今日も正常営業。ただし“そういうとこ”を添えてー   作:火力万能主義

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前回での報告から一週間がたちますが、思ったよりも冒頭部の出来上がりが速かったため、まず出来上がった前半部だけでも投稿しようかと思いました。
思ったよりも雅治のカミングアウト事件のタイミングを予想できなかったようでうれしいです(笑)
まだまだシらぬイには程遠いですなーもっともっと修行あるのみ、ですぞい(笑)




第二十四話 世紀の竹取合戦、ただし腰は大事・上

第二十四話 世紀の竹取合戦、ただし腰は大事・上

 

 

 

 

 かぐやっほ〜。

 

 かぐやだよー。

 

 今かぐやにはね、一つ悩みがあるの。

 

 それはね。

 

 いつも隣にいてくれた雅治が、京都へ行っちゃったこと。

 

 いやいや?

 

 彩葉がずっと一緒にいてくれるから、全然寂しくはないんだけどさ。

 

 ほんとだよ?

 

 全然、寂しくないよ?

 

 彩葉いるし。

 真実ちゃんも芦花ちゃんもいるし。

 ツクヨミもあるし。

 お菓子もあるし。

 犬DOGEいるし。

 

 かぐやはイイ女だから、待つこともできるし。

 

 だから、別に寂しくなんかないんだけど。

 

 ないんだけどさ。

 

 ……でもでも、やっぱり雅治が急にいなくなってから、かぐやの周りもちょっと荒れているのだ。

 

 ほら。

 

 あんな風に。

 

「…………」

 

 ブン。

 

 ブンブン。

 

 ブンッ。

 

 無言。

 

 無表情。

 

 無呼吸。

 

 いつもゲームで使っているブーメランキーボードを二つに分離し、両手に握った彩葉が、訓練用フィールドの中央でただひたすらに刃を振っていた。

 

 右  左。

  反転。

 切り上げ。

 

 返す刀で斬り下ろし。

 

 そこから無理やり体を捻り、二刀流燕返し。

 

 斬撃の軌跡だけが、青白い光となって宙に残る。

 

 かぐやは、観戦席にちょこんと座りながら思った。

 

 ほえ〜。

 これはもう、処刑だ。

 

 有罪。

 雅治、有罪。

 

 罪状はいっぱい。

 

 急に京都へ行った罪。

 シらぬイだったのに黙っていた罪。

 それを電車の扉が閉まる直前に言い逃げした罪。

 

 そして何より、彩葉にあんな顔をさせた罪。

 

 これは重罪。

 

 かぐや裁判所、ここに判決を下す。

 

 雅治、処刑。

 

 執行は彩葉。

 かぐやは証人席で「見た!」って言う係。

 

 あと、骨くらいはあとで拾ってあげよ。

 

 かぐやはやさしいのだから。

 

 雅治の骨って、太いのかなー。

 重いのかな。

 

 できれば、重いより太い方がいいのに。

 

 その方が拾いやすいから。

 

 あと、大きい方が台車で運びやすいし。

 

 細かい骨だと、かぐやが「あれ? これ雅治? それともフィールドの石?」ってなるかもしれないじゃん。

 

 それは困る。

 

 雅治は大きいので、骨も大きくあってほしい。

 

 最後まで分かりやすい雅治でいてね。

 

「彩葉ー」

 

「なに」

 

 返事はあった。

 

 よかった。

 

 まだ会話できる彩葉だ。

 

 完全処刑モードだけど、会話はできる。

 

「雅治、帰ってきたらどうするの?」

 

「まず座らせる」

 

「うん」

 

「説明させる」

 

「うん」

 

「その後は、考える」

 

「考えるって?」

 

「どの角度から斬るのが一番いいか」

 

「ああ」

 

 かぐやはうなずいた。

 

 なるほど。

 

 やっぱり処刑だ。

 

「骨、拾うね」

 

「拾わなくていい」

 

「えー」

 

「えー、じゃない」

 

 彩葉はそう言って、また刃を構え前を向いた。

 

 かぐやは思う。

 

 拾わなくていいんだ。

 じゃあ、消し飛ぶのかな。

 雅治、帰ってきたら大変だね。

 

 でも、まあ、うん。

 

 ちょっと自業自得。

 

 だって。

 

 電車に乗る直前に。

 扉が閉まる直前に。

 

 急に。

 

『俺が、シらぬイだ。言い忘れていた、すまん』

 

 だよ?

