「なッ──遠坂、
「想像の通りだ。聖杯始まりの御三家、ここ冬木の元セカンドオーナー。……第二次聖杯戦争で絶えたはずの魔術師一族。どの遠坂だ、全部か?」
「………………」
自称・遠坂な青年の挙げたすべては、聖が思い浮かべて口に出さなかった疑問そのものだった。
臙条
彼らが滅びたのは間桐家よりも早い、二度目のこと。この地に未だ大日本帝国すらない、江戸時代の末期に起きた戦いの中の一幕。
そのはずだったのに、では、いま聖が会話している彼は誰だというのか。
「滅んで、なかったのか」
「滅んださ。
──なるほど。話が見えてきたぞ、と聖は思った。
言い口から察するに──遠坂の生き残りはいたのだろう。
当時の遠坂の当主は、第二次聖杯戦争のマスターとして討死した。それにより魔術師として繋ぐべきもの……魔術刻印や蔵書、蓄えた礼装、ノウハウ、のみならず地縁など──『魔術師・遠坂家』のすべてをそこで失ったのもまた事実なのだ。
けれどそれで終わらなかった。血だけは遺して、繋いでいたのだ。
彼らの本願──聖杯戦争の勝利さえも、見送って。
「──それが、なぜ。何故
150年以上も埋伏していた一族があえて第五次聖杯戦争に乗り込んで来るのは、並々ならぬ決断を要するはずだ。何か理由があるに違いない。
彼ら一族にのみ伝わる聖杯戦争の秘密に勝機でも見出したか。あるいは逆に遠坂家の維持できる瀬戸際で参戦せざるを得なくなったとか。それとも何か、もっと別の理由があっての『魔術師・遠坂家』の再動────
「──別に。俺が戦うべきだと思ったから戦うまでだ。追い落とされた地元で好き勝手されっぱなしなのも、けったくそ悪いしな」
「────」
韜晦にしては、どこか子供っぽいセリフ。
魔術を失い、故郷を失い、目的すら失っても戦うのか。それほどまでに戦うことが好きなのか。──きっとそうではないと聖は感じていた。
この青年は──
相容れないかもしれない。決裂するおそれは十二分にある。けれど、それでも。
椎名聖からしてみれば、共感と尊敬に値すると────
「……それに、三分の一とはいえ、もともとウチのものだろ、聖杯。なら俺が貰ったって文句はないはずだ」
「………………」
これもまた、本心からくる言葉だと。
察してしまったがゆえに、言葉は出てこなかった。
「…………無駄話をしすぎたな。俺のことより君のことだ、椎名聖。勇士ヘルギの転生者、キャスターを従えてこの冬木に混乱を齎した不埒者。君について聞かせてもらう。黙秘は認めないぞ、観念してもらおうか」
「──どうぞ。と言っても、俺はもうマスターじゃない。キャスターは消滅して、俺の手に令呪がないのは……」
「ああ。知ってる。それは確かに重要なきっかけだったが、全てじゃない」
そうだろうなと聖も心の中で相槌を打つ。意識覚醒後の自己診断時に武装解除されているのは確認していた。その際に令呪の有無も検めるに決まっている。別にどうということはない。聖だって同じ状況ならば検めるし、知られて困ることでもなかったから。
聖杯戦争の参加者としての椎名聖は、あの郊外の森でのライダー戦で終わっている。
キャスターの挺身からの消滅、それに伴う令呪の消滅。それでマスター適性が無くなるわけではないし、再び令呪が灯る可能性もゼロにはならないが──そもそも椎名聖に
けれどそれもあくまで椎名聖の側の心情であって、てっきりセイバー陣営は復帰を警戒しているものと、だから自分と臙条叶を手元に置いたのだと、そう思っていたのだが。
「聖杯戦争を勝ち残ることと、これから話す内容は別軸だ。終わっても生きてるんだから、先のことも考えなくちゃだろ」
「それはまあ、そうだな」