青き炎のBEACON《道標》   作:リクライ

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第十二話 『まずは、かっこうから』

 

 

 

 説明する。

 

 昨日、私は雄英に入学しました。扉を壊しかけたり、引き戸を知ったり、たくさんの人と話したりと今までにないぐらい新しいことに満ちた一日。

 しかし、そこであったのは相澤せんせーからの熱烈な雄英歓迎からの個性把握てすと。最下位は除籍処分という理不尽がありつつも、私、星野一条は3位という成績を収め、合理的虚偽の元除籍者はなし。二日目の高校生活に挑むこととなる。

 

 相澤に言い渡されたのは、『過酷な試験が目白押し』という、昨日のテストを上回るという予告だ。

 

「…………」

 

 だからこそ、一条は胸元のネクタイを引き締める思いで挑んだのだが──、

 

「んじゃ、次の英文のうち間違っているのは?」

 

1:The man whom I respect most is my father.

 

2:That is the house in which he lived.

 

3:I well remember the day on which we both met.

 

4:Please tell me that all you know.

 

 

「…………」

 

 ──これが、授業……!

 

 それもそのはず。雄英のカリキュラムは、午前には必修科目や英語などなど、普通の授業が盛りだくさん。

 

 他のクラスメイトが『普通だ』とか『つまんね』とか評価が下される中、一条はこの授業を楽しんでいた。

 何せ、一条にとってみんなと学校に通い、こうして授業を受けるというのはこれが初めてなのだ。無論昨日のテストを含めるのであれば、これが初めてではないのだが、含めないものとする。

 

「おらあ!! Everybody Hands Up──ッ!!!! 盛り上がれ──!!」

 

 現在は英語の授業。プレゼント・マイクのハイテンションな授業に、一条は耳を塞ぎたい衝動を抑えながら、受験勉強からの戦友であるペンを走らせる。

 先の問題の場合、間違ってるのはおそらく、

 

 ──4が変だ。関係詞の場所が違うし。

 

 

* * *

 

 

 

 マイクの絶叫が、午前の終わりのチャイムと重なった後の時間。

 嵐のようにマイクが去っていくと、教室内には一気に弛緩した空気が流れてきた。

 それと同時に、どこからともなく美味しそうな匂いが。

 

 ──この匂い……。

 

「…………。お腹、すいた」

 

 お弁当を持ってきたわけではない。

 一条は、雄英入学前のプランであるミールプランに加入している。そのため、毎日七百円以内であれば昼食を食べられる。弁当いらずだ。

 一条は、カバンから学生証ケースを取り出し、確認しようとした。すると、

 

「よお、星野!」

 

「────」

 

 自分の席にかかる影。振り返ると、そこには快活な笑顔を浮かべたトゲトゲ赤髪の少年、切島鋭児郎がいた。

 

「午前の授業、マジで普通だったよなァ。お前、この後メシだろ? 一緒に行かねーか?」

 

「……。飯田と出久、麗日も一緒?」

 

「あァ……いや、緑谷たちは先に行ったみたいだぜ? あいつら飯食うのも早そうだしな。俺はちょっと忘れ物して……」

 

 忘れ物、と言ってゴソゴソと切島がカバンから取り出したのは、やはり学生証。

 この校の学生証は、校内の自販機で飲み物を買ったり昼夜のご飯を買ったり、購買で何か買ったりと、基本的に雄英を過ごす上では便利となる、優れもの。

 

 ──これをなくすと、確か雄英に出入りできなくなるって注意事項に書いてあった。

 

 だから、これは盗られたりしたら大惨事だ。盗られたら取り返すが。

 

「で、どうよ。野郎二人、ってェわけじゃねーけど、たまには『戦友』同士で飯食うのも漢気だろ!」

 

「…………。私は女だよ」

 

「ハートの話だぜ、ハートの!」

 

 胸に親指を突き立てて、表裏のない明るさを前面に押し出してくる切島に、一条は机に手をついて、席を立った。

 

