトバッグをかかえて走って行くのを見届けたネフスカヤは、ミッション・リポートのために司令室に向かった。

 エレベータを上がり、司令室の正面入口前に立ったネフスカヤが脇を見ると、備え付けのランプは橙色に光っていた。つまり来客中だ。

 3分ほど手持無沙汰に待っていると、ランプが緑に変わった。しかし、まだ客が出てくる気配は無い。やや不審に思い、隣の総務事務室の勝手口から司令室の中をのぞくと、ちょうど司令と目があった。

「おお、ちょうどよかった、少佐、入ってくれ!」

 同盟諸国統合空軍フィナス航空基地司令、レオニード・ジェルジンスキー准将が相変わらずの人懐こい笑顔で手招きした。客とおぼしき情報軍の将校がまだいるのを見て、ネフスカヤは一瞬戸惑ったが、招かれるままに室内に入ると、不動の姿勢をとった。

「アカツィア飛行隊、ネフスカヤ少佐、24番機、陸軍特戦隊との協同訓練を終了し只今戻りました。人員、機材共に異常ありません。」

「はい、ご苦労さん。どうやら、リカバリーもばっちりなようだな。」

「技量の方は何とか・・・でも、3人も産むと、体型の方はもうリカバリー出来ませんね。」

 ネフスカヤは、がっちりと張った腰に手を当てる。

「いやいや、まだまだ十分魅力的だよ。ああ、そうだ。こちら、情報軍のシュワルナゼ中佐・・・」

「どうも、情報軍外事部調査分析課のチェスター・シュワルナゼです。」

 情報軍の純白の制服に身を包んだ、やや落ち着いた感じの壮年の将校は軽くはにかみながら会釈した。

「あ、アレクサンドラ・ネフスカヤです・・・」

 何の関係もないと思っていた目の前の情報軍将校を突然紹介され、ネフスカヤはやや面くらったが、ジェルジンスキーはかまわず続けた。

「彼女が先ほど話していたネフスカヤ少佐だ。セイレーン輸送艇の運航に関してはウチのトップだ。これで3児の母というのがまたすごい。」

「私もてっきり、寿司職人みたいな強面のベテランを想像していたんですよ。名前を聞いてアレと思ったんですが、そうですか、イヤ、意外と言っては失礼ですね。」

 シュワルナゼも感心した面持ちで頷く。

 未だに成り行きを把握出来ていないネフスカヤは咳払いするしかなかった。

「ああ、すまんすまん、少佐にまだ何も話していなかったな。立ったままもアレだ。かけてくれ。」

 ジェルジンスキーが促し、3人は司令室の真ん中にしつらえられた応接用の卓を囲むようにそれぞれソファに腰掛けた。

 

「ネフスカヤ少佐は、情報軍との協同作戦の経験はおありですか?」

 シュワルナゼが切り出した。

「確か、3度ほど。ミッション内容はどれも国境地帯内での人員ピックアップでした。とはいっても例によって我々は、回収地点と時刻、収容人数を指示されただけで、他の詳細については何も知らされませんでしたが。」

 ネフスカヤは少しばかりの嫌味を込めて回答した。情報軍との協同作戦はおおむねイリーガルで、秘匿事項が多いと相場が決まっている。ニード・トゥ・ノウの原則に従って、関係人員には最低限の情報しか渡されないのが常であった。作戦保全の重要性は当然、ネフスカヤも頭では承知していたが、心情的には、協力を仰ぎながら情報を提供しようとしない情報軍の姿勢に若干の腹立たしさを覚えてもいた。

「その点については非常に申し訳ないと思ってます。」

 シュワルナゼにも、ネフスカヤの心情は十分に理解できた。だが、今は空軍からの抗議を受け取りに来たわけではない。気を取り直して、ネフスカヤ少佐への質問を続ける。

「それで、それらのミッションは、すべてセイレーン輸送艇で?」

「そうです。まあセイレーンはエージェント数名のピックアップには過大な中型機ですが、今のところ、ヤクト内を飛行できる内燃機関搭載機で信頼性が高いのはアレくらいですので。」

