戦棍と魔剣の激突は、これで何合目か。
ルーラーを撃破した時と同じ『ヘルギの魔剣』化──魔剣接続による魂魄逆流の原理は見たことがあるが、ライダーは直感する────
「それほどの恨みだろうと、余に
ルーラー相手に用いたのが勇士ヘルギ史の光の当たる側なら、これは闇の側面。
幾度も幾十度も死に続けてきた者の魂に蓄積され続けてきた悪性情報を表出させているのだ。本来ならば輪廻に漂白されて洗い流されるべき“黒”を、転生魔術にため込んでいたヘルギであるが故の忌まわしき奥の手。死が死を積み上げる呪いの層。今を生きる肉体すらも変容させ、サーヴァントに肉薄する駆動を可能とする──
何も生み出さずただ死を振りまくだけの呪いならば、憎悪に身を委ねて仇を討つには最適ではあったのだろうが──如何せん相性が最悪だった。
これも正しく悪なれば、タフムーラスに縛れぬ道理無し。
戦棍をかき消す。
代わりに彼が取り出したるは鎖。
宝具『
木々の幹や枝をも足場に、縦横無尽な機動力でライダーを翻弄していた聖が、見る見るうちに追い詰められていく。鎖が張り巡らされ、狩猟者が獲物へとひっくり返される。
「そこ、だ」
「ッチい、ッッ」
ライダーの鉄槌が降り下ろされる、も間一髪で身を捩る。風圧で大樹をこそげ落とす一撃が生身に命中していれば即死も即死、バラバラになって地表にばら撒かれていただろうから見事な状況判断だが────そこまでだった。
「────く、そが」
姿勢が完全に崩れきって、もうどうにも八方塞がり。彼が何をするよりも迅く、足に『
暗い森が遥か後方に置き去りになる。音も風も切り裂いて、振り回されていると理解するより先に。
衝撃が背を粉砕した。
***
聖を捕まえて、ライダーは両手でフルスイング。
銃弾よりも早く──
「──────」
…………彼の姿は木々の狭間に消えた。めきめきめきと徐々に大きくなる倒木の音は、やがて地を揺らす轟音で幕引きとなる。立派に大樹と言っていい一本が、真ん中からへし折れられたのだ。
あれを
「………………ぁぁ」
決着だ。
ランサーを欠いて、土台厳しい戦いだったけれど──これで終わりか、と思うと不思議と少しほっとする。
ライダーは敵で、嫌いだし、許せないけれど。
彼は私を“使う”と言った。私の自由はあの鎖で奪われ、いいようにされるということなら──
「──そっ……か。それなら」
私が私を生きるよりは、よっぽど良いのかもしれないね。
だって私の一番の敵で、誰よりも大っ嫌いで、何より許せないのは
目を閉じる。
もう抵抗する気力もない。
「──それでいい。貴様は余に使われるために居たのだと、観念すれば楽になる」
私に触れれば、全部終わり。
私は私を手放して──────
「そんな訳がないでしょう、この、信じがたいほどの大馬鹿者」