 

 それはない。

 

 さすがのかぐやも分かる。

 

 それはないって。

 

 大事なことは、ちゃんと前もって言うものだ。

 

 最後のプリンを食べたあとに「言い忘れていた、すまん。最後の一個だった」って言うのと同じ。

 

 いや、もっと悪いかも。

 

 だってシらぬイだよ?

 

 シらぬイ。

 

 かぐやたちがずっと見ていた、あのシらぬイ。

 

 強くて。

 変人で。

 理屈と理不尽の癖に何でも解決できちゃう。

 

 お料理したり、工作したり、変な装備を作ったり。

 

 かぐやが「すごーい!」って言うと、ちょっと嬉しそうに頷いてた雅治。

 

 そんな雅治がシらぬイ。

 そんなシらぬイが雅治。

 

 ほえ〜。

 世の中って、ふしぎ。

 

 彩葉の頭は、もっとぐるぐるしていると思う。

 

 だから今、ああなっている。

 

 たぶん。

 

 きっと。

 

 絶対。

 

 でもね。

 

 

 かぐやはちょっと思うのだ。

 

 彩葉、怒ってる。

 

 うん。

 

 すっごく怒ってる。

 

 それはもう、激怒ぷんぷんまる処刑モード。

 

 でも、それだけじゃないんだよねぇ。

 

 怒ってるけど。

 心配してる。

 

 心配してるけど。

 寂しい。

 

 寂しいけど。

 それを言うのは負けだと思っている。

 

 ほえ〜。

 めんどくさい。

 とってもめんどくさい。

 でも、なんだかんだ見ていて面白い。

 

 彩葉も雅治も、人前であんなに分かりやすくお互いのことを気にしているのに、どうしてまだ「そういうのじゃない」みたいな顔をするのか。

 

 そういうのだ。

 

 かぐやには分かる。

 

 たぶん真実ちゃんも分かっている。

 

 芦花ちゃんも分かっている。

 

 なんなら神々(しちょうしゃ)もヤチヨも犬DOGEも分かっている。

 

 分かっていないのは本人たちだけ。

 

 ああ。

 

 はよくっつけや。

 

 かぐや、そう思う。

 

 とても思う。

 

 でも、それを彩葉に言うと、かぐやまで処刑場に並べられる気がするので、今は黙っておく。

 

 かぐやは賢いのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   とある所に、女子高生ありける。

 

 振り注ぐ矢の雨。

 

 それは訓練用の敵性エネミーが放つ、仮想の矢。

 

 しかし、威力は実戦に近い。

 

 当たれば 吹き飛ぶ(ノックバック)

 

 連続で受ければ、アバターの体勢を崩され、そのまま囲まれて終わる。

 

 にもかかわらず。

 

 彩葉は、軽々と避けきる。

 

 右へ一歩。

 左へ半歩。

 

 身を低くして、跳ぶ。

 

 肩を掠める矢を、首を傾けるだけでかわす。

 

 着地と同時に、両手のブーメランブレードを逆手に握り直す。

 

  その手にあるは、二つに分かたれし異形の刃。

 

 青い髪。

 青い装い。

 狐の耳と尻尾。

 

 一見すれば、愛らしい少女の姿。

 

  されど、今その場に立っているのは、かわいいだけの狐のみではあらず

 

 すれ違いざまに、鎧武者の一団が斬り伏せられる。

 

 胴。肩。首。

 

 刃が通った箇所から、仮想の敵影が光となって砕け散る。

 

 遅れて、撃破表示が空中に浮かんだ。

 

PERFECT

 

CHAIN

 

OVER KILL

 

「……」

 

 彩葉は何も言わず。

 ただ、次を見る。

 

 おかわりの如く押し寄せるは、第二、第三の鎧武者。

 

 刀。槍。薙刀。斧。

 

 各々の得物を掲げたまま、黒い影の群れが駆け寄ってくる。

 

 その中心へ飛び込むは、またしても青い髪と装いに、狐の耳と尻尾を持った美少女なり。

 

  されどその振る舞い、いとおかし。

 

  おかし、というか、怖し。

 

 胴。

 首。

 肩。

 

 一撃必殺。

 

 一刀三断。

 

 一太刀につき斬り伏せるは三の人影。

 

 二振りに六。

 

 三振りに九。

 

 四振り目で、 (エネミー)の陣形が崩れる。

 

 五振り目で、すべての人影が倒れ伏し、光となって砕け散った。

 

