戦国転生 4歳から始める十種影法術   作:匿名希望

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「渋谷事変」のパートとすることにしました……。
あとちょっと、うっかり漏らしそうなので感想ちょっと当たり障りなく返しますすいません。


渋谷事変②

連絡通路を漏瑚の放った爆炎が走る。

1000度まで耐えるはずの壁の表面が融解する。

迫る炎に扇は一歩も退かなかった。

刀が抜かれる。

 

逆袈裟一閃。

 

迫る爆炎が斜めに断ち割られる。

分かたれた炎流が通路の左右を舐め、コンクリートを赤熱させた。

扇は刀を振り抜いたまま動かない。

 

(術式なし)

 

—火礫蟲—

漏瑚が大量の小型の呪霊放った。

超高速で迫るそれを切る、切る、切る、切る。

 

(復活までは……)

 

短く息を吐く。

 

(問題なし)

 

そう思いながらも、扇の手はわずかに湿っていた。

 

 

 

 

 

 

漏瑚は火礫蟲を放ちながら、夏油との会話を思い出していた。

 

「五条悟は儂が殺す」

 

そうして席を立とうとした漏瑚に対して、あの男は笑っていた。

 

「ああ待って、まだいるよ。君たちが勝てない術師」

 

「あぁ?」

 

「禪院扇」

 

夏油は言っていた。

現代に残る術師の中でも特に危険な一人。

焦眉之赳という炎を操る術式を持つ。

単純な火力ならおそらく自分を上回る、と。

だから遭遇したなら警戒しろ。

必要なら撤退しろ。

そう聞かされていた。

だが。

 

目の前の男は刀しか使わない。

 

漏瑚は眉をひそめた。(何をしている?)

火礫蟲が斬られる。(刀だけだと)

また斬られる。(なぜ術式を使わない)

まだ術式を使わない。

 

漏瑚が攻撃の手を止めた。

 

「貴様、舐めているのか。なぜ術式を使わん!」

 

扇は答えなかった。刀を軽く構え直すだけ。

一瞬の間。

「 」漏瑚が怒りに震え声をあげようとした刹那。

扇が初めて動いた。

 

刀が届かない距離。

だが禪院扇という術師にとって、その間合いは。

 

咄嗟に漏瑚が地に伏せた、本能だった。

頭の一部が宙を舞った。

(斬られた)と思った瞬間、扇の姿がそこにはない。

 

連絡通路は密閉空間、己の有利だと思っていた。

炎で包み込む、相手は逃げる先がない。

 

だが違った。

 

禪院扇は壁、天井、柱全てを足場とし、迫ってくる。

密閉空間は己に有利なだけではない。

漏瑚の視界の端で扇が消える。壁を蹴って移動している。

 

火礫蟲を撃つ。だが届かない。壁が切られる。

その先に、渋谷のビル群が見えた。

 

(外か)

 

漏瑚は一瞬だけ目を細める。

この空間では術式の全力は出せない。

ならば——戦場を変える。

 

扇の誘導ではない。

 

(乗ってやろう)

 

自らその選択に至った。

漏瑚は外へ続く穴へ跳ぶ。

 

 

 

 

 

 

(……乗ってきたか)

 

扇はその動きを見て、わずかに息を吐いた。

呪霊相手に悟らせないように注意していたが、扇には余裕がなかった。

呪霊に警戒を促し、己に意識を向けさせる。

 

——もし。

 

自分を無視して上に向かわれたら。

術式の焼き切れに気が付かれたら。

 

それだけは避ける必要がある。

呪霊に「選ばせた」まま、外へ導く。

術式の回復まであとわずか。

 

 

 

 

 

22:24 四階アベニュー口

 

漏瑚と扇が連絡通路から飛び出した頃。

大したオフィス等から真希と釘崎はその戦いを見ていた。

 

「扇さん、強すぎ」

 

「あの呪霊も相当やばい、こっち側で勝てるのは、親父か甚爾か……」

 

