第五話はただいま制作中の為お楽しみに!
「そう言えば、まだアヴァロンへのログイン方法教えてなかったな」
アヴァロンに入る為、ゴーグル型デジヴァイスを付けようとした安藤がふと思い出した。
昨日の夜にもらったゴーグル型デジヴァイスを持ったまま、使い方がわからずオロオロとしていたリリカはその言葉に頷いた。
「いいか、順番にやれば難しくない。 まずケースの中の丸いシールをこめかみに貼れ。少しチクッとするが問題ない。 次にスマホ型でアヴァロンのアプリを起動。 最後にゴーグルをつけて電源を入れる。これでログインだ」
「なるほど…」
そうしてアヴァロンへとログインしたリリカ達はアズマとの待ち合わせ場所へと向かった。
依頼人である 信条 我妻 との待ち合わせ場所は電脳空間『アヴァロン』にある中央広場。
既に我妻は来ており、広場のベンチに座っていた。
「お待たせしました」
安藤とリリカは我妻の元へ駆け寄り遅れたことを謝罪した。
ちなみにギルモンとディテイモンは2人のデジヴァイスのなかで待機している。
「いえ、俺も今来たところだったんで」
そう言い我妻はベンチから腰を上げ二人の前に立った。
「それで、今のところはどうだ。ストーカーの気配は」
「いえ、今は全く」
「そうか、となるとすぐには無理か…。
まぁ一朝一夕で終わるとは思ってないさ、取り敢えず情報収集に移ろう、それに…」
安藤は一歩後ろにいたリリカの方を向いた。
「コイツにこの場所の案内でもしようと思ってたところだったからな」
「こうして回ってみると、ほんとにアヴァロンって広いんですね」
情報収集をしながら安藤さんとアズマくんはアヴァロンを案内てくれ、今私達はショッピングエリアにある休憩スペースにいた。
「飲食店とかないのがアレだけどなぁ」
「“現実”じゃないんだ、ここで食べたって腹は膨れねぇだろ」
「そうですけど……ん? …ゲッ!」
何か気になるものがあったのか、アズマは一箇所を目を凝らし、そして予想打にしていなかったことがあったかのように驚いていた。
彼の視線をたどると、少し遠いところに一人の少女がいた。
年齢はアズマとそう変わらないくらいで、桜色の髪が特徴の子だ。
「リリカ!オッサン!すぐに離れるぞ!!」
「オッサンって……あの子がどうかしたのか?」
「いいから!面倒なことになる前に!!」
「おい背中押すな!」
そうしてリリカと安藤はアズマにより強引に別のエリアへと移動することとなった。
我妻に連れられ、二人はショッピングエリアの端のほうへ移動した。
「ここまでこれれば大丈夫だろ」
「それで、あの女の子がどうしたんだ?知り合いか?」
「あー…知り合いってか幼馴染で…ちょっと顔合わせると面倒くさくなるから…」
「仲悪いんですか?」
「いや…ウ~ン何ていうか、結構お節介なんだよな…って今は関係ない話だよな」
そう言って話をそらした我妻は赤いウサギを探そうと辺りを見回した。
私達も聞き込みと並行して捜索を始めたが中々見つからず、時刻はお昼の12時を回っていた。
「こうも見つからないとわな…」
「聞き込みの方もダメですね」
「取り敢えず今から1時間休憩入って13時からもう一度始めよう。アズマ、お前昼メシはどうする?」
「え?まだ決めてないですけど…」
「ならログアウトしたあと商店街まで来てくれ」
「? わかりました」
そうして私たちはアヴァロンからログアウトした。
その後、商店街で再び合流した私達は喰魔さんの営むカフェに向かった。
「ここの飯ウッッッマ!!!!」
「おい、声大きいぞ」
「あ、スンマセン…」
「美味しいよねぇここの料理、ボク大好き!」
