戦国転生 4歳から始める十種影法術   作:匿名希望

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思ったより長くなってしまったので、未来編的なやつつまみ食い形式でシーン飛ばし飛ばし三話で終わらせるつもりだったのですがもう少し長くなりそうです。すみません。


一級術師 禪院恵 前編

——西東京市、英集少年院、受刑在院者第二宿舎。

 

特級呪霊を祓い終える、その生得領域が閉じた。

恵の足元に何かが落ちる。

 

(これは……宿儺の指?あの呪霊、宿儺の指を取り込んでいたのか。いや、そんなことより、釘崎と虎杖はどうなった。探しにいかねぇと)

 

「禪院!」

 

「釘崎、無事だったか!」

 

「禪院、聞いて!特級はもう一体いた!虎杖が残った!私はそれを知らせようと動いてたら、生得領域が閉じて戻ってこれた!」

 

もう一体の特級。

虎杖が一人で相手。

決断は早かった。

 

「外に出て応援を、俺が行く」

 

虎杖では特級呪霊相手に生き残ることは難しいだろう。

必然、宿儺と変わっている。

二本飲んだ直後、大丈夫だった。と言う話は聞いている。

だが二本で宿儺に変わったら?

絶対に戻れる保証はあるのか?

 

(もしもの時は俺がやらねばならない。これを釘崎に伝える必要はない)

 

釘崎野薔薇は唇を噛んで考える。

(禪院は正しい。特級呪霊相手では私は足手纏い)

 

「わかった」

 

「避難区域を広げてもらってくれ、釘崎よく戻って伝えてくれたあとは任せろ」

 

その時、第二宿舎が「バラバラ」になった。

恵の直感が告げている。

 

——これは、呪霊ではない。

 

「釘崎急げ、振り返るな!離れろぉ!」

 

脱兎を呼び虎杖、いや宿儺がいるであろう第二宿舎への残骸へと向かわせた。

幅広く周囲に配置、同時に影を広げ索敵の範囲を広げる。

 

10秒、20秒。

 

サッと頭から血の気が引く感覚とともに、雨の音が消える、時間が引き延ばされているかのような。

 

刹那、恵が放った裏拳は宿儺によって防がれる。

 

「ふむ、女は逃げたか」

 

「両面、宿儺……!」

 

(虎杖は戻れなかった、ならば)

 

「お前はここで殺す、虎杖……いや両面宿儺」

 

「クッ、お前は小僧と違って呪術師のようだな」

 

(特級を祓うのにかなり呪力を使っちまった。全力戦闘は長時間できない)

 

突如宿儺の視界から消える恵、地に両手を付け、視覚外から呪力を込めた蹴りが入る。

完璧に宿儺の横っ面を捉えた。

 

意識の外から来たそれに当たりながら、宿儺は恵の足を掴む、そこに玉犬白と黒が交差するように宿儺と恵を引き離し、即座に影に戻る。

一瞬の浮いた時間、恵の回し蹴りが宿儺を弾き飛ばした。

 

宿儺が体勢を立て直す。

 

「面白い、式神使いのくせに随分と近接慣れしているようだな」

 

「呪いの王は思ったより大したことなさそうだな」

 

(この感じ、全力戦闘ではやや俺に分がある、一気に畳み掛ければ)

 

「ふむ、確かにお前はなかなかやる、では」

 

そういうと宿儺は指を取り出し飲み込んだ。

 

(指!?まさか、虎杖たちの方の呪霊も取り込んでいたのか!)

 

「ここからが本番と行こう、呪術師」

 

指を取り込んだ宿儺の呪力が跳ね上がった。

速度、重さ、全力戦闘でなんとか互角未満。

宿儺は余裕を持ち、恵は式神をピンポイントで使いながら、なんとか凌いでいる。

 

息を吸えない、地上にいるのに溺れているようだった。

 

宿儺の呪力を込めた蹴りが刺さる、恵は大きく後ろに弾かれる。

受け身をとって体勢を立て直した。

(扇さんとの訓練がなかったらもう終わっていたな)

 

「いい術式を持っている。使い方も悪くない。だがお前の呪力量では宝の持ち腐れだな」

 

「うるせえな、余計なお世話だ」

 

距離がある。

今のうちに呼吸を整える。

 

「正直、最初はなんとかなると思っていた。でもどうにも無理そうだ。だから改めて『虎杖お前を殺す』」

 

空気が変わる。

呪術戦の極致、領域展開。

 

「……お前、まさか」

 

「——嵌合暗翳庭——」

 

 

 

 

過去、禪院影久は何らかの縛り、あるいは解釈で十種影法術の式神たちの完全破壊を免れていたらしい、ということが禪院家では伝わっていた。

一度破壊されると復活に時間がかかっていたことから、万能の手段というわけではないらしいということもわかっている。

当然以降の十種影法術の使い手も同じようなことを考えた。

 

