「ああ、この星を丸ごと焼くに等しい蛮行、人類の滅亡そのものを、われわれ魔神柱は成し遂げた」
「そんな──────」
ことが、あり得ていいのか。
その是非以前に、それは
「言い回しで齟齬が出てるんだよ。つまり、ベリアルの言ってるのは
「────あっ!」
聖のサーヴァント、異聞のキャスター。
第二次世界大戦で日本は敗北したけれど滅亡・分割まではいかず、ひとまとまりの国として続いている世界の出身者たる
つまり、
「ベルは他の世界を────」
「厳密には異なる。だが今回はその認識で構わない」
流石に十年来の付き合いだから、ベルは私のことをよく理解している。やれ定義がどうだ実情はこうだと言われても、私の脳に染み渡るまでにはえらく掛かる。一から十まで説明することは諦めてもらって、分かる範囲だけ摘まませてもらった方が私としてもありがたい。
何せ私以外の三人はどうやら全員理解しているらしかったから。学校の授業とは違うのだ、この場の目的は一にセイバー陣営を納得させること、二に聖との約束を果たすこと、私の理解は後回し。
……とはいえ、理解できるからといって納得できるとも限らないらしく、遠坂さんは眉間にすごい皺を寄せてるけど。
「……まあ、他所の世界で何をしたかはこの際置いておくとして──となると次は当然の疑問が出てくるわけだが」
「順当に行くのならば『何故私がここに、この世界に居るのか』といったところかな」
「ああ、それともう一つ、『この世界でまたやらかすつもりじゃないだろうな』だ」
──和室の空気が張り詰める。
回答次第ではここで世界の敵とやらを斬り捨てるという遠坂さんとセイバーの殺意。
じり……と聖がほんの僅か、腰を浮かした。庇ってくれるんだとしたらありがたいし嬉しいけれど、まずは渦中のベルの言葉を待つ。
果たして、ベルは、
「単純な事情で、無用な心配だ。我々は負けた──完膚なきまでに敗北し、計画は潰え、我々から私になって……そして死んだ」
「えっ?」
なんて衝撃的な告白をするものだから、全員固まった。
流暢に来歴について語っている最中に『私は死んだ』と言われてしまうと、会話のジャンルはがらりと変わる。それは最早自己紹介ではなく怪談になってしまう訳で。
一触即発の空気を吹き飛ばす一撃。もちろん私も動けなくて、とりあえず聞く姿勢しか選べない。
死人(死
「今ここで語る私は言わば移植された臓器とその残留思念と表現するのが適切と考える。よくあるだろう、人間同士でも。臓器移植を受けたことでドナーの記憶を垣間見たり、趣味嗜好に影響を受けたり」
例えば──行ったことのない土地のフラッシュバック、学んだことのない言語での会話能力の習得。
臓器にも記憶と感情は宿る。
「それのより強烈なバージョンと思えばいい。魔神柱ベリアルの魔術回路は臙条叶の肉体の全体に散って深く適合しているから、機能停止していてもこの私の意志を転写することは出来た。
逆に言えばそれしかできなかった。私は私の機能を使用する権限を喪失しており、すべては臙条叶に委ねられている。緊急時に生命維持の範囲での活動は許されているが──それで人理焼却などとても不可能、絵空事の夢物語。せいぜいが魔眼をブッ放して
つまり、魔神柱ベリアルは完璧に無力化されていて、君たちに危害を加える心配はないということだ」
……………………えっ、私、
しかも聞く限り人間でもない存在──魔術王ソロモンの眷属の、その亡骸を。
いや、考えてみれば、普通の人間の身体は十字に裂けて口とか開いたりしないし、そもそもやたら魔力が多いとか言われていたっけ。それも魔神移植によるものなら納得ではある。
納得いくかどうかと、受け入れられるかどうかはまた別の話。