「コーヒーも紅茶もあるし、それに合うスイーツも揃ってる。隠れた名店といっても過言じゃないよ」
そう言ってオムライスを頬張るギルモンとコーヒーを飲むディテイモン。
因みに二人(2体?)はヒューマンモードにて人になってる。
「えっと、ここに行くまでに聞かなかったけど…二人は?」
「ボク ギルモ…ん!!」
ギルモンが名前を言い終える前に口を塞いだのは隣に座ってたディテイモンだった。
「ギルって言うんだ、白井ギル。
リリカの弟、で僕は猫山テイル、安藤の相棒さ。
よろしくね」
「へぇ~、リリカって弟いたんだ」
「へ!あ、あははは…」
流石に『デジモンです』なんて言えるわけもなく、そういうこととして流すことに。
「しっかし、あんだけ見かけてたのに探し出すと見つからないのなんなんだろうな」
「大勢でいるから警戒されてるんだろうな、このあとの捜索は二手に分かれて探そう。
オレとテイルは中央広場で、我妻とリリカとギルはショッピングエリアで聞き込みを頼む。
何か進展があったら一度連絡を入れてくれ」
「わかりました」
そうして昼食を食べ終えた私達は、再びアヴァロンへとログインした。
安藤さんの提案で二手に分かれることになった私達は、それぞれ聞き込みを始めた。
「安心してふたりとも!もし何があっても僕が守るから!」
「頼りになるなぁギル君は」
「へへん!」
その後聞き込みを続けていると気になる情報が耳に入った。
「赤い生き物?ああ、アレかな?確かに見たよ。あれは多分エリア0の近くだったと思う」
そうして私達は安藤さんに連絡を入れエリア0の入り口にたどり着いた。
「ここにいるのかよ…マジで」
先程までの明るさは何処に行ったのやら、今は不安な顔が出ていた。
「アズマくん大丈夫?」
「エリア0ってほら…出るって噂あるだろ」
「噂?」
その質問に歯切れ悪くして答えた。
「その…“幽霊”の話聞いたことないか?」
無事に安藤さんと合流した私たちはエリア0へと足を運んだ。
◇
そこは静かな場所だった。
空間そのものは青く染まり、壁や床には回路のような模様が走っている。 その回路は時折、電流が流れるように淡く光っていた。
宙にはキューブ状の物体がいくつも浮遊しており、先ほどまでいたアヴァロンとはまるで雰囲気が違う。
「なんだか……さっきまでいた場所と全然違いますね……」
「俺、ここ初めて来た……なんか不気味で怖ぇ…」
「誰も好き好んで入りたがるような場所じゃねぇからな。俺から離れるなよ」
「はい」
「お、おう……」
その後、私達は慎重に奥へと進んだ。
地面はところどころ崩れ落ち、不注意に歩けばそのまま落下してしまいそうだ。
「……ん?」
不意に、アズマが視線を感じた。
反射的に後ろを振り返る。
そこには――
物陰に隠れながらこちらを見つめる、“赤いウサギ”の姿があった。
「あ!!!」
アズマの声に驚いたのか、“赤いウサギ”は反対方向へと駆け出していく。
「どうしたの!?急に大声出して!」
「いたのか!?」
「いた!こっち!!」
私達はアズマが案内する方へと走った。
数分後
「な…なんで逃げんだよ…ハァ…ハァ…」
彼の見た“赤いウサギ”を追っていたのはいいものの、逃げ回る“赤いウサギ”。
そのため私達はエリア0の奥まで来てしまっていた。
「見失いましたね…」
「ほんとにこっちに行ったのかよ…」
「絶対こっちに来てる……多分」
「最後自信なくすなよ…」
その後もう一度“赤いウサギ”をみつけ、今度こそ見失わないように追いかける。
何とか行き止まりまで追い詰めた。
「やっと追いついた……」
走り続けて息を切らしたアズマが、ゆっくりと“赤いウサギ”へ近づいていく。
もう逃げられないと観念したのか、“赤いウサギ”はおずおずとこちらへ振り返った。