 彩葉は着地する。

 

 ブーメランブレードを両手でくるりと回し、無言で構え直した。

 

 息一つ乱れていない。

 

 むしろ、まだ足りないと言いたげのよう。

 

 かぐやは、観戦席で膝を抱えた。

 

「彩葉、すごーい」

 

「……」

 

「でも、顔こわーい」

 

「……」

 

「その顔、もう完全に雅治を斬る顔だよ」

 

「斬らないわよ」

 

「じゃあ、 ()る?」

 

「いや不穏なこと言うなし ()がないし」

 

「でも尻尾が怒ってるよ?」

 

「怒ってない」

 

「尻尾は正直だよ?」

 

「これはただの演出だから」

 

「彩葉、寂しいの?」

 

 その瞬間。

 

 彩葉の動きが、一拍だけ止まった。

 

 止まった。

 止まってしまった。

 

 ああ。

 

 踏んじゃった。

 

 かぐや、今すごく踏んじゃったよ。

 

 向こう岸の火事って、きっとこういう顔で見るものなのだ。

 

 ほえ〜。

 

 よく燃える。

 

 そして次の瞬間、訓練フィールドに追加出現した (エネミー)集団が、まとめて消し飛んだ。

 

 斬撃。斬撃。斬撃。斬撃。斬撃。

 斬撃。斬撃。斬撃。斬撃。斬撃。

 斬撃。斬撃。斬撃。斬撃。斬撃。

 斬撃。斬撃。斬撃。斬撃。斬撃。

 斬撃。斬撃。斬撃。斬撃。斬撃。

 

 もはやブーメランなのか刀なのか分からない二つの刃が、空間そのものを削る勢いで振るわれる。

 

「寂しくない!」

 

 彩葉が叫んだ。

 

「ただ!」

 

 また一体、斬り伏せる。

 

「急に!」

 

 さらに一体。

 

「シらぬイだとか!」

 

 三体まとめて。

 

「言い忘れていたとか!」

 

 回転。

 

 斬撃。

 

 撃破。

 

「そういう問題じゃないでしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

 長かった。

 

 とても長かった。

 

  (エネミー)集団よりも叫びの方が長かった。

 

 かぐやは思った。

 

 やっぱり彩葉は怒っている。

 そして、ちょっと寂しい。

 でも、たぶんそれを言うともっと斬られるから、黙っておこう。

 

 最後の (エネミー)が斬り伏せられ、 (ポリゴン)と共にぱあっと散る。

 

 静粛に包まれたフィールド。

 彩葉は二つのブーメランブレードを持ったまま、天を仰いだ。

 

 それから。

 お腹の底から。

 たぶん、心の底から。

 たぶんたぶん、寂しさの底から。

 

 叫んだ。

 

「はよ帰ってこいや雅治ぁァァァァァァァァ!!!!!」

 

 その声は、ツクヨミの青空へどこまでも飛んでいく。

 

 雅治のところまで届くかな。

 

 届いたら、たぶん雅治はくしゃみでもするんかな。

 もしくは正座の用意?

 できれば正座してほしいな。上に乗せる重石も添えて♡。

 

 かぐやは、小さく拍手した。

 

「彩葉、すごーい」

 

「すごくない!」

 

「声、めっちゃ飛んだね。隣に響くかもよぉ」

 

「飛ばしてないわよっ」

 

「雅治まで届くかな」

 

「届かなくていい!」

 

「ああ」

 

 かぐやは、うんうんとうなずいた。

 

 届かなくていい、の声じゃなかった。

 

 ぜったい届け、の声だった。

 

 彩葉はブーメランブレードを元のキーボードへ戻しながら、深く息を吐く。

 

「……帰ってきたら、まず説明」

 

「うん」

 

「どうして黙ってたのか」

 

「うん」

 

「どうしてあのタイミングで言ったのか」

 

「うんうん」

 

「全部、ちゃんと聞くから」

 

「ああ」

 

 こりゃー説教の予約だ。

 

 雅治、予約入ったよー。

 

 キャンセル不可で遅刻厳禁のやつ。

 

 たぶん正座席で重石付きかな。

 

「いっぱいあるね」

 

「いっぱいあるのよ」

 

 彩葉は深く息を吐く。

 

 そして、小さく呟いた。

 

「……無事に帰ってきなさいよ、ほんとに」

 

 その声は、さっきまでの叫びとは違っていた。

 