「情報軍の方で、アルケイディアのヤクト対応型飛空石をパクってくるような計画は無いのかね?」

 ジェルジンスキーが茶々を入れた。

「いまのところ、当方でそのような計画は無いですね。あの技術については通産総局による外交交渉で入手しようというのが中央のスタンスのようで・・・まあ、私見を述べるなら、ラーサー・ソリドールの目の黒いうちは無理でしょうが。」

 シュワルナゼは苦笑いしながら答えた。もし、アルケイディアがヤクト対応型グロセア機関のノウハウを開示したならば、世界中の軍事関係者が飛びつくのは目に見えている。特に「ヤクトの長城」が安全保障上重要な意味合いを持っているここ西部イヴァリースにおいて、このヤクトの意味が無くなることは、現在、綱渡りのようなバランスで保たれている同盟諸国とユードラの軍事バランスが崩壊することを意味していた。それを危惧したアルケイディア現皇帝ラーサー・ソリドールは、この技術を門外不出として封印したのだ。諸外国は当然抗議したが、ソリドールは、アルケイディア軍艦に搭載していたヤクト対応型エンジンを取り外し、以後も搭載しないことを条件に諸国を納得させた。

「あの技術を実用化した科学者が生きていれば、手の打ちようもあるんですが、生憎その人物はダルマスカ戦役中に死亡しているようで・・・要するに、今のところ我々がヤクトで仕事をするには、セイレーンが不可欠だということです。あと、それを使いこなせる一流のパイロットが。」

シュワルナゼはそう言ってネフスカヤの方を見た。

「ということは、今回、中佐がいらっしゃったのは、協同作戦のオファーということですね。」

ネフスカヤが察して尋ねると、シュワルナゼは小さく数度頷いた。

「作戦の実施予定は2週間後、今度は少しばかり無茶をお願いすることになるかもしれない。ですので、この度はあらかじめ作戦指揮の私が直接パイロットの方に説明する必要があると思って、こちらに伺った次第で・・・こちらが作戦概要になります。」

そう言いながら、シュワルナゼは冊子をネフスカヤに手渡した。表紙には最上級の機密指定を表す「アイズ・オンリー」の刻印、その下には、作戦名と思しき表題がついていた。

「オペレーション・レインフォール・オブ・ハーヴェスト・・・作戦区域は、ベルべニア郊外?」

「今年、ベルべニアと周辺の国境地帯を襲っている大干ばつについてはご存じで?」

「この前、ニュースで見ました。ベルべニアでは50年ぶりの大凶作だとか。しかも、その援助については、こちら側とユードラの間で調停が行き詰って一向に進んでいないとも・・・」

ベルべニア周辺で周期的に起こる干ばつや水害は、しばしばあの地方に食糧難を引き起こしている。通常、どこかの地域でこのような災害が発生した際には、速やかに国際的な援助が提供される。文明化されて久しいイヴァリースにおいてはそれが常識であったが、ベルべニアはその「例外」であった。あの都市国家が、ユードラと同盟諸国の緩衝地帯である国境地帯内に所在しているのがその原因であった。ベルべニアに対する全ての援助は、同盟諸国とユードラの外交当局者の調整によって、援助比率が決められた上で実施されることが条約で決められていた。国境地帯内で唯一国家として存続するベルべニアに、同盟諸国、ユードラのいずれかの「色がつく」ことは避けられなければならなかったからだ。しかし、この「調整」がくせものであった。距離的にベルべニアに近い同盟諸国は、人道上の理由を旗印に速やかな援助を実施しようとするが、対して限られた陸路で山脈を越えて援助物資や組織を送り込まねばならないユードラ側には、それなりの準備期間が必要である。さらに、国境地帯を横断するユードラ側の支援団が大規模になってくると、危機感を覚えた同盟諸国の国防総局が難癖をつける、といった悪循環で、ベルべニアへの支援は遅れに遅れ・・・という醜態が、毎度のごとく繰り返されているのがここ100年来の実情であった。

