Fate/second to none   作:吉田一味

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ルーラーがやってくる!③

 眉間をもみ込んで悩み込んだかと思えば、勢いよく自分の両頬を張って、赤い顔に涙目のまま、キャスターに話しかけに行く少女。

 

 聖はそれを、新種の動物を見つけたような目つきで眺めていた。

 

 叶の百面相や奇行は今に始まったことではない。そもそもが初対面で、同盟締結の話をするより先に拳銃をぶっ放してきたのが出会いなのだ。慣れっこというには日も浅いが、振り回されるほど()()でもない。

 

 聖が考えていたのは、別のこと。

 

 ──昨日、教会帰りに聞いた事情。彼女の養母、臙条美青について。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 錯覚のような気もする。そうでない気もする。

 

 これは極めて奇妙なことだ。異常事態と言ってもいい。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。にも関わらず、うろ覚えというのは何か理由がある、はずだ。

 

(この家の結界について、話題に出した時の反応といい──臙条、臙条ね……)

 

 聖も初見では気づかなかったが、この屋敷……臙条邸には複雑かつ緻密な結界魔術が施されている。

 

 叶は知らなそうだったのでシロ──そもそも魔術と魔法の違いさえ怪しい彼女に、そんな魔術の力量があるとも思えないので、そこは端から候補としては除外済み。

 

 問題はランサーのものでも無さそうな点だ。

 

 誰にも気づかれないよう調べるのに時間を要したが、結界を構築するのは彼女の扱うルーンとは異なる魔術体系だと判明した。それだけなら彼女が、聖ですら知らない能力を使って何とかした可能性もあるが──

 

 先刻、屋敷の結界を話題に出した折、ランサーは全く自慢げにしていなかった。

 

 これが彼女の仕業なら、一瞬であっても、僅かであっても、その顔には誇りが宿るはずだし、彼はそれを見逃さないという自負があった。

 

 無かったのだから、彼女ではない。

 

 とすると、候補はやはり──家主の、臙条美青になるわけである。

 

 ありそうなパターンとしては聖堂教会の人間、ただの代行者程度ならば聖はどうとでもできる。自惚れではなく、幾度か交戦したことがある経験に基づく確信。

 

 ただしそれは、ヒラの場合に限る。教会における異端である聖堂教会の、その中でさらに異端を突き詰めた連中──埋葬機関が出張ってくれば、話は別となる。

 

 以前、一度だけ見たことがある。アレはどうにもならないものだ。サーヴァントと殺り合う方がマシなくらいの、()()()()輩。百回戦って百回殺されるであろう怪物。

 

 ──聖はハル神父がそれではないかと疑っていた。フユキ・サンタンジェロ大聖堂での会合の際、彼は一切の隙を見せていなかった。叶が飛びかかった時の身のこなしも荒事慣れした足さばき、おそらくあの場で叶が発砲したとしても対応できただろうことを窺わせるもの。

 

 十分にあり得る、と聖は考える。

 

 ではそんなハル神父と縁の深いような臙条美青が、果たしてただの代行者であるのだろうか。──彼の相棒でないと、言い切れるか。

 

(故人、て話だが……)

 

 聖堂教会の暗部であれば、死亡の偽装くらいはする。よしんば事実でも、心の(つか)えが取れるなら動く価値としては十分。

 

(こっちでも調べられるなら調べておくか)

 

 彼女のように派手にアクションを取ったりはせず。椎名聖は密やかに、今日の行動指針を定めるのだった。

 




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