その姿は、赤い体毛に複数の尾を持つデジモンだった。
「やっぱりデジモンだったか」
安藤さんがそう呟く。
アズマは赤いウサギ…もといデジモンの前に立つ。
「なぁ、なんで俺につきまとうんだよ?」
「ち、違っ……えっと……これ……」
そのデジモンは、震える手で“何か”を差し出した。
それは、ボロボロになったキャラクターキーホルダーだった。
「これって……」
「君は覚えてないかもだけど……あの時、お腹を空かせてた僕に食べ物を分けてくれて……ありがとうって、伝えたくて……。 あと、これ……その時に落としてたから……」
「食べ物……?」
『なんだお前? お腹空いてるのか?』
不意に、アズマの脳裏へ昔の記憶がよみがえる。
随分昔――まだ小学生だった頃。
お腹をすかせ空き地の隅で震えていた、角の生えた小さな不思議な生き物。
可哀想になって、給食で残していたパンを分けてやったこと。
そして、その日にお気に入りだったキーホルダーを失くしたことも。
「……あ」
アズマは目を見開いた。
「え? じゃあ、お前……あの時の?」
「……っ!」
デジモンの耳がぴくりと動く。
「お、覚えてくれてたの……?」
「いや、覚えてたっていうか……さっきまで忘れてたっていうか……というか…」
そこまで言うと、アズマはため息をつきながら力が抜けたようにその場へしゃがみ込んだ。
「だったら最初から話しかけろよぉ……!」
その声は、怒っているというより、安心して張り詰めていたものが抜けたような声だった。
「む、無理だったんだよぉ……。 もし覚えてなかったらって……それに、怖がられたらって思ったら……」
「ストーカーされる方がよっぽど怖ぇよ!」
「ご、ごめん……」
二人は顔を見合わせ、思わず笑った。
「俺アズマ。お前は?」
「僕、エレキモン」
赤いウサギは『エレキモン』と名乗った。
「これ、ありがとな」
そう言ってアズマは、返してもらったキーホルダーを軽く掲げて見せた。
「ううん……君に返せてよかった」
そしてまた、二人は笑い合う。
「事件解決ですね」
「そうだな。まったく、人騒がせなデジモンだった」
彼らを見ながら、リリカはほっと胸を撫で下ろした。
「さてと、そろそろここから離れるぞ。 あまり長居するのはオススメできねぇからな」
「はい」
そうして私達がエリア0から出ようと歩き出した――その時だった。
「……っ!」
目の前に、“何か”がいた。
それはまるで、霧とノイズを無理やり固めて作られたような異形。
輪郭は曖昧に揺らぎ、時折バチバチとノイズが走る。
その中心には、赤い宝石のような核が浮かんでいた。
「アレって……」
アズマが呟く。
その瞬間、安藤さんが私達を守るように前へ出た。
「不味いな……こんなところで遭遇するなんて……」
「安藤さん……まさかアレって……」
「二人共?」
状況が飲み込めていないアズマとエレキモン。
そして安藤さんは、険しい顔のままその名を口にした。
「――『アンノウン・ヴァイラス』……!!」
『アンノウン・ヴァイラス』
安藤さんが教えてくれた、正体不明の存在。
感情に寄ってくる――そんな話を聞いていた。
なら、アズマとエレキモンの“安心”や“喜び”に反応して現れたのだろうか。
それは、ユラユラと揺れながら私達の前へ姿を現した。
「リリカ!下がってて!」
ギルモンはヒューマンモードを解除し、本来のデジモンの姿へ戻ると、私達を守るように前へ出た。
「え!? ギルくん!?」
突然、人間からデジモンへ姿を変えたギルモンを見て、アズマが目を見開く。
「あ、あとで説明するから!」
「お前ら、油断するな!」
安藤さんの鋭い声が飛ぶ。