外で炎が爆ぜる。

空気が揺れ、オフィス街の窓ガラスが震えた。

扇がまだ戦っている、術式を使っていない。

炎を扱っているのは呪霊だけ。

 

そして、遥か上空に巨大な火球。

 

「親父、まだか……」

 

その時前扇から青い炎が上がった。

術式が、戻る。

 

 

 

 

22:25 渋谷

 

扇から青い炎が立ち上っていた。

漏瑚がここにきて状況を悟った。

 

「貴様、まさか」

 

「正直なところ、かなり綱渡りだった」

 

してやられた、舐められていたのではなかった。

この術師は術式が焼き切れていた状態で己と戦っていたのだ。

 

夏油の言っていたことは正しかった。

この術師は五条悟とは全く違った強さを持っている。

どうする。

自分が死ぬのは構わない、それは問題にすらならない。

勝ち目が見えない今、なんとか生き延びて最低限の目的を達成しなくてはならない。

 

(宿儺の指を器に食わせる)

 

決断した漏瑚は絶死の縛りを己に課した。

 

一つ、宿儺の器に指を食わせた時点で死ぬ。

 

二つ、その代わり、「隕が完全に処理されるまでは死なない」

 

縛りを受け、漏瑚の呪力が跳ね上がった。

隕が膨張する。ただでさえ巨大だった火球が、今では地上に降りてきた太陽のようになっている。

 

焦眉之赳・極ノ番『天地大竈』

 

扇の熱量操作が、隕の熱を喰い尽くしていく。

炎が、消える。

漏瑚の極ノ番を扇による極ノ番が無力化する。

 

 

——かに思われた。

 

 

 

「……何……だと……?」

 

その呟きは扇と漏瑚、果たしてどちらのものだったか。

炎は消えた。だが質量は消えない。

極ノ番・隕には核がある。

熱を失った巨大な塊が、いくつもに裂けて渋谷の上空へ散らばっていく。

 

漏瑚が離れていくのはわかっていた。

しかし扇に漏瑚を追う選択肢は取れなかった。

 

 

 

 

 

21:35 東京メトロ 渋谷駅 B5F 副都心線ホーム 

 

(まさか封印とはねぇ、そうきたか)

 

距離を取った禪院甚爾は気づかれることはない。

 

(火山に縫い目、タコ(?)にフェイスライン。パッチワークはこないだのやつだな)

 

禪院甚爾は考える。

 

(火山、たぶん殺せる)

(パッチワーク、殺せる)

(フェイスライン、殺せる)

(縫い目、わからん)

(タコ、雑魚)

(全部まとめて、は無理だな)

 

禪院甚爾は観察を続ける。

 

(縫い目が何かを話している。

火山が頷く。

パッチワークが笑う。

フェイスラインは黙っている。

タコ、はよくわからん)

 

(縫い目が頭か、いや待て……あいつ見たことあるな)

 

(呪霊どもが散っていく。

火山もいない。パッチワークもいない。

フェイスラインもいない。おまけでタコもいない。

残ったのは縫い目だけ)

 

本来なら今が好機だ。

だが縫い目は動かない。

何かを待っているようにも見える。

 

(妙だな)

 

甚爾は視線を上へ向けた。

地上ではもう戦闘が始まっている頃だろう。

恵。真希。直哉。

そして。

 

(扇のオッサンがいる)

 

短く考える。

 

(恵はまだ甘い、だが死ぬほど弱くもない。何より直哉がついてる。真希もいて、そっちには扇のオッサンがいる。なら地上はそうそう崩れねえ)

 

結論が出た。

縫い目の観察を続ける。なぜ動かないのか。何を待っているのか。あの箱は何なのか。

 

(それを、見極める)

 

 

 

 

22:40 渋谷駅 地下連絡通路

 

漏瑚が辿り着いた時。

虎杖悠仁は死にかけていた。

砕けたコンクリートの上に倒れている。

周囲には戦闘の痕跡。

血痕。

崩れた壁。

吹き飛ばされた改造人間。

その傍らに真人がいた。

 

