「───やっぱり、そう見えるのか。キャスターから見ても」
剣を、聖は収めた。
始末するのであれば迷いを吐露する必要もなく、抜き放った時点で斬ればいいだけのこと。それを出来なかった──しなかった
「自分でも驚いてるよ。今までなら、知られるリスクがあった時点で全部始末してた」
「そのようですね」
ちょっと待て、と腰が浮きそうになる聖。
「あんたホントに全部見たのか? どこからどこまでだ」
一夜の夢のことだから、見たといっても
「場面としては飛び飛び、細切れの断片でした。貴方のもの、
ひどく嫌そうな顔をするだけに留めていた聖の我慢が、とうとう限界を迎えた。肺の中の空気を全部吐き出しそうなため息とともに前のめり。
「──要するに全部、か。眺めも眺めたり、ずいぶんと満喫してくれやがったみたいだな、オイ」
当て擦りはどうせ柳に風と受け流されるだろう。そう予想していた聖への返答はしかし、真摯な謝罪。
「申し訳ありません。ですが、これが願いでしたので。止めることも出来ませんでしたし」
今度こそ腰が浮いた。臨戦態勢とまではいかないが、机にもたれかかって脱力したまま、看過できる発言ではない。
「ちょっと待った、あんたの願いだと? マスターの秘密を暴くことが、か?」
「いいえ。
それは、衝撃的な告白だった。
サーヴァントもまた、聖杯に願いをかなえてもらいたくて召喚に応じるはず、なのに。彼は『願いは無い』と言い切ってのけた。それは即ち、聖杯戦争を勝ち抜くモチベーションもまた、無いということではないか──
聖の懸念を読んだかのように、キャスターは続ける。
「ああ、負けて消えてしまえば知ることはできませんので。積極的ではないにせよ、サーヴァントとしての務めは果たすつもりですよ」
「なら安心した──とはならないけどな。元より、現代にかなり近い作家であるあんたの積極的な切った張ったは期待してないさ」
椎名聖の秘密。
キャスターの望み。
互いに一歩深く踏み込み、一蓮托生となったキャスター陣営。何をいまさら、もとより命がけの聖杯戦争。握手など、とうの昔に済ませているとも。
「あんたにはあんたの、出来ることをやってもらうから覚悟してもらうぜ、キャスター」
「諒解しました、我がマスター。この手に剣はなくとも、きっと貴方の力となりましょう」
男たちは顔を見合わせ笑った。片や紳士然とした微笑、片や獰猛な獣の如き剥き出しの笑み。
ふと、若い方の笑みが引っ込んで、
「ああ、念のため言っとくが。くれぐれも口外するなよ。彼女たちにであれ、敵であれ、な」
掌の令呪を見せつけながらの言葉は、一目瞭然な脅し。『漏らせば令呪で即座に自害させるぞ』というアピールだ。
キャスターは肩をすくめる。
「言われるまでもなく。私の職業をお忘れですか」
「? 作家だろ、それが何だってんだ」
「秘密は物語の礎です。うかうかと吹聴するようでは、小説で食べていくことなど出来ませんよ」
希代の短編小説家の言に、聖はらしくもなくぼんやりと頷いた。
「ああ……。そいつは、道理だな。考えたこともなかったぜ……」
「
「冗談キツいぜ。協会の手で即禁書だよ。それに──」
聖はそこで、酷薄に
「向かないの、