「ランサー! ランサーっ……!」
駆け寄った先、ようやく立ち上がった彼女は立ち上がれるのが不思議なほどにボロボロだった。ルーン文字が光って傷は塞がってゆくけれど、それで何もかも元通りなはずはない。
だって、ランサーの顔が、そんなに険しい。
「大丈夫ですよ、マスター。私は大丈夫です」
彼女はそう言うけれど、その言葉だっていつもと違う。いつもの彼女ならばどう大丈夫なのか、そういう具体的な話をするはずなのに、ただ私を元気づけるためだけの徒口だ。
「降る気は無い、という顔だな。ランサー」
悠々とやってくるライダーも、ランサーが大丈夫でないことなどとうに知っている。
私の知らないところで、きっと
言うまでもなく、それに応じる彼女ではない。
「当たり前でしょう。
交渉は決裂。
即ち待っているのは必然の敗北。
私はライダーの傀儡マスターにされるだろう。今度こそ記憶を引きずり出され、私の中に宿る”魔”とやらが有用なら使い潰されるがさだめ。
聖は──彼は、どうなるのか。彼次第だけれど、大人しく軍門に降りそうには思えない。抵抗して、敢え無い最期を迎えるんだろう。
それを許し受け入れる彼女ではない。
誰よりも何よりも、彼を──ヘルギを愛する戦乙女たる、彼女が。
背に気合が漲るのが判る。そはライダーにも伝わることで、
「誇りを胸に逝く…………か。余には理解しがたい心境だ。であるならば屈従は不可か──」
異なる戦法も、新たな施策も不要。ただ今まで通り、純粋に格上の英霊としてすり潰す構え。
それが出来るだけの実力を備えているのが、彼。
「此処で死ね。伴に逝くことを赦す」
タフムーラスという英霊だ。
「──────」
彼女は、そして彼は、どうするのか。
『……ヘルギ。一瞬なら、動けますね』
『────動かすさ。君が言うのなら』
『よろしい。信じます』
二人の、信頼関係。そこに私が割って入る余地などありはせず──
『……マスター。合図を出したら、最後の令呪をいただけますか。『勝利せよ』と』
『──判った。私も信じる。ランサーのこと』
……もしも、この時。
ランサーが全体念話ではなく私だけに秘して要請を出していたことに意識を割けていたならば、何かが変わっただろうか。
結局──作戦を打ち合わせる悠長な時間など無く。次の激突を天王山と定めて、覚悟を決めるだけ。
「フッッ──」
ランサーが、動いた。
生身であれば加速度だけでぺしゃんこになって死ぬような猛進は『
流星のように閃く穂先と、泰然たる戦棍が激突。
……風切る音と共に放物線を描くは、槍。
「あ……っ」
戦棍の一撃は戦乙女の胴体をえぐり、致命的な損傷を齎していた。彼女は震える手を伸ばし──