Fate/second to none   作:吉田一味

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裁定のとき①

 

 当家の召喚に応じたルーラーは「聖杯戦争に異変あり」とのこと。

 

 聖杯を造り出した一族の裔としては看過できない。我々は聖杯戦争への参加権を放棄し、ルーラーに協力することと決定した。

 

 ついては事態解決のため、聖堂教会も協力されたし。

 

 まずは参加者全員への聴取を行いたい。

 

Reansviel von Einzbern(リーンスフィール・フォン・アインツベルン)

 

 

 

 

 

 貴家およびルーラーが此度の聖杯戦争の参加者ではないことを証明するのであれば、監督役として協力を惜しまないと約束する。

 

 以下の条項を満たされたし。

 

 ・ルーラーの真名を当方へ開示すること。

 

 ・自己強制証文(セルフギアス・スクロール)により、「ルーラー、そのマスター、およびアインツベルン家に属する生命体が一年間、聖杯を起動・使用しない」と誓うこと。

 

聖堂教会 第八秘蹟会 ゲオルグ・ハッチンソン

 

 

 

 

 

 ──了解した。

 

 自己強制証文は来日時に署名する。貴方で用意されたし。

 

 ルーラーの真名も自己強制証文署名時に同時に開示する。

 

Reansviel von Einzbern

 

 

 

***

 

 

 

 フユキに到着したルーラーと召喚者リーンスフィール・フォン・アインツベルンがまず向かったのは、ここいら一帯で最も格調高いホテルである、フユキ・ハイアットホテル。先行してフユキ入りを済ませていた家臣に用意させた、この街における拠点である。

 

 元々フユキに定まった住居などを持たないアインツベルン家としては当然の動きであり、結果としてこれまた自然と、ルーラーの動向に注目している諸勢力の()が一極に集中することとなる。

 

 もしもこれが()()()一陣営であれば、今夜にも襲撃されていたかも知れない。

 

 同じように拠点であると露呈している臙条(えんじょう)邸が無事なのは、ひとえに最速で臙条(かなえ)にたどり着いた椎名聖(しいなひじり)が同盟を組んで転がり込んだため。叶とランサーだけだったなら、片手の指ではきかない数の攻勢に晒されていたことだろう。あるいはすでに焼き討ちに遭い、無惨に焼け落ちていたかもしれない、

 

 それくらい、数の要素は無視しがたく。

 

 単騎でランサー&キャスター同盟と匹敵する“近寄りがたさ”を発揮しているルーラーの存在感も、増すというもの。

 

 ──フユキ入りは日付変更後ではあったが深夜だったため、ここは翌朝としておこう。

 

 ルーラーたちは朝一でフユキ・サンタンジェロ大聖堂へと足を運んだ。

 

 主従を運ぶ最高級のハイヤーもまた、各精力の使い魔たちの監視付きなのは言うまでもないことだが……興味深いことに、これまで観測された使い魔同士の小競り合いが一切見られなかったのは、それだけ状況が特異であることを示す証左と言えるだろう。

 

 他陣営の使い魔を排除して騒ぎになれば、ルーラーを監視できない。ともすればその騒ぎでルーラーに要注意と思われて、余計な悪評(てんすう)を稼いでしまうことを恐れたのだ。

 

 かくして何事もなく自動車はフユキ・サンタンジェロに到着し、聖堂教会と裁定者は密談を交わす。……と言っても、一部勢力は事前のやりとり内容を既に聞き及んでいたりするのだが。

 

 ──ルーラーの真名の公開。そして聖杯不使用の誓い。それらを引き換えに要求した、聖堂教会による調査への全面協力。

 

 対話の結果は、すぐに周知となる。

 

 ルーラーたちが大聖堂に入ってしばし。監督役ゲオルグ・ハッチンソンを伴って出てきたルーラーは、誰も居ないように見える表広場に向かって、高らかに告げる。

 

「──(ローマ)はルーラー、コンスタンティヌス一世。此度、第五次聖杯戦争に異変の兆し有り、と聖杯に召喚された裁定者である」

 

 『余は(Roma is)』などという突拍子もない一人称が飛び出しても、この場に居ない聴衆たちはそれどころではない。

 

 こいつは、この堂々と真名を明かしたサーヴァントは、聖堂教会のお墨付きを得たらしいルーラーは──これ以上いったい何を言い出すのか!?

 

 衝撃は、待つまでもなくやってきた。

 

「聖杯戦争の参加者ども。聴いていよう。観ていよう。(ローマ)はここに告げる。

 

 猶予は、丸一日。明日のいまこの時までに(ローマ)のもとに出頭しなければ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 潔白を欲するならば来い。(ローマ)が直々に見極めてやる」

 

 ──蜂の巣をつついたような騒ぎは、この場には届かなかった。

 

 聴いていた者が残らず混迷の渦の中に叩きこまれて、使い魔に指示を出すどころではなくなったのだから、そうなるのも自然なこと。

 

 静寂の広がる大聖堂前広場をもう一度一瞥だけすると、ルーラー──コンスタンティヌス一世はそれ以上何も言わず、外套(マント)を翻して立ち去る。

 

 やがて再び姿を現したハイヤーがフユキ・ハイアットホテルに戻っていくのを、監視者たちは茫然と見送るばかりだった。

 




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