肩に負う少女が、かすれた声で呟いた。
「────ひじりは、知ってたの」
「何を」
「全部。なにもかも。ハルくんがサーヴァントだったのも、
「
「なに……それ。判んない」
「第一問、ノー。やべぇ神父だとは思ってたが、まさかサーヴァントとまでは知らなかった。
第二問、ノー。“
そして第三問、イエス──第四次聖杯戦争が十年前なのも、その終結と『フユキ大火』のタイミングが符合しているのも知っていた」
少女の表情は伺い知れない。彼女は頭を後ろに担がれている。もっとも前を向いていたとしても、項垂れて前髪で隠れた顔は見えないけれど。
質問をするということは他者を求めるということ。
にも関わらず他者を拒絶するような
アンビバレンツな在り方を尊重してやれる余裕が、今の
どこかで白黒はっきりさせなければならず、
「俺からも訊くが────その死にたがりは『
「さあ──ふふ、判んない。判んないよ。なにも──」
腹をくくって踏み込んでみても、返ってくるのは投げやりな言葉。
けれどその言葉は彼女にとっての真実を孕んでいた。明確な理由が無い、あるいは本人にも判らない。原因を取り除こうにもそれが記憶から隠されていてはどうにもならないという手詰まりの構図。
それでも匙を投げることはできない。一度関わると決めた者を命惜しさに放り出すなど、ヘルギの沽券に関わる。
「最初は聖杯への願いがあるのかと思っていた──けれどすぐに巻き込まれたのは見て取れて。ただ、それにしては妙な点がいくつかあって気にはなってたんだ。場慣れと積極性」
日常に身を置いていた一般人にしては生きるか死ぬかの場に適応し過ぎている。これは
意思持つ人型を撃つ経験を、どこかでしている。
そして彼女の経歴上、どこかなど『第一次フユキ大火』以外にあるものか。
「………………」
十年前に
…………それくらい悲惨極まる大災害だった。
当時フユキに住んでおらず、後から聖杯戦争の情報収集のために聞き/読みかじっただけの彼にも分かる
おそらく三騎以上のサーヴァントの宝具による激突は街に消えない傷跡を刻み込んだ。時間帯──深夜と夕暮れ──の違いや、避難の有無といった差異はあるものの、あくまで戦いの余波で市街を巻き込んだルーラーとは異なり明確に
第四次聖杯戦争の重大機密──サーヴァントかマスターを目撃したことで記憶を消された可能性が浮上してくるが、それはそれで不自然な部分もある。『記憶を封じられたうえでなお行動原理や人格形成に影響を及ぼすほどの何があったのか』という疑問と、『それほど重大な経験をする危地に居て、どうやってただの少女であるはずの彼女が生き残ったのか』という点だ。
長期的な記憶操作はただの暗示には難しいが、ハル神父が第四次聖杯戦争のキャスターと明かされた今であれば不思議な話では無くなる。彼ならばそれくらいの魔術は造作もないだろうし、義母の死までの数年間は親しくしていたというから、その間に手入れ──安定化・永続化も施せたことだろう。
それだけの手間をかけるほどの…………ただ巻き込まれただけではない“何か”がある。