「……じゃあ行こう。お腹すいてるし」

 

「っしゃあ! そうこなくっちゃな! 行こうぜ、雄英が誇る『ランチラッシュ』の食堂によ!」

 

 

 

 

   ──ランチラッシュの飯処 大食堂──

 

 大食堂には、『一流』の料理を『安価』で頂ける。

 雄英高校でも名物の一つとなっているもので、クックヒーロー『ランチラッシュ』の作る料理は頬が溶け落ちるのだとか。

 

「…………」

 

 食堂に足を踏み入れた一条。瞬間、重たげな青い瞳が、わずかに見開かれた。

 

「人が、いっぱいいる」

 

 何百という生徒たちが、この巨大なフロアにひしめき合う光景に、頬を固めてしまう。

 雄英受験の試験も大衆も大衆だったが、この場にはヒーローを目指す人材がたくさんいた。弁当を持ってくる人もいるのだろうが、何度も言う『一流』の料理を『安価』で頂けるのだ。この機会を逃す人はそうはいない。

 

 そして、その厨房で、目にも止まらぬ早さで調理しているのは、

 

「どんな料理を食べてきても、やっぱり──」

 

 どんなに素早くとも、その白さにはシミの一つない、純白のコックコートに身を包んだヒーロー。

 

「白米に落ち着くよね! 最終的に!!」

 

 クックヒーロー『ランチラッシュ』だ。

 

「星野、何にすんだ? ここは白米がマジでうめェんだし、やっぱあれか、丼系か!」

 

「…………」

 

 一条は、切島のキレのいい溌剌とした問いかけを横目に、メニューに目を通す。

 

 ──いっぱいある……。どれにしよう。

 

 白米が美味いと、ランチラッシュも言うくらいだ。ここは白米がある料理を選ぶのが先決であるから、定食系か。

 けど、ここは品揃えが良すぎて、一条は青い瞳を回しそうになる。

 

「……ん」

 

 一条の目が止まった。

 青い瞳に反射して映るのは、ジャガイモと肉がふんだんにあしらわれた──カレーライス。

 

「カレー、ライス……」

 

 瞬間、一条に電流走る──。

 今、この瞬間、一条はこれしかないと確信した。

 

「私は──カレーライスを選ぶ。辛口で」

 

「お、カレーか。辛口を選ぶとは、味覚まで硬派じゃねぇか!」

 

「……。ただ、辛いのが好きなだけ」

 

 一条は無機質に答えながら、トレイに乗ったカレーライスを両手でしっかりと持つ。湯気とともに立ち上るスパイシーな刺激的香りが、鼻腔をくすぐり、空腹をさらにぐるぐると加速させた。

 

 眼下には、ごろごろ熱々のジャガイモに鶏肉が散りばめられた、ザ・カレーライス。舌を刺激する辛み成分は、さぞ食欲を加速させて完食へと導くに違いない。

 考えれば考えるだけ、空腹は食欲を湧かせてくれる。一条は人知れず、生唾を飲んだ。

 

「っしゃあ、そんじゃァ席探すとするか。どっか空いてる席……お? あそこ空いて──」

 

 切島が指差した先。賑わう人混みの合間に、一人で黙々と食事を摂る、見覚えのある“灰色の髪”が視界に入った。

 

 ──あの人……。

 

「…………」

 

 一条の青い瞳が、その少女を捉える。

 灰色の髪に、灰緑色の瞳を枠に入れる赤縁のメガネ。一見特徴がなくとも、彼女を取り巻く雰囲気というのは抜きん出ていた。一匹猫って感じの。

 彼女はそう、実技入試で共に巨大な敵を討ち倒し、折れた大太刀をポイと投げ捨てた灰少女──灰原ナナだ。

 

「あ! ありゃあん時の!」

 

「……ナナ」

 

 一条が呟くのと同時に、二人はナナの座るテーブルへと歩み寄った。

 当のナナは、自分に向けられた視線と影に気づくと、面倒くさそうにスプーンを口に運んでいた手を皿に戻し、煩わしそうにため息を吐く。

 

