戦国転生 4歳から始める十種影法術   作:匿名希望

63 / 65
ちょっと短いですが、キリがあまりにもいいので……。


人外魔境新宿決戦①

鹿紫雲の残した雷光が、新宿の空からゆっくりと消えていく。

その余韻だけが残る戦場へ、五条悟は静かに歩み出た。

 

「お疲れのところ悪いね。鹿紫雲、強かっただろ」

 

「……意外だな貴様がそのようなことを言うとは。腑抜けたか」

 

五条は思わず吹き出した。

 

「いや?強い相手には強いって言うよ。僕、教師だから」

 

「教師、か」宿儺は答えながらも、視線は一瞬たりとも逸らさない。

 

——何かがおかしい。

 

以前の五条悟なら、自分を前にしてこんな空気を纏っていなかったはず。

羂索がいたから?違うそう言う問題ではない。

明らかに肩の力が抜けている。

 

(何だ、この余裕は)

 

宿儺の眉が、ごくわずかに動く。

影久。鹿紫雲。羂索。

頭の中で幾つもの可能性が組み上がる。

だが、答えは見えない。

五条は軽く手首を鳴らし、半身に構えた。

 

「んじゃあまあ、始めようか。史上最強さん」

 

「…………」

 

返事の代わりに、宿儺が地を踏む。

砕けたアスファルトが跳ね上がるより速く、四本の拳が異なる軌道で五条へ襲い掛かった。

防御した腕に鈍い衝撃。

そこから始まる術式を交えながらの激しい接近戦。

 

 

ビルの壁面。地下車道。崩壊していく新宿のビル群。

足場を変え、地形を投げつけ、幾度も交わされる打撃。

宿儺有利、しかし有効打は互いになし。

戦場となった高層ビルが崩壊し落下。

 

五条と宿儺の姿が現れる。

 

「四本腕に虫の鎧に展延、思った以上に厄介だね」

 

「チッよく言う」

 

五条には鹿紫雲のような神経加速がない。

では虫の鎧を纏いさらには二本腕の多い相手をどうやって捌くに至ったのか。

 

 

 

 

—————————————

 

 

 

 

12月 高専

 

鹿紫雲が対構築術式の特訓を続けていた頃。

 

「鹿紫雲がやられたら、君が出る。……という認識でいいんだな?」

 

「うん」

 

五条は肩を竦める。

 

「本当は羂索を殺してやりたいんだけどね。あいつ、多分僕が戦場に出るまで動かないでしょ」

 

「だろうな」

 

影久も同意する。

 

「奴は君を最も警戒している。だからこそ君を宿儺へ向かわせ、その隙に天元を狙う」

 

「だから僕は宿儺と戦うしかない」

 

少し沈黙が流れる。

影久が口を開く。

 

「では、宿儺が鹿紫雲戦で切る札を考えよう。」

 

「札?」

 

「構築術式だ」

 

「万の術式は物質を構築する術式、肉体だって物質だ。宿儺ほどの術師なら、自分が本来持っていた器官くらい再現しても不思議じゃない」

 

五条が少し考える。

 

「……四本腕?」

 

「ああ、腹の口もな。四本腕は経験しておいた方がいい」

 

「経験って言われてもねえ」

 

そう言った五条の目の前で魔虚羅が影から現れた。

 

「私が二本を担当する」

 

そこから五条の地獄が始まった。

最初は良かったのだ。

影久の腕の下、その陰から伸びる魔虚羅の腕が二本。

ただ手数が多いだけ、防戦に徹したらなんとかなっていた。

しかし魔虚羅の「四本腕に対する五条の対応」への適応はあっと言う間にはじまった。

 

ガコンッ「五条悟の攻撃の癖を覚えた」

防がれてはいたものの、たまに手を出せていたのが不可能になった。

 

ガコンッ「五条悟の防御の癖を覚えた」

防戦一方なのに防御が抜かれてばかりになった。

 

etc.etc.