禪院影久は式神の自律させ、影の中にいても常時顕現扱いで呪力を消費し続けるという縛りで完全破壊を免れていた。

 

という説がある。

 

勝手に式神が出てきて好き勝手に、時には影久の意思すらも無視して行動していたことから真っ先にこれでは?と推測され、これじゃないと否定された。

 

なぜか、それは次代の十種影法術の使い手が試みた際、あまりの呪力消費量にすぐに条件変更を余儀なくされたからだった。

 

式神自律させるのは変わらないが、更に影操作そのものを放棄、影の操作そのものを式神に完全に任せることにより、自身の危険を悟った式神が己の意思で安全圏に逃げることができるという運用。

 

これは三、四世代を通じて実現した。

しかし自分自身で影を一切操ることができなくなるのはあまりにも不便だった。

それに加え自律で、勝手に出てくることもあり、やはり消費量が嵩み、尋常の呪力では運用不可。

この方向性は凍結となった。

 

部分顕現、と影状態での半顕現で完全破壊を免れる方法。

一部の破壊や、完全顕現でなければ、完全破壊を免れることができるため用いられた。

 

これは五世代により確立され成功例として記録されている。部分顕現だけは。

半顕現はあまりにも不安定な状態での顕現、形を固定させないため呪力が垂れ流し状態になるため、超超高度な呪力操作と、莫大な呪力量を必要とするためこれ以上は無駄と判断され研究されることはなかった。

 

脱兎を調伏、以後の式神を全て脱兎との嵌合獣とすることで本体を影の中に顕現。

破壊を免れながら、脱兎の能力でコピーを利用するという方法。

 

影久を超える呪力量に、影久の次にセンスが高かったとされる6世代の十種影法術使いがとった方法は正気ではなかった。

本人は運用できていたが、参考にもならない。

 

 

影久から数えて7世代目の十種影法術使いが革命を起こした。

影=式神とし、顕現するものは全てコピーである。

顕現時強制的に込めた呪力の50%を徴収される。

本来の込めた呪力の半分の能力しか持たない。

そして破壊され再顕現の際には、その式神は込められた呪力量をベースにし、指数関数的に呪力を注ぎ込まないと復活させることができない。

(魔虚羅は調伏できなかったのでわからない)

 

彼女が優れていたのはこれを「帳を利用した一戦闘」という縛りで運用したことにある。

 

「同一戦闘中で破壊された場合、その再顕現回数」により戦闘後に必要な召喚コストが指数関数的増加。

 

これのキモは、同一戦闘中において式神が破壊された場合、再顕現そのものには追加コストを要しないということ。

そして戦闘終了後、その戦闘中の再顕現回数に応じて次回召喚に必要な呪力が指数関数的に増大する。

ある特級呪霊との戦闘において幾度も再顕現された玉犬と鵺は、その必要呪力量が術師の生涯総呪力量を超過し、事実上召喚不能となった。

 

 

 

 

そして、影久から数えて八世代目、現代十種影法術の使い手である恵の領域は、この七世代目の運用とあまりにも相性が良かった。

 

世界が影に包まれる。

この領域の中では無限に、式神が生まれ続ける。

必中はない。必要ない。

影はどこにでも、ある、足元にも。

 

領域展開「伏魔御廚子」

 

宿儺の領域が広がった。押し合いが発生する。

閉じない領域ではない、指三本の出力では恵の領域の外側まで広げることはできない。

 

影の海から式神という津波が起こった。

それが宿儺側の領域に流れ込むたびに切り刻まれ霧散していく。

一分、二分。

 

「まさか、領域まで使えるとはな!禪院恵!」

 

(まずい、呪力が持たない!押し合いも互角、……いや分が悪い、どうする!)

 

式神は向こうの領域を押し込みつつある。

しかし肝心の領域の押し合いでは宿儺に勝ちが傾きつつあった。

しかし……。

 

「……チッここまでか」

 

先に宿儺の時間切れが来る。

肉体の主導権が虎杖悠仁に戻ろうとしていた。

 

 

▫️▫️▫️▫️▫️▫️▫️▫️▫️▫️▫️▫️▫️▫️▫️▫️

「今戻れば死ぬぞ」

 

「知るか!俺の体だ、返せ!」

 

「面白い」

 

宿儺が口元を歪める。

 

「だが死ぬぞ」

 

「だったら死ぬ前に禪院を止める」

 

「……」

 

宿儺は数瞬だけ黙った。

 

「死ぬなよ、小僧」

 

「は?」

 

「貴様にはまだ用がある」

▫️▫️▫️▫️▫️▫️▫️▫️▫️▫️▫️▫️▫️▫️▫️▫️

 

 

