戦国転生 4歳から始める十種影法術   作:匿名希望

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彼岸に渡る。

11月13日

 

五条悟へこれまでの経緯が一通り説明された。

 

1、総監部が粛清され、御三家と高専による運営が始まったこと。

 

禪院家にて。

 

「直哉思い切ったなー。ってか上層部が傑の中の奴と繋がってたの?」

 

「せやで、恵くんがついてきてくれたおかげでサクッとカタついたわ。悟くんも五条家当主として、しっかり新総監部の運営について手伝ってや」

 

「俺……っていうか、魔虚羅ですけどね。しかも俺自身の魔虚羅じゃなくて、ご先祖様のものらしいですけど」

 

「そうそう、それについて聞きたいことあるんだよ!正直、目にした時から気になってしょうがなかった!」と、五条は禪院影久の術式だと言う式神、魔虚羅の方へと目を向けた。目隠しをすっと上にずらして六眼でその姿を見据える。

 

「君は結局、術式なの?式神なの?呪物なの?そのどれでもない感じ?六眼で見ても君だけ情報量がおかしい。今の君って何なんだ?」

 

「私は禪院影久の式神だ。ただし、通常の十種影法術の式神ではない」

 

五条がそうだろうね、と頷き返す。

 

「主は現在、『影という呪物』となって禪院恵の影と同化している」

 

(質量を伴わない呪物ってことか?なんだそりゃ)と思ったが五条は続けるように促した。

 

「私はその主に従う式神であり、同時に、天逆鉾によって『十種影宝術』そのものが切り分けられた結果、自立し自律する『十種影法術』そのものでもある」

 

五条の六眼は魔虚羅のことを15歳くらいの少年、以外の情報をぼんやりとしか認識できていない。

呪力の流れはわかる。術式の構造はわからない。その大半が意味不明。

その上、今魔虚羅が口にした"十種影"の先を聞いた瞬間、その情報だけが霞み、輪郭を失っていく。

足元がおぼつかなくなるような、今までの呪術の前提が全て覆るような。

 

「お前が切り分けられた十種影法術ってことは禪院影久には術式が残ってないってことか?」

 

意識を飛ばしかけていた五条が、恵の声で帰って来る。

 

「……待ってくれ。十種影……十種影法術、とは違うのか?」

 

「悟くんどうしたん?十種影法術は十種影法術やろ?」

 

「失念していた。禪院影久は天元の敷いた呪術の理から逸脱した術式を用いている。私が意味を乗せて言葉を発すると、六眼はそれを認識でない。「とくさのかげぼうじゅつ」という同音であるため、六眼を持たないものにとっては『十種影法術』としか聞こえない」

 

突如お出しされるワケのわからない情報。

それに直哉が待ったをかけた。

 

「ちょいまち、影久は『十種影法術』じゃなかったん言うんか?」

 

「説明しよう」

 

魔虚羅の話を要約すると禪院影久は十種影法術を持って生まれたが、特級呪霊との戦いで術式が破損。

その後日本全国を旅し、蝦夷、天元の結界の外へ向かう。

そこで呪力にカテゴライズされる前の力そのものに出会い、影久はそれをアイヌの言葉から『神威』と命名。

『神威』をベースとした術式に再定義。十種神宝を元に作り直した『十種影宝術』とした。

 

「天元の理に依存しているからこそ、理の外側のものに対して誤作動を起こしたのだろう。以前の六眼も似たような反応を示した。しかし五条悟ほどの反応はなかった。お前の六眼の方が敏感のようだな」

 

「僕の六眼の方が性能が上ってこと?」

 

「そういうことだろう。処理能力が高すぎるせいで逆にエラーを起こしている。分かりやすくこの時代で例えるならば、CPU性能が上がったから未知のデータまで解析しようとして、クラッシュするようなイメージだ」

 

余りにも現代に染まった魔虚羅の例え話に、五条から思わずといった笑いが漏れた。

 

「じゃあ、そのエラーを使って御前試合でご先祖様を完封したってこと?」

 

五条から飛び出た情報に今度は禪院家側から声が上がった。

 

