今日も正常営業。ただし“そういうとこ”を添えてー   作:火力万能主義

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たくさんお離れされるのを覚悟してカミング・アウトしたのに、むしろ暖かい応援の言葉と励ましを頂いて感謝感激雨アラモードです。
本当にありがとうございます。

評価とお気に入り爆落ちを覚悟してたら、むしろ高評価をたくさんいただいて128位までまたランクインしました。ありがとうございます!

お陰様で僕の頭の中で常にシらぬイらしくは何たるか、そのシらぬイらしさすら超越するにはどうするべきか、いかにして読者様たちの予想と常識を覆せるのか悩んでいる日々です。
思わずニヤニヤしちまいそうだからマジでシらぬイは劇物判定です(笑)

昨日の地震により行く予定だった児童施設やデイリーサービス、労使ホームなどの全施設がキャンセルとなり時間が浮いたおかげで早めに下編が書き上げれました。
てまきればもっと詰めたかったけども、やはり上中下合わせるならここで区切る方が余韻が残ると思い、三話連続で同じ長さです。

もう8月が目前、今年も残りの四カ月をきるんですね、本当に時間の流れってばあっという間に感じさせるものです。

では長くなひましたが、第二十四話の下編です、どうぞ!



え、28位ってマジっすか???


第二十四話 世紀の竹取合戦、ただし腰は大事・下

第二十四話 世紀の竹取合戦、ただし腰は大事・下

 

 

 山。

 

 海。

 

 また、山。

 

 それから湖。

 

 窓越しの景色が流れるように変わっていく。

 

 彩り美しき景色。

 窓越えに写る景色。

 いつしか眺めていた景色とは少し異なる光景。

 

 綺麗だな、と。

 

 そんなことを思ってから、少しだけ笑いが溢れる。

 

 一年と数ヶ月前。

 反対方向の新幹線に乗っていた俺は、たぶん一度もそんなことを思わなかった。

 

 あの時は、景色なんて見る余裕すらもなかったから。

 

 窓の外を眺めているふりをして、ただ逃げていたあの頃。

 

 京都(いえ)を出て、本家(ちすじ)を捨て、(かぞく)からも逃げた。

 

 ただ、あの家にいたくなかった。

 あの目で見られたくなかった。

 あの声を聞きたくなかった。

 

 行くあてもなく、金もなく、覚悟もなく。

 

 数えるほどしか会ったことのなかった叔父の家へ転がり込んだのが唯一の幸運であった。

 

 今思えば、ずいぶん無茶をしたものだ。

 今さらすぎるけども。

 

 なのに今、俺が乗っているこの列車が、あの時とは真逆の方向へ進んでいるとは。

 

 俺が一番嫌って。

 何よりも一番に避けて。

 一番見ないふりをしてきた場所へ、向かっている。

 

 なのに、彩葉たちと別れた時の、あの温かさがまだ胸に残っているとは、不思議なものだ。

 

 逃げる時には見えなかった景色が、戻る時には目に入る程度には余裕も出来ている。

 

 俺が変わったのか。

 景色の方が変わったのか。

 

 たぶん、どちらでもない。

 

 東京で、ただ見えるものが増えただけ。

 

 摩訶不思議(まかふしぎ)とは、こういう時に使う言葉なのかもしれない。

 

 酒寄彩葉

 

 彼女が何を抱えているのか、俺はまだ知らない。

 

 いつ。どこで。誰に。何を傷つけられたのか。

 

 知らない。

 何も知らない。

 未だに知らない。

 

 そして、それは彼女にとっても同じだろう。

 

 俺があの日に打ち明けたのは、傷跡の形だけだ。

 

 その始まりを。

 なぜそうなったのかを。

 俺はまだ、彼女に話していない。

 

 彼女とて逃げたかっただろうに。

 

 誰にも明かさず。

 蓋をしたまま、見ないふりをしても、よかったはずなのに。

 

 俺と同じように。

 いや、もしかしたら俺以上に。

 

 

  苦しかっただろうに

 

 

 それでも彩葉は、俺を受け入れてくれた。

 

 騙していた俺を。

 隠していた俺を。

 シらぬイ(おれ)でありながら、橘雅治(ぼく)でもあった俺を。

 

 そんな俺を見て怒ったのか。

 それともただ単に呆れたかな。

 もしかしたら、傷つきもしただろう。

 

 答えは未だに彼女の胸中のまま。

 でも、だとしても、最後まで手を離さないでくれた。

 

 なら、俺もそうしたい。

 そうしてあげたいと願う、俺がいる。

 

 彩葉がいつか、自分の傷を見なくてはいけない日が来るのなら。

 

 その時、隣にいてやりたい。

 

 背中を押すだけではなく。

 前に立って引っ張るだけでもなく。

 

 ただ、逃げなくてもいい場所の一つになりたい。

 かぐやと共に、三人揃って互いに支え合っていきたい。

 

 かぐやが太陽なら。

 彩葉は、きっと月なのだろう。

 