 小さくて。

 少しだけ弱くて。

 

 たぶん本人は、かぐやに聞こえていないと思っている声。

 

 でも、かぐやには聞こえていた。

 

 ほえ〜。

 分かりやっっっす。

 

 今日の彩葉は怒っている。

 

 でも、ただ怒っているだけじゃない。

 

 ちゃんと帰ってこい。

 ちゃんと説明しろ。

 ちゃんと顔を見せろ。

 

 そして二度と電車の扉が閉まる直前に爆弾を投げるな。

 

 たぶん、そういう怒りだ。

 

 

 怒っている。

 ムカムカしている。

 斬れるものなら今すぐ斬りたいくらいには、ぷんぷんしている。

 

 でも、その奥でちゃんと心配もしている。

 

 雅治が無事に帰ってくるか。

 

 ちゃんとお父さんと会えるか。

 

 お母さんのお墓の前で、ちゃんと立っていられるか。

 

 それを考えている彩葉の横顔は、ちょっとだけむずむずする。

 

 じれったい。

 すごくじれったい。

 

 怒ってるのに心配してる。

 

 文句を言いながら待っている。

 

 もうそれ、だいぶそういうのじゃん。

 

 ああ。

 

 かぐや、見ているだけでニヤニヤしちゃう。

 

 でも同時に、見てる側がむずむずしちゃう。

 

 いい加減、二人とも人前でそういう顔をするなら、さっさとどっちかが告って付き合えばいいのに。

 

 はよくっつけや。

 

 かぐやは本当にそう思う。

 

 とっても思う。

 

 でも、それを今ここで言ったら、かぐやまで処刑場に並べられる。

 

 だから黙っておく。

 

 かぐやは賢いので。

 

「大丈夫」

 

 かぐやは、とびっきりの笑顔で言った。

 

 彩葉が振り向く。

 

「何が」

 

「雅治、ちゃんと帰ってくるよ」

 

「……分かってる」

 

「分かってるなら、信じて待ってあげようよ」

 

「簡単に言うわね、アンタ」

 

「簡単じゃないよ。でも、雅治なら大丈夫だもん」

 

 かぐやは笑った。

 

 今度は、からかうためじゃない。

 

 彩葉の胸の中にあるムカムカも、ぷんぷんも、ぐちゃぐちゃも。

 

 少しだけ丸くなるように。

 

 とびっきり、明るく笑ってあげる。

 

「帰ってきたら、彩葉が怒るでしょ?」

 

「そりゃ怒るわよ」

 

「かぐやも一緒に怒る」

 

「かぐやも?」

 

「うん。言い忘れていた、すまん、はかぐやも許さない。最後のプリン食べといて黙ってたみたいなものだもん」

 

「……そこなの?」

 

「プリンは大事!」

 

 彩葉は、少しだけ目を瞬かせた。

 

 それから、ほんの少しだけ息を抜く。

 

 張りつめていた肩が、わずかに下がった。

 

「……そうね」

 

「うん」

 

「帰ってきたら、ちゃんと怒る」

 

「うん」

 

「ちゃんと話す」

 

「うん」

 

「……それでいいか」

 

 彩葉の声が、少しだけ落ち着いた。

 

 よし。

 

 かぐや、いい仕事をした。

 

 彩葉のぷんぷんまる、ちょっとだけ鎮火。

 

 このまま平和に終われば、今日のかぐやはえらい女として褒められてもいい。

 

 その時だった。

 

 かぐやのコンソルが、ぴこん、と音を鳴らした。

 

「ん?」

 

 通知。

 

 ツクヨミ公式タグ。

 

 ヤチヨカップ関連。

 

 そして、差出人。

 

 ブラックオニキス。

 

 かぐやは目を瞬かせた。

 

 彩葉も、その表示を見て動きを止めた。

 

 通知の見出しには、こう書かれていた。

 

ブラックオニキスより、かぐやいろPチャンネルへ。

 

 かぐやは、ぱあっと顔を輝かせる。

 

「彩葉!」

 

「待って」

 

「帝から!」

 

「待って」

 

「ごらぼ!?」

 

「お願いだから一回待って」

 

 彩葉は、ブーメランキーボードを握る手に力を込めた。

 

 嫌な予感がする、という顔だった。

 ものすごく嫌な予感がする、という顔だった。

 

 雅治がいない。

 昨日、帝アキラの話をした。

 

 そして今、ブラックオニキスから通知が来た。

 

