戦国転生 4歳から始める十種影法術 作:匿名希望
ルール10、参加者は一度だけ死を無効化できる。その権利は100点で再購入できる。権利の保持は一つ限り。
▫️羂索
11月8日
『プレイヤーによる死滅回遊へのルール追加が行われました!!』
「一気に2つもルールが追加されたか」
羂索は少しだけ目を細めた。
ルール9
『プレイヤー情報の開示』
ルール10
『参加者は一度だけ死を無効化できる。その権利は百点で再購入できる』
「……随分と大胆だ。結界そのものに反転術式を組み込むことはできない。そんな出力は現実的ではない。」
指先で顎をなぞる。
「ならば死の瞬間、結界側から必要量だけ呪力を供給して肉体を再構築するか……あるいは参加者全体から徴収した呪力を循環させる仕組みか」
どちらにせよ。
死滅回游という巨大結界だからこそ可能な芸当だった。
「百点という対価も悪くない。点を稼がねば保険は得られない。保険を失えば再び戦う。戦えばまた点を欲する」
口元がわずかに緩む。
「面白いね。死を恐れて戦えなかった者も動くだろう。逆に、一度は死ねるという安心感が攻撃性を高める者もいる」
「結果として、戦闘頻度は増える。呪力の攪拌も早まりそうじゃないか」
そこで一度言葉を切る。
そこで羂索は、試すようにコガネを呼び出した。
「プレイヤー一覧。」
鹿紫雲一。
石流龍。
烏鷺亨子。
日車寛見。
乙骨憂太。
既知の名が流れていく。
………。
禪院影久。
羂索の指が止まった。
「……」
もう一度見る。
見間違いではない。
「……は?」
羂索は黙ったまま、その名を見続ける。
「あり得ない」
否。
あり得ない、と切って捨てられるほど、呪術は素直ではない。
「……同名?そんな偶然は考えなくていい」
すぐに自ら否定する。
「禪院家の誰かが騙っている?」
これも違う。
プレイヤー名は自己申告ではない、結界が認識した存在そのものだ。
受肉先の器の名前か過去の術師の名前。
あの男は、死んだ、いや殺した。
御前試合の直後。
六眼との戦いを終え、鹿紫雲一との決着の直後。
「ならば何だ」
生き延びた?呪物化?式神?
十種影法術特有の何か?
どれも説明は付く。
どれも説明が付かない。
「……少なくとも」
羂索は静かに目を細めた。
「禪院影久は私に辿り着いていた可能性がある。いや、それ以上か。あの男が何を知っていたのか、それが分からない」
11月10日 東京
勧誘を終えた恵は二人を連れ、虎杖たちと合流した。
九十九、呪胎九相図の三人は天元の守護に残ることになり、獄門疆・裏を開くために東京第二コロニーへ「天使」を名乗るプレイヤーを探しに行くとになった。
秤が肩をすくめる。
「鼻が効くパンダと五感が優れた真希が天使探し、一番強い俺がそこに……同行、と言いたいところだったんだが」
恵の影から魔虚羅が姿を現した。
「主である禪院影久は御前試合で当時の六眼に勝利している。鹿紫雲一はその主・禪院影久と引き分けた存在だ。現代の術師では荷が重い」
「流石にそれを聞いちまうとなあ」
負けないかもしれないが勝つことは難しいだろうと秤は続けた。
要するに、と綺羅羅がまとめる。
「言っちゃえば悟ちゃんに勝ったレベルの呪術師ってことでしょ?」
釘崎が疑問を投げかける。
「それ、ほんとなの?同じ十種影法術の禪院もそのくらいになるってこと?」
「十種影法術は使い手で別物になる。式神は同じでも、扱い方も、戦い方も違う。禪院恵次第だ」
東京第二コロニー
禪院恵
禪院真希
パンダ
『鹿紫雲一に出会った場合、無闇に戦うことはせず、禪院影久の名前を出せ。鹿紫雲なら、コロニーの範囲であれば、どこからでも気がつける雷を出すことができる。その後、恵と私の到着を待て』
東京第二コロニー「東京港湾部」
鹿紫雲と出会ったパンダは一瞬で破壊された。
プレイヤーだと確認された直後、地面へ叩きつけられ肉体が砕け、意識が暗転する。
しばし——
「……は?」
傷一つない身体で起き上がった。
(生き返った……!?)
鹿紫雲が腕を組んで目の前にいた。
「へぇ、パンダでもちゃんと生き返ったようで何よりだ」
パンダは反射的に距離を取る。
(何だこいつ……、無闇に戦うなとかそんな次元の相手じゃないだろこれ!)