「干ばつの酷さもあって、特に今回は、両国間の調整がうまくいっていない。ベルべニアの窮状は日に日に目を覆うばかりのものになっているのが現状、周辺の国境地帯に住む非公式な住民達に至っては、言わずもがな、だ。」

 シュワルナゼの話を聞きながら、ネフスカヤは作戦概要の冊子をめくっていく。使用する機種はセイレーン型輸送機5機、搭載物件は各機ごとに小麦を満載、武装はなし。

「調整が済む前に、空路で小麦の支援をやるんですか?」

ネフスカヤが問いかけると、シュワルナゼはうなずきながら

「陸路で行けばユードラの連中に悟られる可能性大だからね。治安も悪いし・・・」

 ネフスカヤは再度冊子をめくっていくと、やがて視線をシュワルナゼにむけた。その目には不信があふれている。

「申し訳ありませんが、いくつか質問させていただいても?」

「もちろんです。」

「まず、この作戦の趣旨ですが、ユードラに気付かれることなく、空路で支援物資をベルべニアに移送する、ということでよろしいですね?」

「その通りです。」

「当然、ご存じだとは思いますが、通常、我々がセイレーンを使って国境地帯内に入るときには、機内に『バニシュ』を装備します。ですが、この冊子では、ミッション時の搭載物件は可能な限りの小麦の搭載としか書かれていません。これは失念か何かですか?」

 条約に従えば、全ての飛空挺は原則、国境地帯内での飛行を禁止されている。当然、国境地帯の上空には、ユードラ、同盟諸国の両国境軍が、レーダーを網の目のように張らせて24時間体制の厳戒態勢を維持していた。国境地帯沿いに配備された地上レーダーで把握出来ない山脈の向こう側の低高度帯については、互いに常時、早期空中警戒艇を飛ばして探るという徹底ぶりである。  

 そんな警戒態勢の中に、のこのこと飛空挺が入っていけば、瞬時に敵のレーダー網にかかるのは目に見えている。仮に、早期警戒艇のレーダーすらかいくぐるような超低空、低速飛行で進入しても、国境地帯のヤクト内では、比較的静粛なグロセア・エンジンは使用できない。レシプロやガス・タービンの大爆音を響かせながら地上数十メートルを飛空挺がばく進すれば、レーダーで見つかる以前に、地上の住民達に見つかるのが必然であり、その中に一人でも敵国に通じる者がいれば、即アウトである。『バニシュ』は、そのような警戒空域内に飛空挺を進入させるために開発された、いわばアクティブ・ステルス・モジュールだ。モジュール内に仕込まれた魔法を発動させることで、搭載した機体に光学迷彩と音響遮断効果を提供し、さらにはレーダー波を歪曲させることで、隠密行動を可能にする。『バニシュ』を発動させた飛空挺がすぐそばを通過しても、地上の人間は、一瞬、突風が吹いたくらいにしか感じないだろう。連続使用できる時間は短いが、2、3時間程度のミッションには十分に耐えうる。グロセア機関と、ターボ・プロップを併用するセイレーンのような特殊飛空挺が、国境地帯内で作戦行動を実施する際には、必ず『バニシュ』が搭載され、『バニシュ』なしでの作戦遂行などありえなかった。にもかかわらず、シュワルナゼが用意した冊子の機内搭載図を見てみると、セイレーン機内の『バニシュ』が搭載されてしかるべき場所には、でかでかと小麦のコンテナが鎮座していた。これでは隠密作戦など期待できるわけがない。ネフスカヤでなくても、空軍関係者ならば間違いなく首をひねるだろう。しかし、「これは失念か?」というネフスカヤの問いかけに対するシュワルナゼの回答は「否」であった。

「本作戦において、『バニシュ』の搭載はありません。アレは容積と重量を食いますので・・・今回は可能な限りの小麦を搭載したいんですよ。」

「それでは隠密作戦は無理です。低空を飛べば住人に見つかるし、かといって高度を上げれば敵のレーダーにつかまります。そもそも現地で小麦の積み下ろし作業を見られる段階で、隠密性についてはアウトじゃあないですか!?」