「…………。なに、冷やかし? ここは私の席なの。他をあたっ──あんたたち」

 

 刺々しい口調を続けながら顔を上げたナナの瞳は、相変わらず鋭く、周囲を寄せ付けない冷たさを湛えていた。が、途端に顔見知りと知るや否や、少し呆気に取られた顔へ。

 

 一条は特に臆面もなく、最初からそこが自分の席であったかのようにナナの隣へ腰を据えた。

 

「やっぱりナナもいた。昨日、いなかったから……落ちたのかと思って」

 

「はぁ? 私が落ちるわけないでしょ、死にたいの? 縁起でもないこと言わないでちょうだい。それに、なんで座ってくるのよ……向かい空いてるでしょ」

 

「……? 別にナナの隣に座っても、私は困らない」

 

「あなたが困る困らないって話しじゃない! …………好きにすれば」

 

 左手で灰色の髪を弄りながら、視線を逸らすナナ。

 切島はというと、

 

「んじゃあ俺向かいな!」

 

 向かいの席に座ってトレイを置いていた。その内容は☆肉・肉・肉☆の三拍子。まさにエネルギッシュ。

 これには呆れたように肩をすくめるナナであったが、煩わしそうに息を吐くだ家。人の食に口は出さなかった。

 

「相変わらず距離感がおかしいわね、あんたら」

 

「いただきます」「いただきまーすッ!」

 

「…………」

 

 すでに遠慮いらずな一条と切島。突き刺すようなナナの冷たい視線はもはやノーダメで、二人とも各々の食事を始めた。

 

「…………」

 

 まずは一口。熱々ホクホク。噛んだらドロドロのジャガイモはまさに世紀末。そして、問答無用で喉を通した時の焼けるようなピリピリ感は、まさに世紀末。

 

「…………」

 

 ──おいしい。

 

 一条は、口の中に広がるスパイスの熱を無言で噛み締めた。

 辛口というだけあって、喉を通り過ぎるたびにほのかな火照りが残る。けれど、その刺激がまた新鮮味、スプーンを口に運ぶ手が止まらない。

 

「…………。ナナ、昨日いなかったよね」

 

「そこに戻るのね。私はB組よ」

 

 ナナは自分の定食のサラダをフォークで突き刺し、口にする。

 実技入試の時に見せたあの苛烈さとは打って変わり、今のナナの所作には無駄がなく静かだ。

 

「へぇー! B組か! B組にもすげェ奴らが揃ってるんだろ? 灰原、昨日そっちはどうだったんだ?」

 

 切島が口の周りソースをつけながら、肉を喉に通すと机に上体を寄せた。

 

「昨日何があったって……それ、あなたたちが言うの? 入学式、A組だけすっぽ抜けたみたいにいなかったのよ。……、まあ担任の判断で出る出ないを決められるみたいだし、教師側は『またか』って感じだったわ」

 

「へぇー、ってことはこういうのも前にあったんだな、星野」

 

「…………」

 

 ということは、少なくとも去年が初めてではない。しかも教師側が『慣れている』ときたものだ、おそらく十回は軽く超えているのかもしれない。

 一条は、口と喉とは別にどこか冷たさが脳裏をよぎった。

 

「こっちの担任はブラドキングっていうヒーローが。そっちは……確かイレイザーヘッド、でしょ? 除籍除籍で有名よ。校長から復籍の権限も貰っているらしいし」

 

「え」「────」

 

「この話は関係ないわね。もう過ぎたことみたいだし」

 

「ちょっと待てーィ!?」

 

 ガタン、と食堂に一際大きな音がなり、空気が止まった。

 周囲が何事だ、と視線が一条、切島、ナナに集うも、机に手を置いて乗り出した切島が弁明したことでことなきを経た。

 引き続き、今度は周囲に気遣うよう小声で切島が紡ぐ。

 

「じゃああれか……!? 昨日の個性把握テスト、あれって最下位じゃなくてもやる気がねェやつぁ全員ぶった斬られてた、ってことか……!?」

 