「完封!?」「ちょいまち、ウチには影久が勝ったってことしか残っとらんで!?」

 

「あ、そうなんだ。もっとはっきり言うとね。うちのご先祖様は16年間の手合わせで一度も禪院影久に勝ってないんだよ」

 

言葉を失う直哉と恵。

 

「こと、ここに及んでは羂索を警戒する必要がないので答えよう。本来の十種影法術の式神『八握剣異戒神将魔虚羅』の能力は2つある」

 

そう言いながら魔虚羅は頭上に法陣、手元に剣を顕現させた。

 

「一つは対呪霊に特化した退魔の剣。そしてもう一つがあらゆる事象への適応。つまり、その手合わせによって、御前試合の時には無下限呪術と当時の六眼五条遥の呪力に対し適応は完了していた」

 

「……その適応って、影久本人にも反映されるの?格闘戦でも勝てなかったってあるんだけど」

 

「本来の『十種影法術』では反映されない。『十種影宝術』においては式神全体と、主人へと共有される」

 

「……それ反則じゃん」五条の口から漏れる。

「うちのご先祖様やばすぎやろ」直哉が呆れ。

「歴代の十種影法術じゃ再現できないわけですね」

 

と恵が締めた。

 

「回数が多いほど解析の機会が増え、出力の高い攻撃ほど情報量が多く、解析と適応にかける時間が短くなる」

 

「……そりゃ『十種影法術』じゃなくなるし、ウチのご先祖様も勝てないってわけだ。十六年かけて、自分じゃ勝てない相手を完成させちまったんだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

魔虚羅から影久の話を聞き終えた五条の興味は、自然ともう一人の男へ向いていた。

影久と引き分けたという術師——鹿紫雲一。

 

2、鹿紫雲一のこと。

(鹿紫雲一……強いな)

 

「宿儺とは俺に闘らせろ」

 

「いいよ。僕は羂索ってのを優先したいし。でも、今の君ではどうやっても勝てないよ」

 

戦国最強の一角鹿紫雲一と、現代最強の五条悟の対話はそんな出だしで始まった。

鹿紫雲が腕を組みながら返す。

 

「今の俺では、だな。理由を教えろ」

 

「これは強さの問題じゃない、土俵が違うからだ。相手は二人で戦っている」

 

五条の説明が始まった。

宿儺が領域展延を維持しながら、万は術式を使っていた。

万が構築術式を維持、宿儺が領域展延、必要なら宿儺が領域、万は術式を止めない。

そして万の体内から宿儺が簡易領域を張った場合、簡易領域の中心が肉体内部となり、移動しながらの領域対策が可能になるかもしれない。

この時点で領域勝負は完全に選択肢から消える。

 

「万が領域を使えるならさらに条件は厳しくなる」

 

そう締めた五条に対し、黙って聞いていた鹿紫雲が口を開いた。

 

「…………必要なのは二人を一人として成立させている仕組みを壊す能力」

 

五条が下を向いて考え込む。

 

「……そうか。倒す必要はない。一瞬でいい。二人が一人じゃなくなる瞬間を作れればいい」

 

五条は考える。

鹿紫雲の術式、呪力特性、電気。そして、人体ほど電気を利用しているものはない。

 

「鹿紫雲、現代医療を学んでみないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3、宿儺がいなくなった虎杖は虚無に囚われていた。宿儺をなんとかしなくては、という思いはあるものの、すでに自分の出る幕ではないんじゃないか、という気持ちが拭えないでいた。

 

そんな虎杖に声をかけたのが脹相たち呪胎九相図三人と五条、そして魔虚羅であった。

「宿儺が去ったことで、お前の魂には余白が生まれた。余白は空白ではない。新たな命を受け入れる器となる」

要するに宿儺がいなくなった今、メゾン・ド・イタドリに空きができた。

自我の薄い呪胎九相図の4〜9を育ててみないか、ということだった。

 

呪胎九相図と魔虚羅の話が終わった。

そこへ五条からの質問が飛んだ。

 

「今までの君は宿儺の責任を背負ってたわけだけど、そこから解放された。これからどうしたい?」

 