「レーダーについては問題視していません。作戦機に『EARE(エアー)』(Exterior Against Radar Equipment:外装型対レーダー装備)を搭載します。あれは外装式ですから機内容積も食わないし、『バニシュ』よりは軽量だ。」

 ネフスカヤの顔が歪んだ。確かにEAREを使えば対レーダー・ステルス性は確保される。しかしながら、その名に反して空力上マイナスにしかならない、この特殊塗料を塗布した木製の外装ステルス・パーツを機体中に張り付けた飛空挺の機動力は、例外なく劇的に落ちることが試験で証明されていた。特に、グロセア・エンジンを使えないヤクト内では、機体の揚力がすべてだ。EAREを張り付けたセイレーンは、その外観と鈍重さから、「着ぶくれした天使」と呼ばれ、後発で開発された『バニシュ』の利便性もあって、わざわざ好んで使用する部隊はないのが現状であった。まして、最大積載量の貨物を搭載した状態で、EAREを張り付けたセイレーンを操縦するとなると、熟練したパイロットでも相当に気を使わなければ、瞬時に失速してしまうだろう。ネフスカヤは眉間にしわを寄せたが、シュワルナゼの計画は、さらに人を食ったものであった。

「ご存知かもしれませんが、EAREは、早期警戒艇のレーダー程度は欺瞞できても、複数の方向から大出力で浴びせられる地上レーダー波までは誤魔化しきれません。この作戦エリアであれば、飛行高度は、山脈のレーダー・ブラインドになる概ね10000フィート以下の中高度に制約されるでしょう。しかしそうなると今度は、エンジンやプロペラの音で地上から発見される恐れがある。ですので、作戦区域上空では、エンジンを一時的にカットしていただきたい。」

 それを聞いたネフスカヤはさすがにあきれ、激昂した。

(この男が最初に言った「無茶をお願いする」というのはこういうことか・・・)

「申し訳ないが、机上の空論でモノを言われるのはそのあたりでやめてください。中佐、あなたはいったいご自分が、どれほどの事を要求されているかおわかりなんですか?最大重量の機体に不細工な化粧版を張り付けて、なおかつエンジン・カットの滑空だけで飛べ、ですって!?とても正気の沙汰とは思えません!」

 ネフスカヤはくってかかったが、シュワルナゼはあくまでも淡々としていた。

「勿論、誰にでも出来ることだとは思っていない。ですが、セイレーンの設計者に確認したところ「理論上は可能だ」ということでした。だからこそ直々にあなたにご協力を仰ぎに来たんです。」

「・・・・・」

「ですが、どの空軍指揮官もが「セイレーンを扱わせたらトップ」と認められる、あなたが無理と言われるのであれば無理なのでしょうな。」

 シュワルナゼのこの言い草に、ネフスカヤはカチンときた。自分には、15年以上この飛空挺で飯を食ってきた自負がある。誰よりもセイレーンのことを熟知している自信もあるし、周りがどれだけ無理だと言おうとも、3人の子供を産み育てながら、一線のパイロットでい続けてきたプライドがある。

ネフスカヤは眼光鋭くシュワルナゼを睨みつけながら答えた。

「わかりました!やってみましょう。ただし、条件があります!」

「・・・何なりと」

「仮にこの作戦が可能だったとして、一歩間違えれば墜落は確実の極めて危険な任務であることに変わりはありません。ついては、私達、作戦に当たるクルーには、作戦の目的など情報をしっかりと提供していただきたい!あなた達、情報軍はいつも肝心な情報は隠したまま、仕事だけは我々にさせようとするが、今回に限っては、そのようなことがないようにお願いしたい。何のための作戦なのかも判らずに命をかけるのはご免だということです!」

 シュワルナゼはやや考えるそぶりを見せたが、

「分かりました。少なくともあなたには、全てお教えすることを約束します。ちなみに、この作戦には私も同行します。あなたの機が落ちれば、もれなく私もお陀仏、私もこの作戦には命をかけているのでね。」

