何も分からない。
いつの間にか私は
夢の中だから、自由自在なのだろうか。
位置関係だって奇妙だ。私は背にアスファルトを感じながらお父さんに圧し掛かられていた。それなのに今は、尻もちをついているお父さんと私たちは、きっかり5mは離れている。いやこの一瞬で、そんなに激しく動いてないだろう。
違う。
ええと、私の服装やポジションなんてどうだってよくて、つまり、何よりもまず第一に気にするべきは、
「────聖」
そう。コイツ。
ここが私の悪夢であることから、彼もまた私の無意識がキャスティングした登場人物であるという可能性も浮かびはした。私の精神が逃避のために造り出した、私の願望の顕れとしての救い主。恥知らずにも程がある、この期に及んでまだ救われたがっているのかと自責しかけるも──そんな考えなんて吹き飛ばす、この揺るぎない存在感。闇と死を斬り裂いて此処まで至った魔剣と、その担い手。
疑う余地はなかった。彼は当代のヘルギ、椎名聖その人だ。
であるならば。
「──何で、ココに」
「お前の秘密の友達の導きだよ。ベルって呼んでるアイツ。この“泥”の中を潜る命綱になってくれてる、これがなきゃ俺も浮上できなくなってオシマイだった。他にも何やかやと、お前を助けるのに全力を尽くしてさ。起きたらちゃんとお礼言ってやれよ──」
聖の掲げる左手、魔剣を握ったままの手首には黒い触手のようなものが絡みついて暗天へと伸びていた。命綱というには生っぽいしおどろおどろしい。アレで私を引き上げるつもりなのだろうかとかイヤだからそれよりも、
「違うッッ!! そういうことじゃなくてッ──」
聖は神妙な顔をして、私の次の言葉を待っている。
私はそんな彼に、
「こんなトコまで何しに来たの、私の秘密を暴いて訳知り顔ってワケ!? それともまさか、助けにきたとでも言うつもり!? お生憎様、私は助けてほしいとか一言も言ってないっ。むしろ助けないでほしかった、死なせてほしかった! いい迷惑だったの、ずっと、あの時も、今まで、今も!! 私、わたしは──死にたくて、生きていたくなくて戦ってたって、もう知ってるクセに、この偽善者──!」
────なんて、ぶつけるべきでない駄々を喚き散らした。
***
椎名聖は少女の激情を黙って受け止める。
感情に呼応して廃棄孔の泥──悪性情報が反応するかとも思っての観察だったが、懸念は杞憂だったようだ。
だから後は、少女のねじくれた感情にどう
「……………………」
────椎名聖はそれを、