五条が虎杖へ言う。

 

「宿儺を倒す方法なんて、僕ら全員で考えればいい。でも、兄弟を守れるのは君しかいない」

 

「……ははっ俺よりちっちゃい兄貴達か」

 

かくして虎杖は選択する。

 

その影響で将来、赤血操術、御厨子に加え、死のプロセス、融解・変色・式神・切断・白骨・火炎を使いこなす、多重術式保持者となる。

しかも万+宿儺のように(兄弟)愛によるマルチタスクを行えるのだが、これは関係ない話。

 

 

 

 

11月16日

 

「申し訳ありません、どうしても三本が見つけられず」

 

そう言いながら裏梅は宿儺に、指を差し出した。

小馬鹿にしたような顔で万が裏梅を煽る。

 

「この無能!探し物もできないわけ!」

 

裏梅の額に青筋が浮かんだ。

 

「(ピキッ)」

 

「よい、二本はもうこの世にない。どうせ最後の一本は五条悟が持っている」

 

万の手に生やした口で、差し出された3本の指を取り込みながら宿儺は考える。

万全の状態には程遠い。羂索が用意した己の即身仏を取り込んでも届かない。

ではどうするのか。

 

「そ・れ・に・し・て・も。宿儺はもう私がいなきゃ生きられないって、それもう運命でしょ?」

 

『………』

 

宿儺は何も言わない。

ただ、万が笑うたびに、その瞳だけが僅かに細くなる。

 

——「万の術式に頼る」「万の愛に矯正される」など、死をも上回る最大の屈辱。

誰にも依らず、誰も必要とせず、ただ己だけで在り続けた呪いの王。

それが今、自ら選んだ器の術式に頼らなければ、万全にすら届かない。

 

胸の奥からドロドロとした、これまで味わったことのないほどの凄まじい怒りと、みじめさが湧き上がってくる。

 

「ねえ宿儺、千年生きてきて初めて誰かに頼った気持ちってどう?」

 

万の笑い声が耳につく。宿儺の逆鱗を何度も何度も撫で続けた。

両面宿儺に千年味わったことのない屈辱という感情が刻まれる。

 

負の感情が爆発した。

 

 

 

 

 

11月18日 

 

その日。死滅回遊は、羂索が描いた呪力の攪拌という目的を完遂した。

 

空に線が走る。

 

世界そのものが、異なる位相へと剥離していく。

日本全土が彼岸へと渡される。

 

「思ったより早かったね、あとは天元の取り込みか。こればっかりはタイミングが難しすぎるな。天元は私の動きはわかっているだろうし。さて……」

 

 

 

この時。

 

 

天元の結界が持つ「隔てる」という意味は、ほぼ消滅した。

日本中を満たす呪力は、人と人との境界だけでなく、現世と彼岸の境界さえ曖昧にしていく。

それは同時に、これまで外界を拒み続けていた『天元の結界』そのものを内側から融かしていくということでもあった。

 

張り詰めていた内と外の境界は緩み、天元の理はもはや絶対ではなくなる。

天元の結界に縛られ続けていたものほど、その変化の影響は大きかった。

 

 

——ガコンッ

 

 

——禪院恵の影と同化していた呪物、禪院影久。

呪物となってなお眠り続けていたその意識。

それを縛っていたのは眠りではない。

天元の理、そのものだった。

影久は適応を続けていた。

 

四百年。

 

ただひたすら、天元という巨大な術式そのものを解析し続けていた。

本来であれば、あと数年、あるいは数十年。

その程度では終わらないほど巨大な対象。

 

——ガコンッ

——ガコンッ

 

 

だが。

ならしによって結界は軟化した。

硬く閉ざされていた術式は、ドロドロと溶け始める。

完成寸前だった適応は、一気に終着点へ雪崩れ込んだ。

 

 

——ガコンッ

——ガコンッ

——ガコンッ

——ガコンッ

 

 

長き眠りの果て。

天元の理に縛られない術師が、

静かに目を開いた。

 

——ガコンッ

 

適応、完了。

 

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