「おっ漏瑚間に合っちゃったかあ。途中までは脹相もいたんだけどさあ。頭抱えてぶつぶつ言いながらどっか行っちゃってさあ」

 

真人が肩を竦める。

 

「あー宿儺の器殺せなかったな。別に宿儺なんていなくてもいいと思うんだけどね。んじゃ俺は上で人間殺してこよっかな」

 

背を向けた真人に漏瑚が声をかけた。

 

「真人……また……会おう」

 

「ああ、また後で」

 

 

 

漏瑚が消え、宿儺が目を覚ます。

 

 

 

 

22:45 渋谷

 

直哉と恵は扇と合流、地上にいた術師たちとも協力しなんとか大破壊を防いだ。

隕の残骸。熱せられた鉄骨。砕けたビル。その中心に扇がいた。

 

「ほう、なるほど。火山を殺したのは貴様か」

 

「両面…宿儺…」

 

「ふむ、万全なら今の俺といい勝負になったかもしれんが」

 

宿儺が右手を軽く上げる。

 

「運が悪かったな」

 

何かが走る、扇の瞳が細まる。

咄嗟に刀を振るう。金属音にも似た衝撃。

しかし完全には逸らせない。

胸元が裂け、血が舞った。

 

「……斬撃」

 

「見えているのか、俺の術が」

 

扇は答えない。返答の代わりに刀を横へ流す。

金属音。もう一条。さらに一条。

火花が散った。

地面が裂け、背後のビルが崩れる。

だが扇だけは斬れない。

 

(見えているわけではないな、軌道を読んでいる)

 

(速い、だが捌けないほどの速さではない)

 

扇の胸の傷から血が落ちる。

ビルの瓦礫を踏み砕きながら宿儺が扇へと迫った。

宿儺の拳が振り抜かれる。扇が刀で受ける。

 

衝撃。

 

アスファルトが陥没した。

 

「術師にしてはやるな」

 

(なんという膂力、これは受けてはいかん)

 

宿儺の打撃を受け流すことしばし。

その腕に浅く線が走った。

直後青い炎が傷口から上がった。

宿儺の右腕が白く凍えたように色を失う。

 

「……なるほど」

 

二人の戦いから離れたところに、恵と直哉の姿があった。

隕の処理を扇と共に行い。

他の術師たちと共に渋谷の民間人の避難誘導を手伝い戻ってきたところだった。

 

「ありゃあ、ヤバイな。扇のオジさんもだいぶ疲弊しとる」

 

「前の宿儺とは全然違う……」

 

「そういや恵くん前に宿儺とやり合ったんやったか。加勢できたらええけど、僕らじゃ手を出せん……」

 

宿儺が扇を見ながら笑った。

 

「面白かったぞ、呪術師」

 

片膝をついた扇が刀を構えたまま答える。

 

「光栄だな」

 

恵が顔を上げる。

嫌な予感。本能が悲鳴を上げている。

 

「あれは!」

 

閻魔天印 領域展開『伏魔御廚子』

 

世界が切り替わった。

扇と宿儺を中心に、

 

次の瞬間。

無数の斬撃が扇へ殺到した。

 

秘伝「落花の情」

 

火花が散る。青い炎が弾ける。斬撃が逸れる。

 

「ほう」

 

宿儺の口元が歪んだ。

 

一度。二度。十度。百度。千度。

 

だが防ぎ切れない。肩が裂ける。

腹が裂ける。腿が裂ける。

 

(生き残る気か)

 

恵は息を呑んだ。

直哉の眉間に皺が寄っている。

 

「なんやあの領域、壁がないんか?」

 

領域に壁がない、中が見えるはずなのに。

斬撃の嵐で中は見えなかった。

ただ青い火花だけが断続的に弾けていた。

 

領域が消える。

満身創痍、だが扇は生き残った。

 

「見事だ」

 

宿儺が笑う。

恵を見た。

 

「よいしっかり生き残っているな」

 

不意に、上から人が降ってきた。

膝を折り、頭を下げ宿儺に声をかけた。

 

