戦国転生 4歳から始める十種影法術   作:匿名希望

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鹿紫雲のキャラが解釈違いだったらすいませんすいません。

ある程度ガッツリ関わるので鹿紫雲タグを入れました。


第十八話 鹿紫雲と、層を喰うもの

堺での任務を終え、京都に戻ったのも束の間。

一息つく暇もなく、俺に新たな任務が下された。

 

賤ヶ岳の麓、名もなき谷。先日「平面の怪異」を祓った山から程近い場所だ。

数日前の小競り合いで生じた数百の死体が、雨上がりの湿気で最悪な腐臭を放っている。

 

『戦場に充満する呪力の澱を、等級の高い呪霊が生まれる前に掃除しろ』ってことでやってきたのだが……。

 

「……ひどいもんだな」

 

死体から立ち上るどす黒い呪いが、霧のように谷底に溜まって視界を遮っていた。低級の呪霊たちが死体を突き、時折ヒタヒタと気味の悪い音が響く。

俺は泥濘を避けるように影を足元に広げ、足を浮かせる歩を進める。

 

(堺では美味いもん食って、少しはのんびりできたけどもさぁ……。帰宅早々これ。禪院家も人使いが荒いぜ。ひとえに人手不足のせいだが)

 

俺は立ち止まり、影を谷全体へと浸食させるように広げ、探索すると共に、鵺と大蛇に上と下から生きてる人間が残ってないか調べてもらった。

 

うーん死体漁りももう流石にいないか。

じゃあ、一気にやってしまおう。

 

「……満象。一気に流しちまってくれ」

 

鵺と大蛇が影に戻り代わりに巨躯の象が現れる。その重厚な四肢が地を踏みしめた瞬間、谷底が地震のように震えた

 

象の鼻先から発生してるとは思えない、まるで決壊したダムの激流。猛烈な水圧が、死体や腐敗した土、そして視界を塞いでいた呪霊の霧を物理的に、そして呪術的に叩き潰しながら押し流していった。

 

何度かそんなことを繰り返していると、死体が流れ谷底が見え岩肌が露出した。

 

「……? 何だ、あれ」

 

ふと、谷底の端、大きな岩場が重なるあたりに目が止まった。

満象が撒いた大量の水。その水面が、そこだけ不自然にパチパチと震えている。

その一角だけ、空気が青白く帯電し、霧が不自然な渦を巻いて蒸発していた。

 

――嫌な予感が、背筋を駆け抜けた。

 

(光――?)

 

回避?

防御?

 

脳が警報を鳴らすより先に、4本の趾が俺を掴んでいた。

鵺が空中へ俺の身体を釣り上げるのと、その場に雷撃が突き刺さるのは、ほぼ同時だった。

鼓膜を蹂躙する轟音。熱に焼かれた泥が四方に飛び散る。

 

「すまん助かった!」

 

鵺に掴み上げられ、空中から下を見下ろした俺の目に、蒸気の向こう側に立つ「それ」が映った。

 

「――お。避けたか。ガキのくせに、随分と鼻が利くじゃねぇか」

 

蒸気の向こう。岩の上に立ち、俺を見上げている男がいた。

三十前後か。着流しの裾を乱暴に捲り上げ、その肌からはパチパチと青白い火花が散っている。何よりその瞳。ただ目の前の「強者」を測る、純粋で、かつ狂気染まった好奇心。

この呪力特性、俺はこの男を知っている。

 

確信した。

索敵に引っかからなかったんじゃない。こいつの呪力が、あまりに高密度の「電気」そのものに変質していたせいで、生物としてのバイタルを俺の術式が感知できなかったんだ。

 

「お前、禪院の……例の『化け物』だろ? ちょうどいい。退屈で死にそうだったんだ」

 

 

男は――鹿紫雲一は、牙を見せて笑った。

 

 

「……悪いけど、今は掃除の最中だ。あんたの相手をしてる暇はないんだけどな」

 

「はは! 掃除なら俺が手伝ってやるよ。お前と遊んでたら澱も吹き飛ぶだろ!」

 

ヤバい!俺は眼前に8層の影を展開する。

 

爆発。

 

稲光。

 

突如刺さる鹿紫雲の蹴り。

衝撃を完全に抑え込んだと思ったその時、影を貫通して何かが入ってくる、腕の皮膚に、チリッとした嫌な感触。

 

(影越しにも届くのか……!?)

 

層を重ねた「影の盾」は、蹴りを完全に止めていた。だが、層を伝わって逃げ場のない電荷が俺の体に届いた。

ふざけんな!鵺の全力も防ぐんだぞ!?