 ネフスカヤは、それまで落ち着き払っていた目の前の情報将校が一瞬見せた気迫に少しばかり驚いた。シュワルナゼが続けた。

「あと、小麦は地上では下ろしません。空中から投下します。」

「・・・・?」

「それも、コンテナでの投下ではなく、生の小麦をばらまきます。まあ、地上に向けて『小麦の雨』を降らせるようなイメージですね。地上の人々に「我々が支援した」と分かってはまずいのと、「雨のように降らせる」ことに意義があるので。」

「それで、「レインフォール・オブ・ハーヴェスト」というわけ?」

「ご明察」

「支援はする。だが、支援者の正体は明かさない・・・ベルべニアの人々は喜ぶでしょうけど、一方で我が方には何の利益もない。まさか、情報軍が慈愛に目覚めて無償の愛を提供する、なんてわけはない。そのあたりの「思惑」も含めて、教えていただけるんでしょうね?」

「約束しましょう。」

 そう言うと、シュワルナゼは手を前に差し出した。ネフスカヤはやや躊躇したが、結局その手を握った。

「商談は成立したようだね。」

 それまで目を丸くしながら、穏やかとはいえない成り行きを見守っていたジェルジンスキーが、安堵のため息をもらした。

 

 

 

同日夕刻、ゼルテニア 統合情報軍司令部庁舎

 

 庁舎屋上の飛空挺ポートに、チェスター・シュワルナゼを乗せた公用の小型飛空挺がタッチダウンする。シュワルナゼがラッタルを降りると、大尉の階級章をつけた士官が敬礼して出迎えた。

「出迎えを受けるほど偉くなった覚えはないぞ、ヒサーリ大尉。」

「報告は1秒でも早く、というのが中佐の教えですから。」

「良い報告か?」

 シュワルナゼの問いに、オニクス・ヒサーリ大尉は笑顔で返した。

「あちらさんが、正式にあの子を「シロ」だと結論付けたようです。」

「そうか、じゃあ詳しい話は部屋で聞こうか。」

 2人の情報士官は飛空挺ポートを離れ、ビルの階段を下りる。オニクスが問いかけた。

「中佐の方はどうですか?例のパイロットは・・・」

「ああ、危うく喧嘩になりかけたが、何とか了承してもらえたよ。予想通りの性格だったのが幸いした。」

「予想通り、といいますと?」

「プライドのかたまりだということさ。腕一本で食ってきた熟練パイロットってやつはほぼ例外なく自分の腕に絶対の自信を持っている。その一方で、場数を踏んでいる分とても慎重だ。覚えておくといい。彼らに難しいミッションを依頼するときは、ただ「やってくれ」と言ってはだめだ。調子に乗って、「絶対にやらない」と言いだすからな。」

「じゃあ、どうすれば?」

「お願いするときに「無理でしょうが」とか、「困難でしょう」と一言つけ加えるのさ。そうすると、彼らは決まって「やらせろ」と言う。別にアマノジャクってわけじゃあない。自分で言うならともかく、他人から「出来ないだろ」と言われて引き下がれるほど人間が出来てないんだ。ネフスカヤ少佐は女性で子持ちのエースという異色さだが、その点については、典型的なベテラン・パイロットだったということだ。」

「要するに、口八丁で焚きつけろ、ってことですね?」

「人聞きが悪いな。「闘志に火をつけてやる」のさ。」

 話している間に、二人の足は、シュワルナゼの事務室に入った。シュワルナゼは扉を閉め、鍵をかける。

「さて、じゃあ、嬉しい報告を受けるとするか。」

 オニクスが、ずっと手元に抱えていたステンレスのケースを開ける。「アイズ・オンリー」クラスの秘密文書が入ったこのケースは、許可された部屋でしか開けられない。わざわざ飛空挺ポートから事務室に移動したのにはそういう理由があった。