「宿儺様、お迎えにあがりました」

 

「裏梅か!」

 

「お久しうございます」

 

 

 

 

22:50 東京メトロ 渋谷駅 B5F 副都心線ホーム 

 

「さて」

 

誰もいないホームに声が響く。

 

「獄門疆は五条悟の情報処理は出来たかな?」

 

羂索が獄門疆を持ち上げる。

その時だった。

長時間同じ姿勢でいたせいか。

僅かに足元がふらついた。

立ち位置が半歩ずれる。

その直後。

 

ブンッ

 

風切り音。

一拍遅れて血が噴き出した。

左肩。

浅い。

本来なら首だった。

 

(……今のは)

 

避けたのではない。生き残っただけだ。

偶然、ただそれだけ。

もし足が痺れていなければ。

もし重心が僅かでも違っていれば。

自分は死んでいた。

羂索はゆっくり振り返った。そこに男が立っている。

 

「外したか」

 

呆れたような声。

 

「勘のいい野郎だな」

 

羂索はその男を知っていた。

 

「なるほど」(禪院甚爾か)

 

「それに五条が入ってるってんならさっさと殺っちまえば良かったな。無駄に様子見しちまったぜ」

 

羂索は獄門疆を片手に持ったまま後ろへ跳ぶ。

その動きに合わせるように、甚爾の姿が消えた。

速い。

 

次の瞬間には眼前。

釈魂刀が振り下ろされる。

羂索は咄嗟に腕を上げた。

 

斬撃。

 

袖ごと肉が裂けた、傷は浅い。だが違和感が残った。

(反転が——釈魂刀か)

 

傷口を見る。治らない、いや正確には治っている……だが遅い。

 

「へぇ」

 

甚爾が釈魂刀を肩に担ぐ。

 

「お前治せる口か」

 

羂索は答えない。答える代わりに距離を取る。

 

「随分と厄介な得物を持っているね」

 

「そう思うなら、それ置いてけよ」

 

冷や汗が羂索の額を流れた。

 

 

 

 

22:55 渋谷駅構内

 

脹相は走っていた。

夏油傑の肉体を奪った男の元へ。

縫い目の男。

 

加茂 憲倫。

 

(あいつは)柱を蹴る。

(あいつは!)血が沸騰する。

 

(必ず殺す)

 

獄門疆は動かせないと言っていた、だったらあそこにいるはず。通路を曲がる。その先に人影。

真人が道を塞いだ、脹相は止まらない。

 

「おや、脹相じゃん」

 

「どけ」

 

真人が笑う。

 

「怖いなぁ」

 

脹相はそのまま通り過ぎようとする。真人がついてきた。

 

「夏油のとこ行くの?」返事はない。

「怒ってるんだ」返事はない。

「兄弟ごっこ?」脹相が初めて止まる。

 

ゆっくり振り返る。

 

「貴様」

 

真人は笑っている。

 

「何?」

 

「それ以上」

 

血が滲む。

 

「弟を侮辱してみろ」

 

真人の目が少し開く。

ゆっくりと口角が引き上がる。三日月のように歪んだ唇の奥に、ぞっとするような企みを覗かせていた。

 

「へえ、そんなに大事なんだ。弟」

 

真人が脹相へ近付く。一歩。また一歩。

真人は心底楽しそうだった。

首を傾げる。

 

「だってさ、この前まで殺そうとしてたじゃん。兄弟って知った瞬間に大事になるんだ?」

 

空気が凍った。

脹相の周囲に血液が浮かぶ。

 

「消えろ」

 

真人は笑う。

 

「嫌だ。だって君、今すごく人間っぽいから。宿儺の器そろそろ虎杖悠仁に戻ってるのかな?脹相が夏油のところに行くなら……」

 

「………」

 

「俺は虎杖悠仁を殺しにいこっかなあ」

 




タイムラインとか、場所とか確認してるんですけど。
めちゃくちゃ複雑で移動経路とかも把握しきれない・・・!
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