Fate/second to none   作:吉田一味

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十三の死と生①

 

 ──326年、ローマ。

 

 パラティーノの丘は赤く夜を照り返す。

 

「あぁぁぁあ……何故、なぜですか……陛下!! コンスタンティヌス陛下っ!」

 

 一人の女が火中、泣き喚いている。涙も蒸発するような熱量の中で影法師(シルエット)が踊り狂うのが、ガイウス・フラウィウス・ウァレリウス・コンスタンティヌスにはよく見えていた。

 

 哀れっぽい声と爆ぜる火の粉のパチパチ、ゴウゴウという音に負けじと、彼は良く通る声を張り上げた。

 

「何故。 何故だと? 貴様こそ、よく言えたものだ、ファウスタ」

 

 呼ばわる名は、ローマ帝国皇后であり、つまりは彼の妻でもある女性のもの。

 

だというのに、その声は実に冷ややかなものだった。政略結婚であった彼と彼女の間に愛があったかは判らないが、仮にそういった情動は無かったとしても──これは、あまりにも不適切。

 

 首を刎ねる(はがね)と同じ、冷徹そのもの。

 

(ローマ)が知らぬとでも思ったか。クリスプスのこと、そして──貴様自身のこと」

 

「ああ、あぁぁぁッ、誤解、誤解なのです、陛下──! 私は、そんな……!」

 

 情けを(こいねが)う女に、男は『これ以上は無益』と首を振る。

 

 ──この夜、コンスタンティヌス一世の妻、皇后ファウスタは処刑された。

 

 ──彼女は記録抹消刑(ダムナティエ・メモリアエ)に処され、理由の一切は伝わっていない。

 

 ──ただ、そのような事実のみが、歴史には刻まれている。

 

 

 

***

 

 

 

 

「はッ!!」

 

「うおおおッ──」

 

 ランサーの短い呼気と、アーチャーの裂帛の咆哮。

 

 繰り出される双騎の連携は、即席ながらもかなりの精度。もちろんサーヴァント基準であって、私からすればホテルのスイートルームに突如として竜巻が現れたようなものだ。それも二つ。巻き込まれれば塵も残らない間断なき連撃、無比。

 

 互いに逆回転するが如きニ騎が()()()()にならないのはランサーのルーン防壁があるから。アーチャーの雷撃が同士討ち(フレンドリーファイア)にならずに前衛後衛が分担できているのは、彼と敵対した時を見越しての準備の賜物だ。アーチャーとしては不本意だろうけれど、背に腹は代えられないといったところか。

 

 何しろそうやって二人がかりで攻め立てても、ルーラーは平然とすべて防ぎきってしまうのだから。

 

 通用しない、ことはない。双方とも、『我この徴にて勝てり(ラバルム)』を破壊するだけの威力を有した一流の英霊だ。

 

 ルーラーは、破壊されるよりも速く、多く『我この徴にて勝てり(ラバルム)』を展開できる、超一流の英霊というだけの話。

 

「さて、そこにランサーとアーチャー。アサシンは身を隠し、キャスターは穴熊を決め込んで出てくる様子は無し」

 

 あまつさえ、攻撃を凌ぎながら指折りサーヴァントを数えだす始末。私たちを相手にするサーヴァントと同じか、それ以上の余裕っぷり──!

 

 見ていられなくて、私は退いていた(ひじり)に泣きつく。

 

「ねェッ、どうするの、これ……!」

 

「どうもこうもあ──」

 

 その時、雷光と雷光の切れ間で──ルーラーと目が合った。

 

 ()()()()()()()()

 




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