 シュワルナゼはケース内のファイルを受け取って開く。中に入っていたのは、ユードラ帝国ファラ教法王府対外情報局の公式文書のコピーであった。

「文書のあて先は法王バース・ディ・ヴォウス、うちのエージェントが入手できたのは、表紙とこの最後の1ページだけのようですが、内容としては十分でしょう。」

 文書には、分析内容らしい記述が数行続いた後、結論と思わしき文章と、文書作成者のサインが連なっていた。シュワルナゼが声に出して読む。

「以上のことから、ベルべニア・キルティア教会の対象、『A・G』については、同盟諸国その他の特定勢力とのいかなる関連性も持たないことが結論付けられる。当該結論を持って、当初の予定通り8年にわたって継続された、本件を含む一連の調査を終了し、関連する人員等については、細心の注意を払いつつ、直ちにベルべニア及び国境地帯から帰還させるものとする。― 法王府対外情報局長マルティン・ヒルデブラント。」

「ご丁寧にも『閻魔大王』の直筆サインつきです。これで間違いないでしょう。」

 『閻魔大王』は、ユードラ帝国法皇府対外情報局長マルティン・ヒルデブラントに同盟諸国統合情報軍の士官達がつけたニックネームであった。情報軍は、何人ものエージェントやコンタクト・マンをユードラ帝国内に送り込んでいたが、その中の決して少なくない数が、ヒルデブラント隷下の対外情報局防諜部によって毎年のように検挙されていた。互いの連絡や接触に細心の注意を払っていても、どこから嗅ぎつけてくるのか、気がつくと挙げられている。  

 特にヒルデブラントが対外情報局長に就任してまもなく、情報軍がミミック菌除染技術を手に入れるためにユードラの研究機関や重工業メーカー内に数十年にわたってコツコツと植え込んでいたエージェント達を一斉検挙された事は、情報軍にとっての大きなトラウマとなった。情報軍の士官達は、この有能かつ冷徹な敵の指揮官をやっかみと少しばかりの敬意を込めて『閻魔大王』と呼んでいた。

 

 8年前、ベルべニアに「候補者」が現れたという報告を受けたシュワルナゼは当初、彼女に対する一切の接触を禁じさせた。それから間もなくして、シュワルナゼの予想通り、ヒルデブラント隷下の対外情報局が、このベルべニアの「救いの御子」の周りでうごめきだした。その目的は、ベルべニアで起きたこの騒ぎが、自然に発生したものなのか、敵(同盟諸国、あるいはその他の国家等)の謀略によるものなのかを調べることだ。当然、この「救いの御子」の誕生に情報軍は何もタッチしていない。少し調べれば彼女が「シロ」だということははっきりするはずだが、そこで調査の手を緩めないのがヒルデブラントの『閻魔大王』たるゆえんであった。それは、他の「候補者」に対しても同様であった。ヴィエラの森の指導者から、はては馬賊の統領に至るまで、国境地帯内において何らかの影響力を持つ人間にはすべからく対外情報局の調査が入った。ユードラ帝国内やベルべニアのエージェントからもたらされる断片的な情報からその実態を知ったシュワルナゼは心底胸を撫で下ろした。

(やはり、「救世主」の出現を自然に任せたのは正しかった。もしこちらから人材を送り込んでいたら、瞬時に敵に挙げられていただろう・・・)

 結局、ベルべニアの「救いの御子」騒ぎに端を発して始められた、ユードラ対外情報局の調査は8年に及んだ。その間、シュワルナゼのチームは終始、戦々恐々としながら、情報収集に努めざるを得なかった。「候補者」の周囲で、一人でも情報軍のエージェントが挙げられれば、全ての計画は水泡に帰す。情報機関特有の地味で過酷な神経戦が続いた。

 

― ヒルデブラントの調査が間もなく終わる ― 

 その情報が入ってきたのはついこの間のことだ。報告を受けたシュワルナゼは、「候補者」の周囲に置いていた調査員を撤収させ、「救世主」のピックアップの準備に入った。都合12年に及ぶ調査期間の中で、10名近い「候補者」が上がっていたが、誰を「救世主」にするか、シュワルナゼの心はすでに決まっていた。折しも今年の国境地帯は大凶作。シュワルナゼはベルべニアに伝わる伝承や文献を片っぱしから調べ、ピックアップに際して、もっとも効果的な作戦を練り上げた。作戦につけた名前は「オペレーション・レインフォール・オブ・ハーヴェスト」。作戦機となるセイレーン輸送艇に要求される曲芸じみた運航が難題だったが、トップ・エースのネフスカヤ少佐の協力を取り付けられたのは大きかった。今後、彼女が作戦のリハーサルに成功すれば、この作戦は正式に元首の承認を受けられる。そして、ついに今日、正式にヒルデブラントがベルベニアから手を引くことが明らかになった。