たった一撃でやられた、何もできなかった。
鹿紫雲は退屈そうに首を鳴らす。
「やっぱ追加しといて正解だったな。質問する前に死ぬ奴ばっかだった」
パンダの表情が変わる。
「……ルール10、お前が追加したのか。」
「ああ、9と10をな」
鹿紫雲は当然のように頷いた。
「死なれちゃ聞きたいことも聞けねぇ。だから一回だけ生き返れるようにした。そんで、オマエ宿儺がどこにいるか知ってるか?」
「……鹿紫雲一に出会ったら、『禪院影久』の名前を出して待て、と言われている。あんたが雷を出せばすぐ来れる、とも」
鹿紫雲は数秒黙る。
「……影久、だぁ?」
目が細くなる。
「面白ぇ。あいつがこの時代にいるとは思えねぇ。だが、俺のことを知ってて、その名前を使う奴がいるってことか」
パンダは何も答えない、鹿紫雲は笑う。
「いい。ノってやる」
そう言って右手を空へ向ける。
「派手にやりゃ気付くんだろ」
バチッ――
雷光が掌に集まる。次の瞬間。
稲妻が港湾部の空を貫いた。
まるで避雷針に落雷したような閃光が、コロニー中へ響き渡る。
東京第二コロニー「遊園地エリア」
真希がシャルル・ベルナールを足蹴にしながらブチ切れていた。
「テメェ!雑誌に載ったこともないくせに、あんだけ偉そうに語ってたのかよ、くっそめんどくせえ絡みで時間取らせやがって!」
「すいません!痛い!痛いです!」
四つん這いになってヘコヘコと謝罪しながら謝罪するシャルルに毒気を抜かれ、つぶやく。
「はぁー、くそ。早いとこ天使ってのを見つけなきゃいけねぇのに」
「……天使、というのはもしかして羽の生えた少女のことか?」
「お前それっぽいの知ってんのか!?」
「あ、ああ、でも。結界の外に出ていくのを見たから、この辺にはいないんじゃないかな」
その時、轟音が響いた。港湾部に雷が落ちる。
鵺に乗って恵が真希の元へ近づいてくる。
「真希さん!」
「恵、今のは!」
「おそらく今のが魔虚羅の言ってた鹿紫雲一です!急ぎましょう!」
恵の呼び出していた鵺の姿がブレ、その背が一瞬影に戻る。
そこから影久のものであろう大蛇と鵺の嵌合獣が出てきた。
「また勝手に……」
魔虚羅が頭だけ出して恵に声をかけた。
「それが主の縛りだ、我らはそれぞれ勝手に顕現できる」
恵と真希を掴むと一気に東京港湾部へと向かう。
東京第二コロニー「東京港湾部」
巨大な嵌合獣が着地する。
鹿紫雲は腕を組んだまま動かない。
その視線は一瞬だけ恵に向いた。
しかしその後は影から姿を現した白い少年へ固定される。
「……ほう」
魔虚羅も鹿紫雲を見る。
「久しいな、鹿紫雲一」
「お前、影久の式神だな。魔虚羅とか言ったか。影久はあの時で死んだ。なのに、お前だけ残ってる。どういう理屈……」
鹿紫雲の纏う空気が突如変わった。
「ん?お前話せたのか?」
「説明しよう」
魔虚羅による現状説明が始まる。
羂索に決着後に主が暗殺されたこと。
それをきっかけに呪物化したこと。
禪院家の影に代々入り込みこの時代に覚醒したこと。
そして——
「鹿紫雲一。お前は宿儺と闘うため、この時代へ来た」
「ちょ、ちょっと待て!」
パンダが慌てて割って入る。
「それ言ったら——」
「問題ない」
魔虚羅は鹿紫雲から視線を外さない。
「むしろ説明しなければ話が進まない。宿儺は受肉体ではない。虎杖悠仁という器が完全に押さえ込んでいる。そして現状、虎杖を殺せば宿儺ごと消滅する可能性が高い。この状況を作ったのは羂索だ」
パンダが目を丸くする。
「……あ」
「そうか。鹿紫雲が宿儺と戦いてぇなら、羂索が一番邪魔なのか」
真希も思い出したように口を開く。
「そういや渋谷で宿儺が暴れたのも、羂索が指を一気に食わせたからだったな」
「その通りだ。」
魔虚羅は肯定し、さらに続けた。
「羂索は宿儺を閉じ込める器を作った。それだけではない。器の容量を無理やり拡張した。ならば、残りの指を取り込んだところで宿儺が表へ出られる保証はない。少なくとも私はそう見ている。羂索は宿儺を封じる檻を作り、その檻をさらに強固にした」
嘘は言っていない。
最後にちょっと推論を足しただけである。
鹿紫雲は俯いた。
