Fate/second to none   作:吉田一味

115 / 115
主の御加護があらんことを②

 

 戦棍と魔剣の激突は、これで何合目か。

 

 ルーラーを撃破した時と同じ『ヘルギの魔剣』化──魔剣接続による魂魄逆流の原理は見たことがあるが、ライダーは直感する────()()()()()

 

「それほどの恨みだろうと、余に()()を使ったのは悪手だったな」

 

 ルーラー相手に用いたのが勇士ヘルギ史の光の当たる側なら、これは闇の側面。

 

 幾度も幾十度も死に続けてきた者の魂に蓄積され続けてきた悪性情報を表出させているのだ。本来ならば輪廻に漂白されて洗い流されるべき“黒”を、転生魔術にため込んでいたヘルギであるが故の忌まわしき奥の手。死が死を積み上げる呪いの層。今を生きる肉体すらも変容させ、サーヴァントに肉薄する駆動を可能とする──

 

 何も生み出さずただ死を振りまくだけの呪いならば、憎悪に身を委ねて仇を討つには最適ではあったのだろうが──如何せん相性が最悪だった。

 

 これも正しく悪なれば、タフムーラスに縛れぬ道理無し。

 

 戦棍をかき消す。

 

 代わりに彼が取り出したるは鎖。

 

 宝具『悪には縛を、戒めこそを(ザンジーレ・シャフラースプ)』が幾条も──鞭か蛇の如くに襲い掛かる。

 

 木々の幹や枝をも足場に、縦横無尽な機動力でライダーを翻弄していた聖が、見る見るうちに追い詰められていく。鎖が張り巡らされ、狩猟者が獲物へとひっくり返される。

 

 ()()()()()()()()()()()。聖がそう考えているのは一目瞭然、いっそ過敏なまでに身を捩って、回避──

 

「そこ、だ」

 

「ッチい、ッッ」

 

 ライダーの鉄槌が降り下ろされる、も間一髪で身を捩る。風圧で大樹をこそげ落とす一撃が生身に命中していれば即死も即死、バラバラになって地表にばら撒かれていただろうから見事な状況判断だが────そこまでだった。

 

「────く、そが」

 

 姿勢が完全に崩れきって、もうどうにも八方塞がり。彼が何をするよりも迅く、足に『悪には縛を、戒めこそを(ザンジーレ・シャフラースプ)』が絡みついた。当然それで終わるはずもない。

 

 暗い森が遥か後方に置き去りになる。音も風も切り裂いて、振り回されていると理解するより先に。

 

 衝撃が背を粉砕した。

 

 

 

***

 

 

 

 聖を捕まえて、ライダーは両手でフルスイング。

 

 銃弾よりも早く──

 

「──────」

 

 ()()()といういっそ快い炸裂音。

 

 …………彼の姿は木々の狭間に消えた。めきめきめきと徐々に大きくなる倒木の音は、やがて地を揺らす轟音で幕引きとなる。立派に大樹と言っていい一本が、真ん中からへし折れられたのだ。

 

 あれを()ったのがライダー。

 

 衝突()られたのが…………椎名聖。

 

「………………ぁぁ」

 

 決着だ。

 

 ランサーを欠いて、土台厳しい戦いだったけれど──これで終わりか、と思うと不思議と少しほっとする。

 

 ライダーは敵で、嫌いだし、許せないけれど。

 

 彼は私を“使う”と言った。私の自由はあの鎖で奪われ、いいようにされるということなら──

 

「──そっ……か。それなら」

 

 私が私を生きるよりは、よっぽど良いのかもしれないね。

 

 だって私の一番の敵で、誰よりも大っ嫌いで、何より許せないのは臙条叶(このわたし)なのだから。

 

 目を閉じる。

 

 もう抵抗する気力もない。

 

「──それでいい。貴様は余に使われるために居たのだと、観念すれば楽になる」

 

 気配()が近づいてくる。

 

 私に触れれば、全部終わり。

 

 私は私を手放して──────

 

 

 

 

 

 

 

「そんな訳がないでしょう、この、信じがたいほどの大馬鹿者」

 




この続きは以下で最速公開中です。
https://fate-second-to-none.com/
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。