アンノウン・ヴァイラスは、ユラユラと身体を揺らしながら、じっとこちらを見つめていた。
「何も……してこない?」
「いや……!」
次の瞬間。
霧状の触手が、勢いよくこちらへ伸びた。
「っ!!」
間一髪で飛び退く私達。
伸ばされた触手は背後の壁を容易く破壊し、そのまま霧のようにほどけながら本体へ戻っていく。
「なんなんだよあれ!?」
エレキモンを抱えて回避したアズマが、困惑した声を上げる。
「気をつけろ! また来るぞ!」
「させないよ!」
ディテイモンもヒューマンモードを解除し、アンノウン・ヴァイラスへ飛び込む。
鋭い一撃。
――だが。
アンノウン・ヴァイラスはその攻撃をするりと躱すと、霧状の身体を再びユラユラと揺らし始めた。
「……っ!」
形が、変わる。
霧だった身体が歪み、ねじれ、徐々に輪郭を持ち始める。
それはまるで――デジモンのような異形の怪物だった。
「姿が変わった!?」
「アズマ危ない!!」
「うおっ!?」
振り下ろされた腕を、エレキモンに引っ張られる形でギリギリ回避する。
「大丈夫アズマ!?」
「ワリィ、エレキモン!」
異形へと変貌したアンノウン・ヴァイラスは、裂けた口のような部分から炎を吐き出した。
轟音と共に、灼熱がこちらへ迫る。
「させるか! 『ファイアーボール』!」
ギルモンも負けじと炎弾を放つ。
二つの炎が激突し、爆発と共に相殺された。
「……あの時のやつと姿が違う……」
「あの時の人型よりはまだ倒せる。 一気にいくぞ、ディテイモン!」
「オッケー! 『ムーンクラッチ』!」
ディテイモンは鋭く跳躍すると、伸ばした爪でアンノウン・ヴァイラスを切り裂こうとしたが既のところでかわされた。
その光景を、アズマはただ見つめる。
「どうしたら……」
「アズマ……!!」
不意に、エレキモンが後ろを振り返り、毛を逆立てながら威嚇を始めた。
「エレキモン? どうし――」
そこにいた。
もう一体のアンノウン・ヴァイラスが。
「……マジかよ……」
思わずアズマの顔が青ざめる。
「アズマ! 下がってて!」
◇
「しまった……! もう一体いたのか!」
「安藤さん!」
その声に振り返った瞬間、アンノウン・ヴァイラスの触手がこちらへ迫っていた。
「チッ!」
安藤さんは間一髪で回避する。
だが、その表情には焦りが浮かんでいた。
「こっちだけでも手一杯だってのに……!」
◇
「『スパークリングサンダー』!!」
エレキモンが尻尾を擦り合わせ、強烈な電撃を放つ。
青白い稲妻が一直線に走った。
――だが。
アンノウン・ヴァイラスは身体を揺らめかせ、その攻撃をするりと回避する。
直後、霧状の触手がエレキモンへ叩きつけられた。
「うわぁっ!」
「エレキモン!!」
吹き飛ばされたエレキモンへ、アズマが駆け寄る。
「大丈夫か!?」
「う、うん……。 アズマは危ないから下がってて……」
「お、おう……」
エレキモンはふらつきながらも立ち上がり、再びアンノウン・ヴァイラスへ向き直る。
その背中を見ながら、アズマは拳を強く握りしめた。
(……何やってんだよ、俺)
探偵さん達も。 エレキモンも。
皆、必死に戦っている。
(俺だけ、何もしてねぇじゃねぇか……)
悔しさが、胸の奥を焼く。
(……これでいいのかよ……!)
アズマは自分の頬を、バチン! と両手で叩いた。
「っ……!」
痛みで、意識を無理やり前へ向ける。
(守られてるだけなんて――俺らしくねぇだろ!!)
視界の端に、折れた配線の近くへ転がっていた鉄パイプが映る。
アズマはそれを掴むと、勢いよく駆け出した。
「うおおおおおっ!!」
「アズマ!?!?」
突然突っ込んできたアズマに、エレキモンが目を見開く。
ガンッ!!