 

「だぁー!もう無理!」

 

五条がその場へ大の字に寝転がる。

 

「四本あるんだよ!? 二本でも十分面倒なのに!」

 

魔虚羅は首を傾げる。

 

「先程より二七%長く耐えた」

 

「慰めになってない!」

 

影久は苦笑する。

 

「いや、褒めている。最初は十五秒だった。今は三分だ」

 

「三分でボコボコじゃ意味ないって」

 

「意味はある」

 

影久は即答した。

 

「最初の君は『四本の腕を何とか相手にしていた』。今は違う。四本の腕を捌きながら、こちらの癖まで読もうとしている。宿儺相手でも、その成長速度なら十分脅威だ」

 

それを聞いていた真希が口を挟んだ。

 

「いや、十分どころじゃねぇよ。最初なんか一瞬で固まってたじゃねぇか」

 

「適応が始まった当初は本当に即当てられてましたもんね」

 

乙骨も頷いている。

 

「うるさい」

 

「通常の術師なら、一回、どれほど優れていても3回で手詰まりだろう。未だ適応に対応しようと進化し続けているのは驚嘆する」

 

「五条、君は勘違いしている。勝てないから成長していない、ではない。適応した魔虚羅相手に、対応、いや君なりの適応をし続けてるんだ。君はすでに四本腕へ順応し始めている。それに、単純な格闘戦なら、俺と魔虚羅が君専用にチューンした擬似四本腕の方が、宿儺の四本腕より多分嫌らしいよ」

 

影久が魔虚羅に続けて、結んだ。

 

 

 

—————————————

 

 

 

鹿紫雲のような反応速度ではない。

しかし、四本腕そのものへの対処を、既に身体へ刻み込んでいる。

宿儺は即座に腕の組み方を変える。

四本を独立させるのではなく、二本を囮、二本を殺し手として重ねる。しかし五条もまた迷わない。

 

拳が交錯する。

衝撃でビルの窓ガラスが一斉に砕け散った。

 

「なるほど」

 

宿儺が初めて口を開く。

 

「貴様、この一月で四本腕を経験してきたな」

 

五条は笑う。

 

「いい先生がいてね」

 

「ではこちらはどうだ?」

 

——領域展開 伏魔御廚子

 

宿儺の領域が再び新宿に刻まれる。

(きたか、閉じない領域!)

 

そして、同時に必中の真球も。

 

——領域展開 三重疾苦

 

 

 

—————————————

 

 

 

11月某日

 

「五条悟だけは、試そうなんて考えない方がいい」

 

羂索が珍しく真面目な声で言った。

宿儺は頬杖をついたまま視線だけを向ける。

 

『……ほう?』

 

「彼は強い。もちろんそれもある。でも問題はそこじゃない」

 

万が首を傾げる。

 

「強いなら遊べばいいじゃない。宿儺なら勝てるでしょ?」

 

「勝てるだろうね。」

 

羂索はあっさり肯定した。

 

「ただ、彼は戦いながら最適解を探す術師だ。一度見た技を整理し、癖を見抜き、次には対応してくる。だから時間を与えるほど、こちらが見せた情報が向こうの武器になる。」

 

万が肩を竦める。

 

『それって普通じゃない、それにそれはこっちもでしょ』

 

「普通なら、そこまで辿り着く前に死ぬ。相手をするのは宿儺だからね」

 

羂索は笑った。

 

「でも、五条悟は、その「途中」を生き残る。生き残った上で、自分を更新し続ける。だから厄介なんだ。」

 

宿儺は黙って聞いている。

羂索はさらに続けた。

 

「だから試すな。力量比べもいらない。小手調べもいらない。観察させるな。最初から殺すつもりでいく。それが一番安い」

 

「そんなに警戒する相手なの?」

 

「警戒じゃないよ」

 

羂索は肩を竦めた。

 

「無駄を省こうって話さ。長引けば、それだけ余計なものを学ばれる。勝てる相手だからこそ、短く終わらせる。私ならそうする」

 

