────聖は、ズルい。
ずうっと好き放題してきて、私の夢の中に飛び込んできてまで好き勝手自分のことばっか言って。
憎めたら、拒絶できたら楽なのかもしれない。
けれど能力的に可能かどうかと、心情的に可能かどうかはまったく別の話。
認めるのは癪だけれど、私はもうとっくの昔に、この大馬鹿野郎に憧れてしまっていたのだ。
私も彼みたいに生きてみたいなんて、それはなんて烏滸がましい夢。
お父さんを殺して生き延びて、その事実を封じて生きてきたくせにのうのうと、思うまま悔いなく──とか。
果たしてどれほどの恥知らずなんだろう。ずっと頑張ってきた彼みたいになりたいという気持ちも、ただ単にこの私が“生きたい”と願うことですら。身の程知らずにも程がある。
きっと今までは無意識に抑えていた。忘れさせられているなりに覚えていて、望むべきでないと蓋をしていた。それがどうだ、私はすっかり変わってしまった────彼に出会ってから。
「つまり、なに。私が突拍子もなくて、飽きさせないから眺めてる分にはちょうどいいみたいに言ってる? そんな理由ぽっちで、私に生きろって言うんだ、聖は」
思考を持て余して、感情を適切にラベリングするための場繋ぎに、私は軽口を叩く。
それで私がちょっと元気を取り戻しているのだと察して、聖も軽い口調で、
「そうとも。幾度夢に堕ちても、毎回叩き起こしに来てやるから覚悟するんだな」
…………それは、良いな。
彼の見得を、言葉通りに受け取ってしまうあたり重篤だ。つまり、その、何というか────────
「…………ああ、もうっ。こんなの正気なわけない──」
自分でもどうかと思うけれど、もう、認める他ないっての。
私は、臙条叶は──椎名聖のことを、その。
好き…………みたいだ。
まあ基本というか大半は人間的に好感を抱いているのが主だと思うよ。色々あったし。何回も助けられて、彼の願いも聞いて、濃密な時間を過ごせば、何だっけ、吊り橋効果? そういうのもあるって言うし。尊敬、そう尊敬している。それが一番。けれど別に、一個人として憎からず思っている相手が、年の近い異性なら、うん、そういう好意、抱いたっておかしくはないと思う。
ああ、まったく、顔が熱い。
心臓、うるさい。さっきみたいな距離でなくなっていて良かった。鼓動の音が聞かれる心配は無用と思いたいけれど、どうにも怪しい。さっきからどんどん、ドクン・ドクンって響いてきて──
──ドクン!!
「わっ、あ!?」
「うお──」