宿儺の領域が消える。

 

「ぜっ」

 

そこで初めて虎杖が息を呑む。

目の前には影の海。

数え切れないほどの式神。

 

「禪院――」

 

無数の式神が宿儺、いや虎杖悠仁の身体を引き裂いた。

恵が領域を解いた。

倒れ伏した虎杖悠仁へ歩み寄る。

 

「悪いな」

 

虎杖の胸はまだ僅かに上下している。

 

「他に方法が思いつかなかった」

 

「……悪い禪院、面倒かけちまったな、お前らは長生きしろよ」

 

 

 

 

 

 

「……長生きって、自分が死んでりゃ世話ないわ」

 

「そうだな……、呪術師やってりゃ仲間が死ぬこともあるが、流石に俺が殺したってのは堪える」

 

恵と釘崎はありていに言えば凹んでいた。

同級生が死んだ。恵に至っては自らの手で殺したのだ。

 

「よう恵、なんだ辛気臭い顔して」

 

「真希さん」

 

「お前ら特級を祓ったんだろ、すげえじゃねえか。なんでそんなお通夜みてえな顔してんだよ」

 

「真希!真希!まじで死んでるの!一年が!」

 

「おかか!!」

 

「はやく言えや!!」

 

そこから二年の先輩の紹介が釘崎にむけておこなわれた。禪院真希、狗巻棘、パンダ。

 

「パンダァ!?」

 

「あと乙骨先輩って人が今海外」

 

パンダが手合わせて、来た理由を告げる。

 

「喪中のタイミングにスマンが姉妹校との交流会に出てほしくてな」

 

高専は東京だけでなく京都にもあり、年一回交流会を開いている。本来は二、三年がメインのイベント事だが、どうやら三年が停学中らしい。

それで一年の二人に勧誘の声をかけに来ていた。

呪術師同士での戦い、呪術合戦。

 

「なるほど、確かに乙骨先輩と三年抜きは厳しいですね。あっちは東堂先輩が出てくる」

 

「東堂先輩ってだれ?」

 

 

——半年前、十二月二十四日、百鬼夜行。

 

「禪院恵、真依からお前のことは聞いている」

 

「は?なんだいきなり」

(真依さんから聞いてる?ってことは)

「アンタ京都校の人?」

 

「どんな女がタイプだ?」

 

空気が凍りついた、当たり前である。

相手がこっちのことを知っているだけで、

初対面、

自己紹介もなく、

いきなり異性の好みを聞いてきた。

普通に考えてあり得ない。

 

「初対面で自己紹介もなく聞くことじゃないだろ。俺は禪院恵、そっちは知ってるみたいっすけどね。アンタは?」

 

「京都二年、東堂葵だ。因みに俺は身長と尻がデカイ女がタイプです。さあ答えろ禪院恵」

 

「料理が上手い人。飯マズとは結婚できない」

 

東堂が困惑する。

 

「は?」

 

「アンタが知ってる人で言うなら、禪院真依その人のようなのがタイプですね」

 

「は?」

 

禪院恵は止まらない。

料理がうまいこと。

「待て」

掃除ができること。

「なんだそれは」

仕事ができること。

「お前それは」

ある程度身を守れる強さもあること。

「タイプじゃない」

料理の腕にあぐらをかかない、親父さんの背中を追いかけて、努力を続けていること。

「それは理想の嫁だ」

 

「違うのか?」

 

「お前、色気というものを知らんのか?」

 

ここで初めて恵が困惑した。

 

「いや、真依さんを血が近すぎてそう言う対象では見たことはねぇけど。っていうかアンタは飯マズでも結婚できるんすか?」

 

「ブハッ!そういう問題ではない!」

 

そこで東堂はいったん言葉を切った。

恵が、「む、すまんそうなると即答は難しい」と返すと東堂が堪えきれなかったと言わんばかりに笑い出した。

 

「面白いやつだな、禪院恵!」

 

その時、号令がかかる。

百鬼夜行。

 

「っと、始まったみたいだ、東堂先輩。いきましょう」

 

——時間は現在に戻る。

 

「で、東堂先輩と共闘して特級と一級を何体か祓ったんだが……」

 

「待て待て、情報量が意味のない方向に多い!」

 

「お前昔から真依に懐いてたもんな」

 

「飯がうまいのは重要ですよ、真希さん」

 

釘崎が頭を抱えた。

 

「そこじゃないでしょ!くそ、私がおかしいのかこれ!」

 

要するに、と恵がまとめた。

東堂葵は強い。三年と乙骨先輩抜きでは厳しい。だから——。

 

「俺たちも出よう、釘崎」

 

「術式なしなら私が一番強い、術式ありなら恵だ。仲間が死んだんだ。鍛えてやる。やるだろ釘崎」

 

「やる!」

 

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