宿儺は僅かに目を閉じた。

 

「…………」

 

「まあ」

 

羂索は最後に笑う。

 

「君が聞くかどうかは別だけどね」

 

 

 

 

—————————————

 

 

 

 

▫️高専

宿儺の伏魔御廚子の内側に、さらに別の領域が生まれた。

 

「領域の……中に領域?」

「五条さんは領域出してなかったよな?」

「いや、待ってください。それ以前に……誰の領域だろうと外側の領域に内側の領域が破壊されるはずです」

 

乙骨が視線を凝らしたまま呟く。

 

「何で残ってるんだ?」

 

そこで日下部が、苦い顔で口を開く。

言葉を選びながら続ける。

 

「閉じない領域ってのがまずありえねえってのは置いとくとして、領域の中に領域って状態はな、外側が内側を殺す構造になってる。普通は成立しねぇ。内側の領域が崩壊して終わりだ。つまりだ。あのバケモンは最初からあの内側に展開された領域を「斬らない条件」を入れてる」

 

「五条先生の領域にそんなことする必要はない。つまりあれは万の領域ってことですか……?」

 

日下部は舌打ちするように言う。

 

「しかもだ。多分ただの例外指定じゃねぇ」

 

天使が静かに補足する。

 

「『同一肉体から発生した術式』を一つの階層として扱い、その階層だけを必中条件から外している」

 

日下部が苦い顔で補う。

 

「つまりだよ。あいつは今、自分の領域が万の領域に影響しないように走らせてる」

 

乙骨が絞り出すように言った。

 

「……宿儺本人じゃなく万の領域だから」

 

「乙骨お前の領域の中で領域展開するから外殻破壊しないでねって言われて成立させられるか?」

 

乙骨が首を振って否定した。

誰ももう「領域の中に領域」という驚きを言語化できない。

真希が絞り出すように言う。

 

「……あれ、勝てんのか?」

 

その問いに、日下部は答えない。天使も答えない。

 

「五条先生……」

 

 

 

—————————————

 

 

 

12月中旬

 

——嵌合暗翳庭

——無量空処

 

五条悟と禪院恵が背中合わせになって、ピッタリ重なるように領域を完成させた。

 

「ほんとにこんなことまで必要なんですか?」

 

恵が影久に疑問を投げかけた。

 

「やらなくて済むならいいけどな。宿儺の閉じない領域は五条の無量空処を外側から破壊する。そこで万の領域が残っていたら、必中の真球を回避する方法がない」

 

「そもそも、仲間とはいえ領域の内側に領域を出したって、まとめて破壊しますよね?」

 

そこに五条が口を挟んだ。

 

「影久が言いたいのは、宿儺はそれを可能にするレベルの術師だ。ってことでしょ」

 

「そういうこと、さあここからは領域のハッキングだ」

 

「はぁ〜これめちゃくちゃ繊細なコントロール必要なんだよなあ。一部じゃなくて他人の領域全部をハッキングしろってことでしょ?」

 

五条は文句を言いながらも、『六眼』で、影久の提示したロジックを完遂させた。

 

「よっし!うまく行った!」

 

「あとはこれを瞬間的に行えるようになるだけだな」

 

「いや、領域なんて1日に何度もやれませんよ……」

 

 

 

—————————————

 

 

 

万の領域が崩壊した瞬間、御廚子もまた同時に揺らいだ。

だが、それは破壊ではない。

『条件の喪失』だった。

五条悟が通したのは、無量空処ではない。

 

——「無量空処が成立する一瞬だけの空白」

 

その空白に、情報が流れ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▫️薨星宮

 

「や、大体400年ぶりかな羂索」

 

「禪院影久、最後に立ちはだかるのが君だったとはね。どうやって、この時代に来たのか聞かせてはもらえるのかな?」

 

「あーごめーん、それ無理すぐ終わらせるから。お前相手に悠長に話すほど馬鹿なことはないしね」

 

「神域顕現——『布瑠部寸断(ふるべのすんだん)』」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。