「個性把握テスト……それで除籍、ね。B組も初日にあったけど…………最下位、多分イレイザーヘッドっていう先生、最下位以外なら大丈夫だと力を抜く舐めた人を除籍する腹積りだったのなら、そうなんじゃない?」

 

 まるで他人事。実際他人事なのだが、ナナは百面相する切島へ遠慮なく、本当にあったかも知れない真実味のある計算を口に。

 切島は心底腰が抜けたみたいに、席へと腰を落ち着かせる。

 

「……あ、危なかったぜ、マジで。一歩間違えば、今頃ここで喋ることもできなかったわけか……。こりゃ午後も気合い入れ直さねェとな!」

 

 一層やる気がみなぎったようで、切島の食事スピードが上がる。

 切島なりの気合いの入れ用にナナは眉をひそめると、一人黙々とカレーを食べる一条へ視線を歩かせる。

 

「……相変わらず、あんたが平然としてるわね。星野一条」

 

 ナナが、辛口カレーを一切顔色変えずに、むしろ満足げに咀嚼し続ける一条へ重たげな瞳で見た。

 

「……? これ、おいしいから。それに、嘘でも嘘じゃなくても、もう終わったこと。やること、やらないといけないことをしっかりやればいいだけ」

 

「さっぱりしてんのな、お前」

 

「どっちもどっちよ」

 

 そうして、ひとしきり話しがおさまると、各々お昼ご飯を食べ進めていく。

 

「ふぅ……。ごちそうさま」

 

 最後の一口を飲み込み、一条はスプーンを置いた。辛口カレーの刺激で、夏場とは違ういい感じな体温の上がり方をした気がする。

 隣では、ナナが何故か覚めた目でこちらのからになった皿を見つめてきた。

 

「……あんた、本当に顔色ひとつ変えないのね。辛口でも、それって激辛の方でしょ、それ」

 

「熱くて、ピリピリしていて……ジャガイモもあつあつ。お肉も美味しかったよ」

 

「っそ。……まあ、いいんじゃない? 私はもういくわね。午後からヒーロー基礎学だし」

 

 ナナは立ち上がると、トレイを手に取った。そして去り際、一条と切島を一度振り返って、

 

「A組とB組はカリキュラムも同じ。せいぜい除籍されないように気をつけることね。一条、鋭児郎」

 

「おう! またな、灰原!」

 

「…………。またあとで。────」

 

 ナナの背中を見送りながら、一条はふと自分の手を見つめた。

 明日も、明後日も。こうして授業して、誰かと食事して、名前を呼び合う。そんな、当たり前ではなかったことが当たり前になりつつある光景が、『ふわふわ』とした実感として胸に居座る。

 一条は楽しかった。

 

「っしゃあ! 俺らも戻ろうぜ星野! 午後はついに……『アレ』が始まるんだからな!」

 

 切島が、何やら興奮を隠せない様子で立ち上がる。

 『アレ』。それは、カリキュラムの書類に記載され、去り際のナナが言って残した、ヒーロー候補生としての第一歩。

 

 

   ──ヒーロー基礎学──

 

 

 * * *

 

 

   ── 1- A教室 ──

 

 教室に戻り、高揚感と緊張感が入り混じった空気の中で待つこと数分。

 廊下から、地響きのような存在感、それでいて軽やかな足音が近づいて──

 

「わーたーしーがー!!」

 

 ──来た。

 

「普通にドアから来た!!!!」

 

 教室の扉が、しっかりと横へ勢いよく滑り、開け放たれた。

 そこから前を乗り出すように飛び出したのは、『平和の象徴』、ナチュラルボーンヒーローであり、ナンバーワンヒーローである──“オールマイト”。

 

「「「おおおおお……ッッ!!」」」

 

 誰もが憧れる、ヒーローの中のヒーローの登場に、教室中が震えんばかりの驚嘆が入り混じった歓声に包まれた。

 

「オールマイトだ……!!」

 