振り下ろされた鉄パイプが、アンノウン・ヴァイラスの身体へ叩き込まれた。
「ーーー!!」
ノイズの様な機械音を出しながら、僅かによろめくアンノウン・ヴァイラス。
「何してんだよ! 危険だよ!!」
「バーカ!」
アズマは鉄パイプを構え直しながら叫ぶ。
「守られて何もしないなんて、俺らしくねぇんだよ!!」
そう叫ぶアズマ、しかしその態度とは反対にその腕は震えていた。
恐怖を押し殺しきれていない。
「アズマ……震えてる」
「ばっか! これは武者震いだよ!」
強がるように笑う。
「いいから! アイツを何とかするぞ!」
「……うん!」
エレキモンは小さく頷いた。
その表情には、さっきまでの不安ではなく、確かな勇気が宿っていた。
そして二人は、再びアンノウン・ヴァイラスへ向き直る――。
一緒に戦い始めたアズマとエレキモン。
だが、アンノウン・ヴァイラスの動きは異様に速く、なかなか攻撃が当たらない。
「くっ……!」
触手を避けた直後、アズマの足が欠けた地面に引っかかった。
「しまっ――!!」
その隙を逃さず、アンノウン・ヴァイラスの触手が迫る。
「アズマ!!」
避けきれない。
そう悟ったアズマは、思わず目を閉じた。
――その瞬間。
『ファイアーボール!!』
轟音と共に火球が飛来し、アンノウン・ヴァイラスへ直撃した。
「ーーー!?」
吹き飛ばされるアンノウン・ヴァイラス。
「アズマ君、大丈夫!?」
「リリカさん!」
そこには、ギルモンと共に駆けつけたリリカの姿があった。
「あっちの方は大丈夫なのかよ!」
「うん! 安藤さんが“アズマ君達の援護に行け”って!」
「そっか……ありがとう」
アズマが息をついた、その時だった。
先ほど吹き飛ばされたアンノウン・ヴァイラスが、再びよろよろと浮かび上がる。
霧状の身体から、数本の触手が伸びた。
「まだ来るぞ!」
「アイツ動きが速いんだ! 何とか動きを止められれば……!」
「アズマ! 僕やってみる!」
エレキモンは尻尾を擦り合わせ、もう一度狙いを定め…
「『スパークリングサンダー』!!」
バチバチッ!! と一直線にアンノウ・ヴァイラスへと電撃が走った。
その瞬間、アンノウン・ヴァイラスの動きが僅かに止まる。
「今だよ! ギルモン!!」
「うん! 『ロックブレイカー』!!」
鋭い爪撃が、赤い核を真っ直ぐ貫いた。
――バキンッ。
核に亀裂が走る。
次の瞬間、アンノウン・ヴァイラスの身体は霧のように崩れ去った。
静寂。
戦いが終わったことを理解した瞬間、リリカとアズマはその場へへたり込む。
「はぁ……はぁ……」
「つ、疲れたぁ……」
「アズマ、 大丈夫?」
「おう、疲れたけど大丈夫だぜ」
「よかった……」
ほっとしたように息を吐くエレキモン。
「リリカ、大丈夫?」
「うん、ありがとうギルモン」
「へへっ!」
ギルモンは嬉しそうに笑った。
「リリカさん、ギルモン、助けに来てくれてありがとな」
「ううん――あ」
ふと、リリカが顔を上げる。
そこには、こちらへ歩いてくる安藤さんとディテイモンの姿があった。
「おつかれ。よく頑張ったな」
その言葉に、私達は思わず笑みを浮かべる。
「しかしお前、アイツらに向かって行った時は肝が冷えたぞ」
「はは……すいません」
頭をかくアズマに、安藤さんは小さくため息をついた。
「……まぁ今回は、怪我がなくて良かったよ」
「はい」
「そろそろ戻るぞ。 またアイツらが現れたら、たまったもんじゃねぇ」
「そうですね……あ」
アズマは、隣にいるエレキモンへ視線を向けた。
「お前、このあとどうするんだ?」
「え……僕は……」
少し困ったように俯くエレキモン。
アズマは少しだけ言いづらそうにしながら口を開く。
「……あのさ。 もしお前が良かったらなんだけど……一緒来るか?」
「え?」
「ウチ、今親いねぇし……。 お前が良かったらだけど」
「……いいの?」
「まぁ……助けてくれたお礼? みたいな……。 どうなんだよ」
「……い、いく!」
ぱあっと表情を明るくするエレキモン。
「よし! 決まりだな!」
その様子を見て、リリカ達も自然と笑顔になる。
「話はまとまったな。 アヴァロンに戻ってログアウトするぞ」
安藤さんはそう言うと、アズマへ視線を向けた。
