聖杯戦争。大混乱の乱痴気騒ぎ、と言い換えてもいい。
古いも新しいも入り混じった英霊七騎の闘争なんて、滅茶苦茶にならないほうがどうかしている。
僕の時もそうだった。もう笑ってしまうくらい次々と、匙を投げたくなる災難が巻き起こったものさ。
──まあ、そのうちのいくつかは、僕の手によるものだったのだけれどね!
「最悪だ」
その横、他人事みたいに珈琲を堪能するキャスターが、これまた他人事みたいに問う。
「何がですか?」
「俺たちのアドバンテージが全部ひっくり返った。守るのに向いた堅牢な拠点は逃げられない重石になったし、二陣営で組んだ同盟は目を付けられる。異世界の英霊だから真名を知られても問題ないってキャスターのメリットは、ルーラーが召喚された理由かも知れないしな」
あ、最後のは嫌味だ。
聖のひと睨みにも、キャスターはどこ吹く風。美味しそうに珈琲に舌鼓を打っているから、つい釣られて私も、────
「ん、美味しい」
「他人事じゃないだろ、
吼える聖。食後のドリンクを満喫する余裕もなさそうで、難儀なことだ。
私は珈琲の香りただよう息をして、状況を整理する。
「そう? 結局、私たちに出来ることも、することも無くない?」
昨日の教会のすったもんだ──これには“シスター服のマスターとの遭遇”や“ルーラーの召喚についての情報提供”、あとは“私が聖を置いて帰ってしまったこと”などが含まれる──はしっかり全員情報を共有して(あと勝手に帰ってしまったことはちゃんと謝罪して)いる。
不確定要素の多い聖杯戦争を正しく執り行うために聖杯が喚んだ使者なんだとか。
いいことだ、と思う。
そもそも論として聖杯戦争自体が問題なのは疑いようがない。
いくら地方都市とはいえフユキの街でどんぱちバトルするのは、フツーに大迷惑以外の何物でもないと、私はこれまでも思っていたのだ。
私はもう巻き込まれてしまってランサーに助けてもらった恩もあるし、聖やキャスターと同盟も組んだからには今更降りるワケにもいかない。
けれど、偶然助けてもらった私以外にも、巻き込まれてしまう人は居るはず。
誰かの願い一つを叶えるために、大勢が迷惑を被るのは、おかしい。
聖杯戦争なんて、無い方がいいに決まってる。だから私は願いのためというより、聖杯戦争で被害を出さないために戦っているんだ。
ルーラーだか何だか知らないけれど、せめてこのルール無用に等しい戦争を調停して、不審な事態があるなら解決してくれるのならば願ったり。
そっち寄りの立場だもんでついつい肩を持ちがちの私。ルーラーを邪魔者と認識しているらしい聖とは、だからこうして対立気味。
「私たちは別に
「気楽に言いやがって……ッ!」
とうとう頭を抱えてしまった。ここまで参っている聖というのは珍しいんじゃないだろうか。
……面白かったからついからかって遊んでしまったけれど、さすがにそろそろ罪悪感の方が強くなってきたかも。ま、まあ、一応私たちも同盟なワケだし、これまで助けてもらっている身でもあるし、助け船でも出してやるとしますか。
「私からも『キャスターは危険なサーヴァントじゃないですよ』って、ルーラーには弁明してあげるからさ。きっと大丈夫だよ」
「…………、……」
聖が顔を上げる。物言いたげな視線からは、『こいつ調子乗ってて腹立つけど、実際口添えしてもらわないと困るしな……』みたいな葛藤を感じる。そこはかとなく舐められている気配は腹立つけれど、だからこその優位が心地いい。
ふふん、悩め悩め。そんで最後には私たちと同盟を組んで良かったって思え。こういう時くらい、そっちが弱い方がバランスもいいだろう。
「──かくなる上は、ルーラーが諦めるまでどこかに潜伏するか……っ」
ちょ、ちょっと雲行きが怪しくなってきたな?