Fate/second to none   作:吉田一味

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赫世異産①

 

「一騎か。窃視者ども、マスターとしては優秀だな」

 

「ランサーッ!!」「ランサー、ランサー!」

 

 ゆっくりと倒れ込んでいく戦乙女に、私も(ひじり)も駆け寄る。ルーラーが私たちを狙っていたなんて前後関係もかなぐり捨てて、ただ、自害を押し付けられたランサーのもとへ。

 

 ぱしゃっ。

 

 足元、血だまりの中に踏み込む。傾ぐ彼女の身体に触れた瞬間に悟る。

 

 ──軽さ(おわり)に。

 

「ラン、サー……! そんな、嘘……うそ……!」

 

「申し訳……ありませ、マスター……」

 

 途切れ途切れに謝罪する彼女に、返す言葉が出てこない。私が悪いのに、私が聖みたいに令呪で抗うことを指示できれば良かったのに。私が咄嗟に正しい選択肢を選べなかったから、彼女は自らの血に沈んで消えようとしている。

 

 私のせいだ。

 

 私の判断の遅さが、彼女を死なせる。

 

 また私は、私のせいで──

 

「──条、臙条(えんじょう)! しっかりしろ、まだ終わってねえ! まだ出来ることはあるだろ、臙条!」

 

 がく、がくん。

 

 衝撃と共にブレる視界。

 

 ああ、さっきの逆だな、とぼんやり思う。聖が私の襟首を掴んで、叱咤しているのが他人事みたい。よく見えないけれど、彼がこんな強い語調で叫んでるってことは、それはもう必死な表情をしているんだろうな。ちょっと見てみたかったな、きっと見たことない表情してそうだから。

 

 けど、もう、顔向けも出来ないし、そもそも涙で滲んで何もかもぼやけて。

 

()()()使()()、臙条! ランサーを死なせるな!! キャスター、二人を頼む!」

 

『やれ、やれ。気軽に言ってくれ、ますね……。霊基の内側で、相反する二つの命令がぶつかり合っている気分、是非マスターにもお教えしたいものですが──』

 

「──無駄だ。彼女の霊核は砕けている。完全に消滅して聖杯に還るのは避けられない」

 

 ボヤく、珍しく本当にツラそうなキャスターの念話と、私たちのすべてを否定せんとするルーラーの肉声。それを聖は「うるせえ!」の一言で振り払って、

 

「臙条、いいか、俺を信じろ。信じて、言う通りに令呪を使え」

 

 耳元に彼が寄る気配がして、囁き声が鼓膜を震わせる。

 

 大事なことだけは判るから、取りこぼさないように必死で頭のノートに刻み込む。まだ、もしも、挽回できるのなら。今からでも、私にも令呪を使う機会があるというのなら。

 

 どうか、お願い。お願いします。ランサーを、死なせないで。

 

「れい、(じゅ)、を……っ。もって、……お願い──」

 

 震える響きは、とても届きそうにない。私は意識的に咳き込んで、自分の中の役立たずな自分を吐き出すつもりになって、

 

「お願いッ、ランサー──!」

 

 そして、その後に続けて。

 

 聖の言う通りに、私は()()()

 




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