 

「これで、ベルベニアはじめ、現在の国境地帯には同盟諸国の色がついた指導者やカリスマは存在しないということがユードラの公式見解となったワケだ。しかも『閻魔大王』の太鼓判だからな。そうそうひっくり返すことは出来ないぞ。」

「この見解に異を唱えることは、すなわちヒルデブラントの顔に泥を塗ることになる。敵の親玉の有能さが我々に利するわけですね。」

 オニクスが感慨深げにコピーを読み直す。

「しかし、これだけのものを手に入れられるエージェントをお持ちとは、中佐はさすがですね。」

それを聞いたシュワルナゼは軽くはにかんだ。その目は懐かしげだ。

「俺の手柄じゃあないよ。この情報源は、カイラ准将から受け継いだんだ。まだイチ少佐に過ぎなかった頃の俺に、准将はこれだけの情報源を申し継いでくれた。あの人はもう退官したけれども、恩にはしっかり報いないとな。」

 シュワルナゼはマホガニー製の自分のデスクに腰掛ける。小さくため息をついた後、再び口を開いた。

「ヒサーリ大尉」

「はい?」

「最後に確認しておきたいが、君は本当に構わないんだな?」

「・・・「救世主」の事ですか?」

「俺はもうあの子に決めたぞ。他の候補者に乗り換えることはない。ヒルデブラントが勝負から降りた今、ネフスカヤ少佐のリハーサルが成功すれば、彼女のピックアップは正式に元首の裁可を受ける。あとはもし、彼女が我々のオファーを受けたら・・・そうなったらもう後戻りは出来ないぞ。」

やや沈黙が続いた後、オニクスが答えた。

「中佐が私をチームに引き抜かれたのは、確か5年ほど前でしたね。」

「ああ、君はまだ中尉だったかな。ベルべニアの習慣について詳しい人間が欲しかった。」

「で、数少ないベルべニア出身者の中から私が引き抜かれた。」

「最初は、まさか君が彼女の「身内」だとは知らなかった。君がグレバドス家の人間だったともね。君を引き抜いた後で経歴を調査してビックリした。」

「『元』ですよ。まあ、確かに、私もチームに入ってしばらくしてから、「候補者」の一人があの子だと知った時には仰天しましたが・・・」

「私なら、たとえ家名を捨てていたとしても、身内をこんなことには巻きこまない。君は・・・いいのか?」

「最後にあの子に会ったのは、まさにその8年前でした・・・「救いの御子」に祀り上げられて間もなくの頃です。顔ははっきりとは覚えてませんが、泣いていたのは覚えています。」

「・・・・・」

「その後のことは、あの子の担当者、「キューケン」からの報告でしか読んでいませんが、それでも私は確信しました。このままではあの子は死んだも同然だと。」

「死んだも同然?」

「考えてもみてください。自分で望んだわけでもないのに、神の子なんかにされて、家族らしいつながりも、友人も失って、教会に閉じ込められて、きっとこの先恋人も出来なければ母親にもなれない・・・その一方で、何かあるごとに周りに請われて、居もしない神様相手にひたすら祈らされるんです。おそらくは死ぬまでね。」

 シュワルナゼは黙ったままオニクスの話に耳を傾ける。

「今年の食糧難では特に酷い。報告によれば、連日、ミロドス区の教会に人が押し寄せているそうじゃないですか・・・あの子は分かっている。自分には神の言葉を聞く耳も、何の力もないことがね。それでも貪欲に救いを求める人々に祝福の声をかけ、彼らの分まで神に祈っているんだ。たとえ応える神がいなかったとしても、彼女はそうするしかない。あの街の人間が、あの子にそれを押し付けたんだ。」

