戦国転生 4歳から始める十種影法術   作:匿名希望

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二次創作における性癖についてお話しします。
家庭環境の影響でカスになってしまうキャラが、転生者の介入で立場がいい方に変わるタイプのやつが好きです。
あとハッピーエンドじゃないと脳破壊されてしまいます。


第一話 影に目覚める

まあ、幼児に何ができるってわけでもなく、もうすぐ禪院影久こと俺が生まれてから、4年が経とうとしているわけだ。

西暦じゃないとはっきりした時代感覚が無いから(西暦にしても別にそんな時代感覚があるわけでもない)、かなり古い時代ってことしかわからないが、最低でも明治以前だろう。この家からは文明開花の音がしない、元号も聞いたことがない、歴史の勉強をちょっとはしておくんだった。

その元号は最近元亀ってのから天正ってのに変わったと、家中で話されているのを聞いた。

 

 

それにしても寝床は硬い煎餅布団で底冷えがひどいし、腰も痛い。

そしてこの時期の日本はとても寒い、春? 嘘だろ。吐く息、真っ白なんですけど?

指先は痺れて感覚がない。布団を引き寄せるだけで、ちょっとした重労働ってもんよ。

 

(……あー、嫌になる。現代ならエアコンとこたつで即解決なのに。なんで俺、こんなところで耐えてんの?)

 

正直、やってられない。

でも、もし当たりを引けたら、このクソみたいな状況もワンチャン変わるかもしれない。

 

そう!4歳から6歳で発現する術式ガチャ!

前世じゃ鼻で笑ってた不確かなもんが、今は唯一の命綱だ。

頼むから、何か「出ろ」。

このクソッタレな現実から、俺を引っ張り上げてくれる何か!十種影法術でてくれてもいいぞ!

いやでも真面目な話、寒さ凌ぐなら焦眉之急か?

 

はー、こんなハイリスクハイリターンなもんに、俺が祈りを捧げることになろうとは。

皮肉にもほどがあるぜ……。

 

布団に潜り込み震えていたら、襖を開く音が聞こえてきた。

今日も指南役の老術師が、憂鬱な一日の始まりを告げてくるのだ。

 

「影久様、朝の鍛錬の時間ですぞ」

 

 

夜明け前の凍てつく中庭。囲んでくるのは、目が血走った老術師ども。

呪力を練り回しながら体術の形や木刀を振り回す訓練、わずかながらに呪力効率上がってる気がするんだけど、あまりにも牛歩すぎんか?

やっぱ生得術式わかってからが本番なんかね。

 

「もっと練れ! 禪院の嫡男がその程度か!」

「死線を越えねば、相伝の術式など呼び込めぬぞ!」

 

死線ってなんだよおまえ、家の中庭でどう死を意識しろってんだ。

毎朝毎朝、怒鳴られ、打ち据えられる。

でも、俺を打つそいつらの手は、時折恐怖で震えてるんだよな。

 

それは四歳にも満たないガキの体から溢れ出す呪力が、明らかに「バグ」ってるからだ。

前世の死を経験してるせいか?とは言え死の前後の記憶なんて碌に思えてないが。そんな俺の魂は、こいつらが知る子供のそれとはワケが違うらしい。

小さな器に収まりきらない漆黒の呪力が、底なしの井戸みたいに俺の奥底に溜まってた。

 

「……恐ろしい。これほどの呪力量、炳にも引けを取らぬどころかもはや。まだ術式すら持たぬ幼子が……」

 

ぎらついた視線。吐き気がするほど不快だ。

 

虐待じみた朝の鍛錬が終わると朝食である。

その飯の時間も、胃がざわついてしょうがない。

侍女が運んでくる塗り物の膳。

白い飯はボソボソ。香の物は塩辛すぎ。川魚の塩焼きにいたっては、泥臭さがそのまんま残ってる。

大人たちは満足げに食ってるけど、俺の舌は超えてるせいでどうにも受け付けない、食うけど!