 

「——いい反応だ! だが、防いでるつもりならおめでてぇな!」

 

再び鹿紫雲が地面を蹴った。

満象が撒いた水が、俺にとって最悪の牙を剥いた。地面に溜まった水が導線となり、鹿紫雲が動くたびに周囲の空気がバリバリと爆ぜる。

 

(マズい、一旦距離を――)

 

俺が影に沈もうとした瞬間、足元の影が意思を持ったように激しく波打った。

 

「っ、白! 黒!?」

 

二匹が影から飛び出した。その毛並みは逆立ち、かつてないほどの凶暴な呪力を纏っている。

俺を庇うように前に立ったその2匹の足元から、さら溢れ出す無数の小さな影。

 

数百、数千という脱兎が、まるで鉄砲水のようになって、鹿紫雲を押し流さんとばかりに空間を埋め尽くす。

 

 

「纏めて焼いてやるよ!」

 

 

鹿紫雲が、押し寄せる脱兎の津波に指先を沈める。

バヂィッ!! と、空気が爆ぜる凄まじい放電音。

連鎖的に電撃が伝播し、無数の脱兎が一瞬で呪力へと還り、霧散していく。

 

自律は便利だが、代償もある。

数千匹の脱兎を文字通り「焼き切った」超高温の熱量が、足元の泥濘を瞬時に沸騰させたのだ。

 

(――っ、熱……!?)

 

爆発的な水蒸気が視界を真っ白に染め上げる。

数千の放電が重なったことで発生した強烈な超高音が、俺の三半規管を容赦なく叩き潰しにきた。

 

物理的な衝撃。視界を奪う白。脳を揺らす音。

泥濘が文字通り「爆発」し、俺の体は浮き上がる。だが、その瞬間に影が爆ぜた。

 

「――ガァァッ!!」

 

真っ白な蒸気の中に飛び込んできたのは、二筋の影。

「白」が俺の襟首を咥えて強引に爆風から引き剥がし、「黒」が鹿紫雲の追撃を遮るようにその巨躯を割り込ませる。

 

だが、鹿紫雲は止まらない。

視界ゼロの爆煙の中、奴は迷うことなく最短距離を突っ込んできた。

俺を庇った「黒」の喉元を、雷光を纏った手刀が容赦なく貫く。

 

「邪魔だ、どけッ!」

 

「黒」が苦悶の声を上げ、霧散する。

白も俺を抱えたまま着地しようとするが、背後から迫る鹿紫雲の速度が上回る。

奴の指先に、俺の体に溜まりきった電荷を呼び寄せる、青い閃光が収束した。

 

(――マズい、白もろとも……!)

 

 

死。

 

 

白の影から滑り出るように、翠の光を纏った円鹿が姿を現した。

その瞬間、反転術式による爆発的な治癒が全身を駆け巡る。

 

焼けた鼓膜が、狂った三半規管が、一瞬でを強制再起動した。

 

(――見えたッ!)

 

鹿紫雲の指先。放たれる雷撃。

俺は白を影へ戻すと同時に、ありったけの影を目の前に練り上げた。

 

手伝え!お前らこいつを……拒絶しろ!!

 

十層展開。

ただ影を重ねるんじゃない。一層ごとに「物理的衝撃」「熱」「伝導」……そして「存在そのもの」を否定する設定を上書きし、積層させた拒絶の絶対領域。

 

凄まじい呪力の消費に視界がチカチカと明滅する。鼻から熱い血が垂れるのを感じたが、構わず歯を食いしばった。

 

鹿紫雲の放った必中の稲妻が、十層の影に衝突した。

「物理」を拒み、「伝導」を遮断し、「熱」を否定する積層された黒。白光が影を削り、凄まじい火花が周囲を焼き払うが、俺の「拒絶」は折れない。

 

(……防ぎ、きれる……!)

 

影越しに、目を見開いた鹿紫雲の驚愕の表情が見える。最強の「必中」を、真っ向から十層の盾で受け止めたんだ。

 

だが、その勝利の確信が、異様な感覚によって塗り替えられた。

 

「…………あ?」

 

鹿紫雲が、間の抜けた声を漏らす。

俺の目の前。

十層目の影を食い破らんとする雷撃も、爆発の衝撃も、そして俺の鼻腔を突いていた焦熱の匂いまでもが――着弾の直前で、忽然と「消えた」。

 

霧散したんじゃない。最初から雷など放たれていなかったかのように、現象そのものが虚空に吸い込まれた。

 

それだけじゃない。

あんなに荒れ狂っていた爆風も、立ち上っていた蒸気も、すべてがピタリと止んでいる。

いや――「音」が、そこにあるはずの「存在」とズレている。

 

「……今のは、俺じゃないぞ」

 

俺は「十層展開」を解き、一息ついた。

呪力反射炉のおかげで呪力切れの心配はないが、強引に回した脳が熱い。

 

「円鹿」

 

背後から円鹿が鼻先を寄せ、脳を冷却・修復していく。数秒で思考がクリアになる。

こちらに鋭い目を向け、未だに戦闘態勢を解かない鹿紫雲に怒鳴った。

 

「チッ続けるぞ」

 

「ちょっとまて。そんな状況じゃないだろ!」

 

こいつ、原作でもこんなに話が通じない戦闘狂だったか?