「あとで事務所に来てくれ」
「はい!」
◇
探偵事務所に戻ったリリカ達はアズマから依頼の報酬を受け取った。
「…よし、ちゃんとあるな」
「今回は本当にありがとうございました!」
「ストーカーの正体もわかり、一件落着だね」
そう言ってコーヒーとミルクを配るディテイモン。
エレキモンはリアルワールドの物が珍しいのかキョロキョロと辺りを見回していた。
「そう言えばエレキモンを向かい入れる時に言ってた両親が居ないって?」
「ん?ああ、俺の親どっちも海外で働いてて今家俺一人なんだ」
「そうだったんだ」
「おう、まぁたまの長期休みの時は帰ってくるから淋しくはないよ。
…うるさい幼馴染もいるし……」
「?」
「なんでもない!」と話をごまかすアズマ。
その光景をみたあと、机の引き出しにあったあるものを取り出す安藤。
「アズマ、お前に渡すものがある」
「これ、デジヴァイス?」
手渡したのは探偵用にリリカに渡していたのと同型のデジヴァイスだった。
「これからソイツと一緒に暮らすんだ。デジモンに関して分からないことがあればそれに搭載されてる『デジモンアプリ』で調べることができる。
持っとけ」
「へー…ありがとうございます!あ、リリカさん」
「リリカでいいよ」
「じゃあリリカ、連絡先交換しようぜ!」
「え?」
「せっかく知り合えたんだし、な」
「えっと…」
ちらりと安藤さんを見る。
いいんじゃないか?と目配せをする安藤さん。
「なら…よろしく」
「おう!」
そしてリリカとアズマは連絡先を交換した。
「助けてくれたお礼もしたいし、何か困ったことがあったら連絡くれよ」
「え?いいの?」
「おう!友達だろ!」
「とも…だち?」
「……あれ?迷惑だったか!?」
「あ!いや、違うの!…うん、ありがとう」
「おう!」
その後、軽い雑談をしたのちアズマとエレキモンは自分たちの家へと帰っていった。
「友達…」
「…よかったな」
「え?」
「この地に来てからの初めての友人だ。同年代の友人が入れば少しは心が楽になる」
そう言って安藤さんは家の中へと入っていった。
「…」
「リリカ?」
「あ、ごめんギルモン中入ろっか」
「うん、…リリカ」
「どうしたの?」
「アズマ、いいヤツだったね」
ニッコリと笑うギルモン
「…うん、初めての友達…だね」
そして私達は家の中へと入っていった。
◆
少し前〜エリア0
アンノウヴァイラスの反応があったと仲間のハッカーから聞き、現場に向かった一人のハッカー。
黒いフルメイルのヘルメットに青いコートを靡かせ、その光景を見ていた。
2体のアンノウヴァイラスの相手をする探偵と依頼人。
そして、突如エリア0に現れた少女もとい探偵の助手。
「…」
アンノウヴァイラスとの戦闘を終え急いでアヴァロンに戻る姿を確認し、彼らがいた場所に立つ。
後ろには彼のパートナーであるデスメラモンが立っていた。
「……探偵…か」
男は何かを思うように宙をみあげ、そしてその場をあとにした。
◆
翌日。 探偵事務所兼自宅のチャイムが鳴り、扉を開けるとアズマが立っていた。
「お前……学校はどうしたんだよ」
「今日は午前だけだったんで来ちゃいました!」
足元にいたエレキモンが元気よく手を振る。
「こんにちは!」
「エレキモン!いらっしゃい!」
ギルモンも嬉しそうに駆け寄っていった。 どうやら二人はすっかり仲良くなったらしい。
「はぁ……で、今日は何の用だ?」
「はい! 昨日一晩考えたんですけど――」
アズマは勢いよく顔を上げる。
「俺!ここでバイトしたいと思って来ました!!」
「……は?」
突然放たれた言葉に、安藤は呆れたような声しか出なかった。
探偵事務所で働きたいとお願いするアズマだが、安藤はこれをきっぱりと断る。
それでもと諦めないアズマに呆れ、安藤はとある依頼を手渡した。
それは星見原病院からの依頼で『夜中に現れる不気味な存在の正体を調べてほしい』と言う内容だった。
もしこの依頼を無事に終えることができたら考えてやる。
その一言でやる気を出すアズマ。
リリカとギルモンも共に行くこととなり、次の日の休みに病院へと足を運んだリリカ達は謎の存在の正体を知ることができるのか?
次回第四話『怪奇!夜中に現れるミイラ男!?』
次回もお楽しみに!!