 偶然にしては、出来すぎている。

 

 彩葉は、ゆっくりとそこに表示された文字を読んだ瞬間。

 

 彩葉の顔から、すべての表情が消えた。

 

ヤチヨカップ終盤特別企画。

 

世紀の竹取合戦、開催を申し込む。

 

帝が勝てば、かぐや。俺と結婚してくれ。

 

かぐやいろPが勝てば、そちらの願いを一つ聞く。

 

 沈黙。

 

 かぐやが、ゆっくり首を傾げる。

 

「けっこん?」

 

 彩葉は、画面を見つめたまま動かない。

 

 ぴくりとも動かない。

 

 あ。

 また燃えた。

 しかも今度は火に油。

 油というか、たぶん火薬。

 

 いや。

 

 彩葉の顔色が、すうっと変わった。

 

 怒りで赤くなるのではなく。

 

 青白く。

 ものすごく青白く。

 

 まるで、頭の中で何かとんでもないものを見てしまったみたいに。

 

 かぐやには彩葉の頭の中までは見えない。

 

 けど、なんとなく分かる。

 

 今、彩葉の中で誰かが折れたのかも。

 

 たぶん帝。

 

 いや、たぶんじゃない。

 

 帝だ。

 

 かぐやにも、うっすら分かる。

 

 彩葉の中で、その人が雅治に物理的に半分に折り畳まれている。

 

 まるで、おばあちゃんの古い携帯みたいに。おばあちゃんいないけど。

 

 ぱかん。

 

 いや、人間でぱかんは駄目じゃね?

 

 やばい。

 それはやばい。

 

 彩葉の目が言っている。

 

 だめ。

 さすがにそれはマズいって。

 いや、マズいって次元じゃないって。

 

 やばい。

 

 やばいやばいやばい。

 

 もうシらぬイだとか、言い忘れていたとか、いったんどうでもいい。

 

 いや、どうでもよくはないけど。

 

 後で絶対問い詰める。

 

 でも今だけは優先順位が変わった。

 

 雅治と帝を会わせたらいけない。

 

 絶対に。

 

 何が何でも。

 

 あの二人を同じ場所に立たせてはいけない。

 

 かぐやを挟んで帝が求婚とか言い出して、そこに雅治が帰ってきたら。

 

 終わる。

 

 何かが終わる。

 

 たぶん誰かの腰が終わる。

 

 もしくはツクヨミの治安が終わる。

 

 下手したら、両方終わる。

 

 しばらくして。

 

 彩葉は、低い声で呟いた。

 

「……兄さん」

 

 うわ。

 

 その声、もうだいぶ本気だ。

 

 ……ん?

 

 兄さん?

 

 そして次の瞬間。

 

「兄さんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!!!!」

 

 訓練フィールドに、二度目の絶叫が響き渡った。

 

 かぐやは思った。

 

 大変だー。

 

 とっても大変だー。

 

 完全に他人事みたいに見ている場合じゃない気もするけど、正直ちょっと面白い。

 

 兄妹って大変だねぇ。

 

 ん?

 

 兄妹?

 

 ……兄妹???

 

 まじぃ?

 




今回も最後までお読みいただきありがとうございます!
まだ前半部ですので、残りの後半も出来上がり次第に更新いたしますのでお待ちくだされ~。

最初の一週目が思った以上に苦労も事故もなく終わったので昨日は久しぶりに10キロ走ってきてから眠って目を覚ますとすごく気持ちいい朝だった。
知ってるー?食事終わってからの30分以内に動き、歩いてれば筋肉がカロリーと血流をもっていってくれるから炭水化物を摂ってからの眠くなったりだるくなったりする症状もなくなる上に血糖値のはねあがり、血糖値スパイクも予防できますっで皆さんも夕飯の後には適度な運動もしくは散歩をしてみたらいいですよ。
ただし、お外はまだまだ暑いですので僕のおすすめはクーラーを聞かせた部屋でスクワットとその場で立ち止まったまま片足を上げて下げる動作の繰り返しもいいと思います。
実際に雨の日や夕飯が速すぎた日にはそうしてます故。


えー、この後8時から再出発ですので会えるのはおそらく来週の週末、もしくはその次の8月に入ってからになると思います。
ではでは、また次回をお楽しみに!

番外編を時間列に合わせて本篇の合間に入れてみる?

  • 話の展開やネタの繋がりがあってよさそう。
  • 「番外」やから別途でいいんじゃね?
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