いや、四百年前の術師なんてみんなこんなもんか。

強敵探して彷徨ってる時期の鹿紫雲一は、想像以上に話が通じないっぽい。

 

「邪魔が入っただけだろ。まずはこいつ消して、またお前だ」

 

鹿紫雲が指先で火花を散らす。だが、その火花さえも、奴の指先から数センチ離れた場所で、ぐにゃりと歪んで消失した。

 

「……チッ、なんだこれ。俺の呪力が食われてんのか?」

 

「ああ。あんたの雷も、俺の影も、この『穴』みたいなモンに飲み込まれてる」

 

戦場に澱んでいた呪力の霧が、一箇所に吸い寄せられるように収束していく。

世界の「層」そのものが歪み、そこに穴が空いたような、生理的な嫌悪感を伴う「ズレ」。

 

ズルリ、と。

 

空間の裂け目から、形を成さない「層の残骸」を纏った異形が這い出てくる。

不定形の体は、周囲の風景を不自然に反射しては飲み込み、存在自体がバグのように明滅していた。

 

「……あぁん? 良いところだったってのに。なんだぁ、あの薄気味悪いのは」

 

鹿紫雲が不機嫌そうに吐き捨てる。指先で火花を散らすが、その火花さえも、奴の体に届く前に不自然に歪んでいる。

 

俺は確信した。こいつは、ただの呪霊じゃない。

 

「……層が、喰われてる」

 

俺の「影」が、まるで意思を持たない虚無に飲み込まれていくような、魂を削られる感覚。

俺たちの戦闘という「現象」そのものを食い荒らす怪異。

 

 

くっそ、澱を浄化してはい終わりじゃ済まなくなっちまったな。

 

 

影のストレージに意識を向けると、黒の再生が始まっていた。

(結構強い分体出てたよな、再生まで3日はかかるか?黒?)

(クゥン)

悲しげな鳴き声が影から響いた。












読んでも読まなくてもいい気になる人だけ。


【14歳時点・影久の術式解釈と独自設定】

「十種影法術」の独自解釈と、影久が構築したシステムのまとめです。

1. 術式変質の起点:生活の質の向上
影久の術式進化の根源は「戦国時代の不便さへの抵抗」にありました。

影のマットレス: 「快適に寝たい」という執念から影に質量を与え、層(レイヤー)を重ねる技術を習得。これが後の多層防御・多層運用の基礎となりました。

2. 影の構造:多層レイヤーシステム
影を単なる「穴」ではなく、役割を持った「独立した10層の空間」として定義しています。

影の使用権: 調伏済みの各式神(白、黒、脱兎、蝦蟇、鵺、満象、大蛇、貫牛、虎葬)に、それぞれ1枚ずつの使用権を割り当て。

呪力反射路(リサイクル機構): 7〜8層目を維持に割き、呪力を循環させることで、式神の「常時召喚」を実質的なコストゼロで実現しました。

3. 円鹿(まどか)の特権:システム管理者
円鹿は他の式神とは一線を画す、最上位の個体として定義されています。

全層への干渉権: 他の式神が1層ずつの権利しか持たないのに対し、円鹿は全10層すべてを使用・干渉できる特権を保持しています。

運用の核: 他の式神の修復や術者のケアなど、システム全体の調停者として全レイヤーを縦断的に立ち回る立ち位置です。

4. 式神運用の独自ルールと「縛り」

操作権の放棄(自律化と脳の保護):
影久は式神を直接操作せず、個別の自由意志を与えています。

負荷の分散: 複雑な影の層の維持・管理を自律した式神に任せることで、「術者自身の脳が情報処理過多で焼き切れるのを防ぐ」ための安全装置としての側面があります。

メリット: 影久は自身の脳のリソースを「式神の制御」ではなく「自身の体術や状況判断」に100%割くことができます。

デメリット: 自由意志ゆえに制御不能な挙動(おやつの盗み食いや、予期せぬタイミングでの出現)がリスクになります。

分体(アバター)方式: 影の層を出力して形作る「分体」として現世に出現。本体は常に影の中にいるため、破壊されても完全に失われることはありません(修復時間は必要)。

5. コストの構造:維持と発動

維持コスト: 呪力反射路によりほぼ無償(常時召喚が可能)。

能力発動コスト: 満象の水や、円鹿の反転術式といった「式神独自の能力」を振るう瞬間のみ、影久の呪力を直接消費します。


【一言でいうと:メゾン十種影法術】

当時の影久のスタンスは、術師というよりは「高機能マンションの大家さん」です。

影久(大家):10層+αの快適な部屋(影)とインフラ(呪力反射路)を提供。住民の自主性を重んじて干渉しないことで、自分の脳(管理負担)を守っている。

式神(住民):家賃(操作権)を払わない代わりに、自律的にマンションの防衛や清掃(索敵・戦闘)をこなす。たまに勝手にエントランス(現世)に出てきて悪戯をする困った住民もいる。

円鹿(管理人):全フロアのマスターキーを持ち、住民のトラブルや建物の修繕(負傷の治療)を一手に引き受けるスーパー管理人。
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