「さて、聞かせてもらうぞ。ベル──魔神柱ベリアル」
口火を切ったのは
面子は私こと
……紹介された時は驚いた、フユキ聖杯戦争の御三家のひとつ、滅びたって聞いてた遠坂家の人間とそのサーヴァントであるセイバーが何で私たちを……保護? してるんだろうって。
ただ、質問してみたかったけれどそれどころじゃなかった。
覚醒直後の私も、そして聖も。共にビックリするほどの飢餓状態だったから話より先にすべきことを。ルームサービスでニホン風の胃に優しい朝食を持ってきてもらったのを二人して掻き込んだり、寝起きの身支度をさせてもらったりで時間はあっという間に過ぎてしまって。
ようやく人心地ついたというタイミングで、この呼びかけ。
私に向けての発話だけれど、今の私には理解できる。これは私の中に宿る、ライダーが言うところの“魔”──ベルという歴とした別存在への言葉なのだと。
思った通り、返事をするのは私であって私ではない。
すっと独りでに動いた右手、全員に見せるべく掲げられたその掌にむず痒いような奇妙な感覚が芽生えたかと思うと、
「ぅヒッ──」
ぐぱぁ、なんて音とともに掌の中心に口が開いた。痛みも無しに十字に裂けて、歯と舌を備えた粘膜部が予告なしに自分の身体に出現すると流石に悲鳴の一つも出るというモノ。
掌の口はむまむまと調子を試すように動いたかと思うと、
「────良いだろう」
「良くないよ!! 何これ!!」
ベルの仕業以外にありえないけれど、こんなことまで出来るなんて聞いていない。というか先に言っておいてほしい、心臓止まるっての。
「事前承諾なぞ取っていられるか。どうせやること、やらねばならぬことなのだからな」
口だけだけれど大体どんな表情をしているかは伝わってきて、ベルは完全に私をあしらうモードに入っている。文句を付けてもこうなったらスルーされるばかりで、困ったことに大概ベルの言い分の方が正しいのだ。
「こうすれば私と叶の発言が混在することもない。それとも何か? 口を共有した方が良かったか、もっと別の場所に開口しても────」
「あーはいはい分かった分かりました掌でいいです! だから良いから始めてってばっ」
言い負かされるくらいだったら切り上げてしまった方がマシだ。ベルはまだ物申したそうだったけれど、きっと私とベルだけだったら引き下がらなかったろうけれど、「…………良いだろう」ともう一度言うと、
「約束通り、私の知る限りのすべてを語ろう」
厳かに、宣言した。
***
「まずは自己紹介だ。私はベルと臙条叶に呼ばれているモノ──
魔術王ソロモンの使い魔にして、その使命に叛逆せし人類悪。原罪のⅠ、憐憫の獣の断章が一。
こことは異なる
「──────」
反応は三者三様。
聖はむっつりと黙り込んで考え込み、
遠坂さんとセイバーは僅かながら驚愕に目を見開き、
そして私はというと、何を言っているのかさっぱり理解が追い付かずにいた。
何せ夢の中を含めても初耳の話ばかりだ。ベルは魔術についての講釈は垂れていたけれど、己について語ることは殆どなかった。きっと意図して伏せていたんだろうと今なら分かるけれど、記憶が封印されていたころの、ある意味において半分だけの私にそんなことが察せられる訳も無く。
……いけない、予想外のカミングアウトに圧倒されてる場合じゃない。