Fate/second to none   作:吉田一味

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裁定のとき⑥

 瞬間、視界が白に染まるのを、私は覚えている。

 

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 電荷の奔流が、ルーラーの居た辺りを貫き押し流す。とっさに顔を覆ったけれど、余波の熱量と光量だけで感覚器官はいっぱいっぱい。ランサーのルーン石が、パリンパリンと砕け散ったのが振動で伝わってくる。

 

 これほどの至近距離で味わったのは、夜空での初遭遇以来。あの時はランサーの外套で守られていたけれど、今は──

 

「────」

 

 直前の念話、聖の()()。あれを合図に、ランサーもまた動いていた。()()()()()()()()雷撃をやり過ごし、彼女のクラスの象徴たる魔銀の槍を突き出していたのだ。

 

 聖も当然、その得物たるショートソードで攻めかかっていた。毎朝の訓練のたまものか、二人の呼吸はぴったり。

 

 そして、もう一人。同時攻撃の立役者──

 

「アサシン、か。攻撃に転じなければ『気配遮断』は据え置きだったな」

 

 髑髏面に黒衣の、暗殺者がルーラーの背後からナイフのような短剣で首を狙っての一閃を繰り出したのだ。

 

 私とルーラーが言い争っている間に、そいつは聖の視界のみに姿を晒し、ルーラーへの攻撃を持ちかけていたらしい。と言っても、死刑執行寸前のような状況だった聖に選択の余地はなかったろうけれど。

 

 アーチャーが私たちに目もくれずルーラーに集中砲火したのも、アサシンの差し金だろう。廃サナトリウム戦を引き起こしたときのように、今度は私たちを誘導してルーラーにぶつけさせたのだ。

 

 かくして、ほぼ同時の四人攻撃。それを──

 

「愚かな」

 

 

 

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「聖杯戦争の裁定者たる(ローマ)を、この程度で殺せると思うとは」

 

「ッッ、この──」

 

 聖のショートソード。アサシンの黒刃。ランサーの魔銀の槍。そしてアーチャーの雷撃──それぞれに費やす枚数は違えど、ルーラーの身体に到達する前に、盾が虚空から出現して受けたのだ。

 

 光る盾、ではなく光そのものの盾。いかなる神秘か消滅せず落下せず、実体なき粒子を固定化して宙に留めたとしか思えない輝きの盾は、その中心に文字を組み込んだデザインだ。

 

「“X”……“P”?」

 

「キー・ロー……ラバルム、かッ……!」

 

 キー・ロー──かの救世主を示すXとPを組み合わせたモノグラム。それはコンスタンティヌス一世が西方正帝マクセンティウスとの戦いの前に、主の声を聞き、啓示を受けた逸話で広く知られている。

 

 彼は光の中に、十字架とキー・ローを見た。そして声を──“この徴にて勝利せよ”という啓示を授かった。彼は自軍の兵士たち、その盾にこのモノグラムを刻ませて戦に挑み、そして啓示の通りに勝利したのだ。

 

「『我この徴にて勝てり(ラバルム)』。貴様らが一騎当千の英雄であろうとも、」

 

 ルーラーの手掌に呼応して無数の光が瞬く。

 

 その様は、満天の綺羅星の如し。

 

(ローマ)は万軍を率いる大帝だ。数を(たの)みに勝てると思うな──!」

 

 ──ミルウィウス橋の戦い。この逸話が宝具化した『我この徴にて勝てり(ラバルム)』は、ルーラーの言葉通りならば──おそらく、比喩でなく万ほども顕現せしめる、純粋な数による防衛力──!!

 

 防御を完全に『我この徴にて勝てり(ラバルム)』に任せて、ルーラーが剣を振るう。ランサーが受け止め、聖は大きく飛びのき、アサシンは──真っ二つにされた。

 

 い、いや、いくら正面切っての戦闘は苦手だからって、ちょっとこれは呆気なさすぎないか……!?

 

 疑問は、すぐに霧散することとなる。……文字通りに。

 

「──使い魔か」

 

 ルーラーの呟きとほぼ同時、アサシンと思ったものの姿がほどけていく。両断されたそれは、アサシンの使い魔──幽精(ジンニー)の姿に戻って、そのまま消えていった。

 

 使い魔だけ送り込んで、自分は安全圏にとどまった? それなら別に、使い魔にアサシンらしい姿を象らせる必要はなかったはずだ。あえてアサシンの姿をさせて、“アサシンはここに来ている”と思わせたい意図は、どこに?

 

「……ぐ」

 

 呻き声(こたえ)は、意識の外から。

 




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