 オニクスの目は赤くなっていた。シュワルナゼが口を開く。

「我々がこれからあの子にやらせようとしていることだって、「押し付け」には変わりない。」

「でも、少なくともあの牢獄から出してやることは出来る。外の世界を見せてやることが出来る。そして、あの子に「力」を与えることが出来る。空に向かって手を伸ばして祈り続けるだけじゃない。あの地に住む人々を現実に救うことが出来る「力」だ。「救いの御子」にされたあの子に、神様が「力」を与えないのであれば、我々が与えてやればいい。あの時、私はあの子からただ一人の理解者だった兄を引き離した。あれ以来、あの子は一人で牢獄につながれたままだ。だから、今度こそピックアップするんです。これは私の罪滅ぼしでもあるんです。ですから、どうか、私をこの作戦から外さないでください!」

 熱く語っていたオニクスの突然の嘆願にシュワルナゼは驚いた。

「ちょっと待て、君を外すなんて一言も言ってないぞ。」

 今度はオニクスが目を丸くした。

「そうなんですか?・・・いや、中佐があんなことを聞かれるものですから、てっきり身内の人間が作戦に関わってはマズいと思われて、私を外そうとされたのかと・・・」

「何をいってる。もしそうなら、5年前に君の身元が分かった時点でとっくに外している。君はよくやってくれているさ。俺は純粋に君がどう考えているか知りたかったんだ・・・勿論、君が否定的な見解を出すようであれば、あるいはチームから外すこともあり得たが・・・君が彼女のことをどれだけ気にかけているかよく分かった。さっきの言葉は君の本心だろう。であれば、そのモチベーションは作戦の益にはなっても害にはならんよ。したがって君を外す理由はどこにもない。」

「そうですか・・・いや、お恥ずかしいところをお見せしました。」

 年甲斐もなく目を腫らして熱くなったのがよほど恥ずかしかったのか、今度はオニクスの顔面が赤くなった。シュワルナゼは苦笑いするしかなかった。

「やめろよ。ほほを赤らめる中年なんぞ見たくないぞ・・・」

 しばらく顔をひきつらせて笑っていた二人であったが、やがてオニクスは気をつけの姿勢をとると敬礼しながら申告した。

「では、私は、これより現地との調整にはいります。」

「ああ、うまくいけば作戦は2週間後だ。その時に彼女が我々のオファーを受けるかどうか・・・バクチのうちどころだ。」

「我々の「力」をしっかりと見せてやりましょう。大丈夫、きっとこちらに来ますよ。」

 そこまで言って部屋から出ようとしたオニクスをシュワルナゼが呼びとめた。

「ところで・・・その、件の「彼女の兄」にして「君の息子」の調子はどうかな?」

「順調ですよ。外事情報課程も修了したようですし、これからは、現場のオフィサーとしてどれだけやれるか、お手並み拝見といったところですね。まあ、最初はボコボコにされるでしょうが。」

「しかし、君の後を継ごうというのだから親孝行だな。しかも、たたき上げの君と違って、国防大学からのエリートコースだ。最終的には、俺よりも偉くなるだろうな。シビリアン出身の俺は、どう頑張っても大佐どまりだ。」

「しかし、今さら言うのもなんですが、何で軍人なんぞになろうとしたのか・・・」

「それだけ君が、父親として尊敬されていたということさ。」

「血はつながってないですけどね。」

「しかしこれで図らずも、兄妹がそろって同盟諸国に来るワケだ。」

「ええ、当然、息子には話してはいませんがね。」

「・・・会わせてやりたいか?」

「心情的には・・・ですが、あいつは我々のチームではないし、この作戦に関われるほどの経験も知識もまだない。今は、まだ、出来んでしょう。」

「そうか、まあ、そうだな。この仕事に、無用な私情は禁物だ。」

「そうです。大事なのは作戦の完遂。私情で作戦メンバーを選ぶことがあってはなりません。」

「おいこら、さっき半泣きで「お願いだから僕を外さないで」って泣きついてたのはどこの誰だ?」

 シュワルナゼは一気に噴き出し、オニクスの顔は再び真っ赤になっていった。

 

 

 

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