 

(……はぁ、コーラもハンバーガーも、コンソメポテチも無いとか……。飽食の現代を知ってると、この落差だけで風邪引きそうだわ)

 

風呂は蒸し風呂。冬になれば、いくら絹を重ねても隙間風が骨まで刺す。

侍女たちの赤く荒れた手。廊下を拭くたびに軋む音。

その痛々しい光景を見るたび、俺の中のシティーボーイが「ここにはいたくない」って言ってくる。

 

弟の景次も、まだ鼻を垂らしたガキなのに、早くも「禪院の男たるもの」なんて毒を注ぎ込まれてる。

女は家畜。力こそがすべて。

そんな言葉を聞くたび、弟の目が少しずつ濁っていくのが分かった。

 

(このままじゃマジで立派なドブカスが完成しちまうぞ……。俺がなんとかしないと)

 

 

 

濁った瞳で「強さ」を説かれてる弟の姿が、どうしてもあの日の記憶を思い出させる。

 

 

本当なら、俺が覚えているはずのない景色だ。

母さんが冬の凍てつく夜、俺を抱きながら震える声で子守唄を歌っていた。

水仕事で赤くひび割れた指先。触れるたびに、刺すような冷たさが俺にまで染みてきた。

 

一歳にも満たない赤ん坊に、言葉の意味なんてわかるはずがない。

だから、ただ自分に言い聞かせていたんだろう、俺に言っていたわけではないと思う。

……だけど

それなのに、あの夜の「温度」だけが、どうしても皮膚から剥がれてくれないんだ。

 

「影久……この家の寒さに、負けてはいけませんよ」

 

それが、母さんが遺した数少ない言葉。

 

 

一歳下の弟・景次を産んだ直後、母さんはあっけなく死んだ。

冷たくなった体に、親父も長老たちも目もくれない。

通夜の席で聞こえてきたのは、血も涙もない計算高い声。

 

「女一人で、次の血筋の器が手に入った。安いものよ」

 

安い、だって。

人の命をそんな風に値踏みすんのかよ。

 

胸の奥が凍りつく感覚。

でも同時に、「ああ、やっぱりドブカス一族だな」なんて、妙に納得してる自分がいた。

 

 

 

――そして、四歳の誕生日の夜。

行灯の薄暗い灯りが、障子に俺の影を長く伸ばしてた。

 

ふと思いついて、両手を組み合わせる。

前世の記憶にある、あのアニメの、手影絵の形。

 

(十種影法術だったら最高だけど……。外れても、せめて影収納くらいは出てくれよな)

 

便利な術式、便利な術式と祈りながら指を組み、親指を立ててみる。

壁に映った影が、犬の形になった。

 

「影よ、動け……なんてな」

 

自分でも笑っちまうような、馬鹿げた独り言。

瞬間、空気が変わった。

足元の影が、重い。

冷たい床が粘つく液体に変わるような、気味の悪い感触。

 

ぬちゃり、という湿った音がして、漆黒の影がゆっくり盛り上がる。

 

這い出てきたのは、白と黒、二匹の犬。

額に淡い紋様が浮かぶそいつらは、俺の呪力を食らって、実体を持つ獣として完成した。

 

「クゥン……」

 

喉を鳴らし、白い方が膝に頭を押しつけてくる。

生暖かい吐息。薄い着物の下の肌に直接当たる熱。毛並みは意外と柔らかい。

 

心臓が、どくん、と大きく跳ねた。

胸の奥を直接掴まれたような、圧倒的な呪力の重み。

黒い方もゆっくり近づき、反対側の膝に体を預けてくる。

 

(……来た。本当に来やがった……!)

見た目だけなら可愛くてかっこいいって言ってもいいのに、デカすぎて怖さの方が先に来る。

喉を鳴らすたびに、肺の奥まで響くような重低音。

本気でやばい生き物(?)が隣にいる、そんな肌を指すようなプレッシャーを感じる。

 

指先が震える。背筋を熱いものが走った。

背後で老術師が腰を抜かして、喉を枯らして叫ぶ。

 

「わ、若様に……十種影法術がッ!!」

 

屋敷が一瞬で蜂の巣をつついたみたいに騒ぎ出した。

廊下を駆ける足音。襖が乱暴に開く。

雪崩れ込んできた親父と長老たちの目。

 

そこにあるのは慈しみなんて欠片もなくて、ただ「最強の道具」を手に入れた狂気だけ。

 

