Fate/second to none   作:吉田一味

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十三の死と生②

 

「危な、ッ」

 

 何が何だか判らないまま、本能の警鐘に従って彼の襟首を掴んで引きずり倒そうとする。けれど、ジュージュツ(柔術)を習ったわけでもない、痩せっぽちの小娘ひとりのタックルで男性の身体がそんな動くわけも──

 

「おああッ!?」

 

 聖が、私を抱えて転がりまわる。上下(というか左右?)する視界の端で、直前まで私たちの頭があった位置を猛スピードで横切る光盾が見えた。

 

 目の当たりにすれば明らかな話で、敵の宝具はサーヴァントの攻撃を防げるほど硬くて、ある程度自由な位置に出現させられて、そしてどうやら動かせるらしいモノ。防御にしか使えないというのは狭い発想──ぶつければ普通に凶器だ。特に、私くらいのただの人間ならば。

 

 それを、咄嗟の判断でローリング回避する、(こいつ)(こいつ)で大概だけれど。あと何か、抱きしめてるのは生身の身体のはずなのに、ゴツゴツ当たって痛い。

 

「危ねェ……ッ! そりゃあマスター狙いするのが楽だろうけど、二騎相手取って、アサシンにも気を配りながら殺しに来るかよ……!」

 

「っは……今、何で言う前に、判ったの」

 

 精一杯急いで起き上がった私の横で、聖はすでに態勢を整えている。ルーラーの追撃に備えているのだろうが、(マスター)を狙われたランサーが猛然と攻め立てていて、それに対応せざるを得ないっぽいから、今は少し安心できそう。

 

 それでも彼は、ルーラーから視線を切らないまま、

 

「あ? あんだけ血相変えて跳びかかってきといて何言ってんだ。気づいてないなら言っとくと、臙条(えんじょう)の知覚能力──とくに視力はフツーじゃないからな。お前が何か視たなら、それは最優先事項だ」

 

 ……聖が何か、まだ説明している。聞かなくちゃ、と思うのに、それどころじゃなくて内容が頭に入ってこない。今の言葉が、臙条叶(わたし)の頭の中いっぱいに膨らんで、ふわふわしている。

 

 以心伝心、と言うんだっけ。言葉を交わさずとも考えが通じること。

 

 それを実現したのは、きっと、信頼。

 

 別に、私の全部を信じられてるとまでは思い上がりはしないけれど。たった一部、私の目だけでも“信じるに値する”と思われたことが、私はこんなに──泣き出してしまいそうなほどに、嬉しい。

 

 ──死ねない。そう思った。

 

 私たちはみんな、確かにちょっと変かもだけれど、何も悪いことはしてないのに、一方的に殺されるなんて納得できない。

 

 私を殺すというのならば、ちゃんと罪状を突き付けて、それを納得させてからにして欲しい。

 

 こんなのは、嫌だ。

 

「──だからな、臙条はとにかくルーラーから目を放すな……聞いてるか?」

 

「うん。うん……! 勝とう、聖……! 勝って、生き残るんだ……!」

 

 私の感極まった言葉に、聖はハトが豆鉄砲をくらったみたいな顔。

 

「……何に発奮してるか知らないけどな、最初っからこっちはそのつもりだよ! いいから、しっかり目ェひん剥いて──」

 

 

 

「──()()()()()()()()()

 

「ッ、な──!?」

 

 声の主は、ルーラー。

 

 彼の背、その片側。天使の羽か、仏像の飾りか、輝きが開く。

 

 無数の令呪が、彼の言葉を偽りではないと証明していた。

 

「マズい、まさか──」

 

 聖が泡を食って左手、彼の令呪を翳す。アーチャーはホテルの外を仰ぎ飛び上がって、ランサーが私を振り返る。その表情は見たことも無いほど必死なもの。

 

 ルーラーは『我この徴にて勝てり(ラバルム)』の絶対防衛圏の中で、それらよりも更に眩く輝いて。

 

 そして私は、そういったアレコレを、ちょうどスローモーションのように、ただ茫然と見ているだけだった。

 

 

 

()()()()、サーヴァントども」

 

「──()()()()()()()()()()()()()ッ!!」

 

 ランサーが、その手に握る槍を、自らの胸に突き立てる瞬間も。

 

 臙条叶という役立たずは、何も出来ずに。

 

 

 

 ──この時、聖堂教会の大型霊基盤によって、計十三画の令呪消費が観測され、一時計測機能がオーバーフローにより停止した。

 

 ──ルーラーによる、第五次聖杯戦争にて召喚されたサーヴァント七騎への自害命令と、()()()()()()()()()()()()()による対抗命令。

 

 ──ただ、そのような事実のみが、記録には残されている。

 




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