「……そういうことか。」
沈黙。
雷が走る。
誰も喋らない。
空気だけが震える。
バチッ
一本。二本。三本。
恵が反応する。
「まずい!」
魔虚羅が前へ出る。
「下がれ」
その足元から影が広がった。
港湾の地面一帯を覆うほどの巨大な影。
恵・真希・パンダを包み込む。
鹿紫雲の激昂とともに、コンテナヤードの空気が一瞬で「死」の色に変わる。
超高密度の呪力が、足元から地殻を突き破るような大放電となって炸裂した。
「どうなってる!?」
「わかりません、少なくともこの影から出たらやばいってことだけ!」
数千度の大気が膨張し、爆風が並び立つ鉄のコンテナを歪ませて吹き飛ばす。
数万アンペアの地電流がアスファルトを沸騰させ、四方八方へ即死の網を広げた。
だが、その破滅がヤードの全域に届くより早く、呪力と電気を絶縁する影が大きく膨れ上がった。
静寂。
影から出た三人が見たのは、硝子化したクレーターの中心で笑う鹿紫雲だった。
「……はは。そこまで適応したか」
魔虚羅も少し笑う。
「四百年あった。寝てる間に進んでいた」
▫️羂索
禪院影久 東京第二コロニー
「東京第二……」
指先で地図をなぞる。
「あそこには鹿紫雲一がいる。」
偶然、そう切り捨てるには出来すぎていた。
禪院影久と鹿紫雲一、御前試合で激突した二人。
「……もし本当に本人なら」
羂索はそこで言葉を止める。
その瞬間遠く離れた結界の向こうで一瞬だけ空が昼のように白く染まった。羂索は目を細める。
「宿儺が盤上にいないのは、少々都合が悪い。使うか万」
リンゴンリンゴンリンゴンリンゴンリンゴンリンゴンリンゴン——
『プレイヤーによる死滅回遊へのルール追加が行われました!!』
ルール11、プレイヤーはコロニーを自由に出入りすることができる。
▫️宿儺
(あの式神……俺を喰うと言ったか。禪院恵に入るのは悪手。ならば小僧の中にいる意味もない。先にこの檻を出る方法を考えるか)
東京第一コロニーにて受肉した平安の術師、万の襲来。
「——契闊」
檻を捨て宿儺は新たな器を選ぶ。
11月12日 東京 廃墟ビル
羂索は天元を取り込んでいない。
獄門疆「裏」の存在を知らない。
それは手元に獄門疆があるまま、五条悟が復活することを意味する。
「なんで君出てきてるんだよ」
「お前、それが最期の言葉でいいんだな?」
その言葉が羂索の耳に届く頃には、すでに五条悟の拳がその眼前に迫っていた。
あまりにも唐突で避けようのない死。
しかし、五条悟を横合いから巨大な人型の甲虫、万が殴りつけた。
衝突、空気が破裂する。
衝撃波によって周辺の瓦礫が吹き飛ばされた。
着地。
「宿儺、コイツが五条悟ってやつね!」
『そうだ』
五条悟と、宿儺in万が相対した。
「お前宿儺か、いつから女になったんだよ」
『………覚えているか?予定は大きく変わってしまったが』((スルーした……by五条、羂索))
「宿儺と私のラブラブハネムーンを邪魔するクズはぶっ殺してあげるわ!」
『まぁ……そういうことだ』
「待て、宿儺。万。私との約束があっただろう」
本来、宿儺と、万、2人が「同時に」それぞれの術式を使うことは、脳の構造において不可能なはずだった。
——五条悟の『六眼』が、眼前の異形が起こした呪術の矛盾を瞬時に捉え、警鐘を鳴らす。
(目の前の万とかいう女が纏っているのは構築術式で練り上げられた甲虫の鎧。
それを維持しているということは、脳の術式回路は完全に塞がっているはずだ。
それなのに、なぜ僕の無下限が中和された?
領域展延を使えば生得術式は使えない。それが呪術の絶対のルールだ。
だがコイツらは万が構築術式を回し、その上から宿儺が領域展延を纏わせている。
取り合ってないんだ。最初から分けて使ってる。
一つの肉体、一つの脳の中で、二つの魂が完全に役割を分担している。めんどくせぇな……)
「ったく、今何日だ?」
(……あれから何日経ったかも不明、今すぐ戦うのは得策じゃない。みんながどうなったのかも気になる。一旦引く)
——12月24日に決戦の日取りが決まる。
宿儺は今in虎杖のような状態です。
万の偏愛により、術式行使可能、やばいわよ!