「スッゲェ、本当に教師やってんだな……!!」

 

 皆、テンションがマックス。

 当然だろう。何度でも言おう。何故なら彼は平和の象徴でありみんなの憧れ。テレビ、雑誌、そして入試合格発表のホログラムなどでしかよく見られなかった存在が、今、この場で教壇に立ったのだから。

 

「…………。あれが」

 

 ──おーるまいと。

 

 一条は、驚きで固まるクラスメイトをよそに、じっと、教壇へ意気揚々と歩を進める男を見つめた。

 筋骨隆々の肉体。眩いばかりの金髪。

 けれど、

 

 ──やっぱり……似てる。

 

 一条の目には、やはりあの海浜公園で出会った出久のトレーナー『八木』に、どこか重なる。けれど、やはりホログラムで感じた違和感、絶やしてはいけない炎が何故だか燻っているような気がした。

 

 それにだ。

 

 ──なんか、見え方が違う。

 

「画風違い過ぎて……鳥肌が……」

 

 尻尾の生えた男子と、一条の声にならない声が重なった。

 

「私の担当は『ヒーロー基礎学』!」

 

 早速、教壇に堂々の仁王立ちをするオールマイトが紡いだ。

 皆騒いでいたにも関わらず、彼から放たれるオーラ故か、いっぺんの聞き漏らしをしないように専念し始める。

 

「ヒーローの素地を作るため、さまざまな訓練を行う科目だ! そのため、単位数も他の教科に比べても最も多いぞ。さあ! 早速だが……今日はコレ!!」

 

 力を溜め、皆のワクワク度を高めるようにしたオールマイトが、突き出したのはカード。

 そこには大きく『BATTLE』の文字が。

 

「戦闘訓練!!」

 

 ──戦闘訓練……。

 

「そして! そいつに伴って……こちら!」

 

 次々と語り続けられる演習の内容。オールマイトは畳み掛けるように、生徒全員の左へ指を鳴らした。

 彼のフィンガースナップに、左に倣った先には──、

 

「入学前に送ってもらった『個性届け』と『要望』に沿ってあつらえた戦闘服(コスチューム)!!」

 

 壁から、番号の振られた複数のケースが──。

 

「「「おおお!!!」」」 「…………」

 

「着替えたら順次、グラウンドβに集まるんだ!」

 

「「「はーい!!」」」「…………」

 

 オールマイトの豪快な号令と共に、壁から迫り出したケースを各々が手に取る。手に取ったそれぞれの表情は異なる。童心に帰り目を輝かせるもの。コスチュームを纏った姿に並々ならぬ覚悟に固唾を飲むもの。さまざまだ。

 

 ──私のは…………これだ。

 

 一条は自分の出席番号が記されたケースを見つめ、そっと指をかけた。

 この中には、ミッドナイトと一緒に考えた、これから『一条の半身』となるものが詰まっているはず。

 

「星野、行こうぜ! どんなコスチュームにしたんだ? 俺、皆んなのヒーロー姿、マジで楽しみだわ!」

 

「私も、まだ全部は見てない。けど……これが要望通りなら」

 

 期待に胸を膨らませる切島に短く答え、一条は女子の移動の列に入り込んだ。

 

 

 

 * * *

 

 

   ── グラウンドβ ──

 

 巨大なビル群が立ち並ぶ、演習用市街地。

 

「格好から入るってのも大事なことなんだぜ? ────」

 

 そこへ続く暗いトンネルの出口から、一人、また一人と、

 

「──少年少女!!」

 

 『ヒーローの卵』たちが姿を現した。

 そのトンネルの先、仁王立ちで待ち構えるオールマイトが、差し照らす陽光を超えるほどの、溢れんばかりの笑みで彼らを迎えた。

 

「自覚するんだ。今日から自分は……」

 

 一生徒ではなく、

 

「ヒーローなのだと!!」

 

 ヒーローへのスタートラインを切る、まさしく『ヒーローの卵』となった者たちを。

 

 

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