 騒がしく照らすわけではない。

 眩しく笑って、強引に手を引くわけでもない。

 

 ただ、そこにいる。それだけ。

 

 暗い場所に立っている時ほどに、静かにその輪郭を照らしてくれる。

 

 俺は、その光に救われたんだ。

 

 応援したい。

 背中を押してやりたい。

 俺のようにはなってほしくない。

 

 そういう言葉で誤魔化してきたものも、もう限界だ。

 

 

 

 

俺は

 

 

橘雅治は

 

 

酒寄彩葉のことが好きだ

 

 

 

 困ったことに、橘家の教育課程に恋愛要素は含まれていなかった。

 

 社交の場における礼儀作法も、古くも千年より前から受け継がれてきた橘氏の武術も、学校の頂に立つための学問も、橘家の名に恥じない振る舞いもすべて叩き込まれたというのに。

 

 ただ一つだけ、好きな女の子にどう接すればいいのか。

 その講義だけがなかった。

 

 まったく使えない教養である。

 恋心を抱いた相手に向かっていうべき言葉一つ教えれんとは。

 

 まったく情けない本家である。

 だから古いのしか取り柄がないと言うのだ。

 

 もっとも。

 

 あの場で正体を明かした理由が、すべて真面目な覚悟だったのかと聞かれると。

 

 それは、まあ。

 

 うん。

 

 彩葉の驚いた顔が見たかった。それだけ。

 

 困った顔。

 怒った顔。

 感情を隠しきれず、目を丸くして固まる顔。

 

 あれはいいものだ。

 

 実に、かわいい。

 

 かぐやも勿論かわいい。愛おしい。

 あれはあれで目に入れても痛くないどころか、目に入れる前に全力でこっちの目玉を捧げてでも守りにいく自信がある。

 

 だが、彩葉のあの顔は別腹だ。

 

 見るだけで、口元が勝手に緩みそうになる。

 

 いや、実際に緩んでいたかもしれない。

 

 危ない危ない。

 人はこうして不審者になっていくのだろう。

 

 ピヨ

 

 スマホの画面を覗くと、かぐやから画像が届いていた。

 

 綺麗に真っ二つにされたスイカ。

 

 フム。悪くない太刀筋である。

 包丁で刺したまま切ったのとは違う、迷いのない一太刀で上からの唐竹割り。

 右利きということは、彩葉か。

 

 鮮やかな赤い果肉。

 黒い種、ところどころに浮いた白い糖の筋。

 

 なるほど。

 

 今日のおやつはスイカらしい。

 

 見るだけで美味しそう。

 見るだけで悍ましいな。

 

 これが俺の未来だとでも言いたいのだろうか。

 

 ピヨ

 

 また一枚。

 

 今度は、スイカの断面を真正面から撮った写真。

 断面の赤が、やけに綺麗だ。

 

 わざわざ角度を変えて撮ったあたり、確信犯である。

 

 よろしい。

 

 お返しに、とっておきを送ってあげよう。

 

 俺はフォルダを開いて、しばらく指を滑らせる。

 

 そして、ある一枚の写真を選んだ。

 

 ついでに、ひとつだけデータも添付して送信。

 

 既読。

 

 直後、スマホが狂ったように震え始めた。

 

 ピヨ

 ピヨ

 ピヨピヨピヨピヨピヨ     

 

 ブーブーと振動までうるさいので、そのまま通知を切ってポケットに入れる。

 

 うむ。

 

 実に静かで平和的解決。

 

 ちゃんと受け取ったならば、もう用はない。

 

 十分に噛みしめるがよい。

 

 誰かを煽るということは、本人もまた同じことをされる覚悟をしたということだろう。

 

 答えはいらない。

 

『この度は、GBグループ特急ラインをご利用いただき、誠にありがとうございます』

 

 車内アナウンスが流れ始めた。

 

『本列車はまもなく、終点、京都へ到着いたします』

 

『お降りの際は、お手回りにお忘れ物がないかご注意ください』

 

『列車が完全に停止するまで、お席をお立ちにならないようお願いいたします』

 

『お降りの際にはながらスマホ、ながらスマコンの着用及び使用の控えを呼び掛けております』

 

『では、まもなく到着します。京都にようこそいらっしゃいました』

 

 京都。

 

 耳の奥に残るたった二文字。

 

 俺は誰だろうか。

 京都橘家の雅治か。

 立川高校の優等生(ぼく)か。

 かぐやの保護者の片割れか。

 ツクヨミの異端児、シらぬイ(おれ)か。

 

 どれか一つが本物で。

 それ以外はただの仮面なのか。

 

 違う。

 

 たぶん、そうじゃない。

 

 どれもが俺で、どれか一つだけでは、俺には成り立たない。

 

 答えは、ずっと近くにあったんだ。

 ただ、そこへ辿り着くまでに、ずいぶん遠回りをしたらしい。

 

 いや。

 

 実際、遠回りだったのだろう。

 けれど、無駄ではなかった。

 