「おお……素晴らしい! やはり貴様は、我らが渇望した器であったか! これで加茂も五条も、我らが足下に跪くのみ!頂点に立つのは禪院家だ!」

 

大人たちが肩を叩き合い、狂喜する。

俺はただ、冷めた目でそれを見てた。

胸の奥で、さっきまでの高揚が急速に冷めていくのがわかる。

 

(……うるせー!!頂点とかどうでもいいんだよ!俺はただ、背中と腰が痛くならない寝床に、温かい風呂と、美味い飯が、欲しいだけなのに……)

 

狂喜乱舞する親父たちの声を聞き流しながら、俺はそっと自分の影に右手を差し込んでみた。

 

ひんやりとした、底知れぬ水の底に沈む感覚。抵抗はない。ただ、果てしない「奥行き」だけがある。

傍らにあった手拭いを落としてみると、音もなく吸い込まれていった。

でも意識を向ければ、確かにそこに「ある」感触が残ってる。

 

(……これだ。呪力操作で影の奥行きを広げられたら、便利な倉庫のように扱えるかもしれない!これがあれば、俺一人の力で、新鮮な魚も美味い飯も運べる。この地獄みたいな環境を、俺の手で作り変えられる!……かもしれない!)

 

生活向上の予感に歓喜した俺は、影の「底」へ向けて、さらに呪力を押し込んでみた。

(どうだ?広がるか?)

だがその瞬間、指先から伝わってきた感触に、わずかな寒気が走った。

 

(……? なんだ、これ)

 

影が、呪力を「食って」いる?

広がるのではなく、吸い込まれていく。

それだけならいい。だが、奥へ押し込んだ呪力が、暗闇のどこかで何かにぶつかり、音もなく弾け、再び俺の指先へと「還って」きた。

 

――反響(エコー)。

 

全体を100とするなら、1か2。

それくらい、微かなズレ。

 

まるで、暗闇の中で音を立て、その跳ね返りで壁の位置を知る(エコロケーション)ような、そんな妙な手応え。

自分の術式の癖なのか。それとも、この影の底に、もっと別の「仕組み」があるのか。

 

(……まあ、いいか。今は物を入れられるってのがわかっただけでいい、溜まるなら、溜まるだけいい)

 

胸の奥で、冷え切ってた何かが、わずかに熱を持った。

死に際に母さんが遺した、あの呪いのような言葉が脳裏をよぎる。

 

『影久……この家の寒さに、負けてはいけませんよ』

 

(……ああ、分かってるよ、母さん。負けねえよ)

 

俺は俺のやり方で、この術式を徹底的に使い倒してやる。

このクソ寒い一族の真ん中で、誰よりも暖かく、誰よりも美味いもん食って、最高に快適に生き抜いてやるよ。

 

それが、俺なりの「負けない」やり方だ。

 

老術師が跪きながら、余計なことを抜かす。

 

「影久様。明日より鍛錬の内容を切り替えます。これより修練を積み、式神をすべて従え、相伝を完成させるのです。一刻の猶予もございませぬぞ」

 

魔虚羅も調伏しろって言ってのか無茶言うなやクソジジイ!

こいつの目は、すでに俺を子供じゃなく、磨き上げるべき「最終兵器」として見ていやがる。

 

「……ああ、分かった。やってやるよ」

 

乾いた返事だけを投げておく。

(……ただし、俺のやり方でな!まずはこのままだとすぐに全身にガタが来そうな生活を、術式を使ってどうにかするのが先決だ)

 

俺の目的は、一族の悲願でも他家へのマウントでもない。

この術式を徹底的に使いこなして、この寒々しい時代を生き抜くこと。

 

魔虚羅調伏は命がいくつあっても足りないしとりあえず放置だ。

あんな自殺志願者専用の隠し玉、気が向いた時にでも考えりゃいい。……まあ、一生その気が向く可能性の方より、宝くじに当たる確率の方がよっぽど高いでしょうけどもね!

 

あんなもんに頼らなくても、俺は俺の方法でやってやる。

 

幼い胸に灯ったのは、一族の悲願なんて大層なもんじゃない。

ちょっとした、けれど絶対に譲れない「快適生活革命」への野望だ。

 

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