 京都を出たから、東京へ来られた。

 

 ツクヨミを知った。

 好きなことをする楽しさを知った。

 誰かに笑われても、作りたいものを作る自由を知った。

 

 常識に縛られないことが、どれほど気持ちのいいものなのかも知った。

 

 学校の級友たちと過ごす時間も、悪くなかった。

 

 特別に親しい相手があったわけではない。

 それでも、あの教室で過ごした日々は、確かに俺の日常だった。

 

 そして。

 

 彩葉と出会った。

 

 かぐやと出会った。

 

 真美と、芦花とも出会った。

 

 くだらないことで笑い合える相手ができた。

 

 どうでもいいことで騒いで。

 どうでもよくないことで怒って。

 どうしようもないくらい面倒なことに巻き込まれて。

 

 それでも、楽しかった。

 

 かぐやと出会って、親の心というものを少しだけ知った。

 

 目に入れても痛くない。

 

 昔は、大げさな言葉だと思っていた。

 俺には該当しない遠い世界の話だと諦めていた。

 

 今なら分かる。

 

 たぶん、痛い。

 

 痛いけれど、それでも目に入れてしまいたくなるくらい、大事なのだ。

 

 あの小さな手が、俺の袖を掴む。

 

 笑う。 泣く。 怒る。

 

 時々、悪戯おあり。

 

 こちらの想定を軽々と飛び越えて、好き勝手に走り回る存在。

 

 迷惑だ。

 

 大変だ。

 

 面倒だ。

 

 でも、その全部が愛おしい。

 

 そう思える存在ができて、ようやく気づいた。

 

 母が、そして恐らく父もまた、俺に向けていただろうものを。

 

 俺が見失っていたものを。

 

 認められること。

 愛されること。

 許されること。

 

 それがどれほど人の心を救ってくれるのかを。

 

 だから、今度は俺が行こう。

 

 まだ共に過ごせる時間が残っている父のもとへ。

 

 母が眠る場所へ。

 俺が逃げた家へ。

 

 いつか俺が親になれた時。

 

 その子に、俺と同じものを背負わせないために。

 

 親として。

 人として。

 

 悔いと恥を、呪いのように継がせないために。

 

 橘家の呪詛は、俺の代で断ち切る。

 

 いまだに俺の過去を蝕む痛みと向き合うために。

 

 俺は、そのために京都へ戻ってきたんだ。

 

 列車がゆっくりと速度を落としていく。

 

 車窓の向こうに、ホームの明かりが近づいてきた。

 

 時刻はもう夕方七時を超えて八時を指している。

 

 今の時間から父に会いに行っても、まともに面会はできないだろう。

 

 明日の朝。

 できるだけ早く向かおう。

 

 逃げるためではなく。

 今度こそ、向き合うために。

 

 そう決めた時だった。

 

 スマホが震えた。

 

 通知。

 

『速報!! 帝アキラが超有名ライバーかぐやと結婚?!』

 

 俺は、画面を、見た。

 

 し、ば、ら、く。見た。

 

 もう一度、見た。

 

 なるほど。

 

 縦か 横か。

 どちらの方が、綺麗に済むだろうか。

 

     縦

     に

     半

 横 に 半 分

 

 いや、待て。

 

 両方という手もある。

 

 ふむ。

 誰かが言った。

 

 わたしにいい考えがある、と。

 

 俺はその言葉が好きだ。大好きだ。




この度も最後までお読みいただきありがとうございます。
できれば帝戦か病室へまで持ち込みたかったんですけども、前書きに残した通りに24話としての流れならここで区切る方がいいと判断したので原稿がまたしも半折です(´;ω;`)

もう帝戦の頭までは出来たのに……まぁ元々雅治が京都に向かったエピソードの展開は帝戦が終わるまでには完全なるシャットアウトで、数週間はシらぬイのシの字も出ない予定でしたし。
半々で行くのが時間的にも尺の登場頻度的にも読みやすく分かりやすくなると思ったので少々テンポが遅い、もしくは時間稼ぎのように感じられるかも知れませんが、もうしばしお待ちを。

ちゃんと準備してシらぬイフルコースでおもてなしできるよう頑張りますので、どうかよしくお願いいたします。

そして、最後に2026年7月28日に被災された熊本地域のお方のために、一日でも早い復旧と救助がされることをお祈りします。
僕が高校生の頃に熊本城が崩れてから、10年経った今、またしもこんな大震災はあんまりすぎる……

どうか一日でも早く支援物資らを郵便ででも届けれるようになってほしい。今僕が行っても場所取りにしかなれないだろうから、せめね生活用品らの支援だけでもしてあげたい。
皆さん方もどうか見回りの安全をご注意されながらこの夏を乗り越えましょう。

では、またのいつか!

番外編を時間列に合わせて本篇の合間に入れてみる?

  • 話の展開やネタの繋がりがあってよさそう。
  • 「番外」やから別途でいいんじゃね?
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