──ミシェル・ドーソンはフユキ・ハイアットホテル近隣のビル屋上から、冷静に状況把握に努めていた。
眼下では第八秘蹟会の下部構成員たちが避難誘導を進めている。ルーラーのフユキ・ハイアットホテル入りからこっち、周辺に配備されていた彼らはルーラーとサーヴァントたちの決裂時点で即座に行動を開始。
魔術……もとい
もっとも、人払いはルーラー・オルタのためというよりは、むしろ──
「──、──」
上空で雷の華が咲く。あれなるはアーチャーの宝具だが、霊基盤を注視している教会スタッフからサーヴァント脱落の報はない。
ランサーの突撃、そしてこのアーチャーの宝具による攻撃。どちらをも凌ぐルーラー・オルタを相手取るのに、二騎では足るまい。かくなる上は──
『令呪の影響はありましょうが──
『無論だ。悪逆に堕ちた王、余の敵手に相応しかろうよ』
サーヴァントには、サーヴァントを。
王には、王を。
尊大なるライダーは、遂にその御姿を戦場にお晒しになった。
彼一人で、ではない。それでは王と呼べるものか。
彼は一頭の馬を駆る。それは影なる馬。
影馬は当たり前のようにその蹄に空を踏み固め、中空のルーラー・オルタの元へと猛進する。
アーチャー、そしてランサーを迎え撃っていたルーラー・オルタは新手にも同様に対応する──まずは『
それらすべて、踏破。
踏み割り、蹴り砕き、頭突き抜いて
圧倒的な走破性能。速度に於いて
隕石のように地へと真っ逆さまのルーラー・オルタは、しかしこれといった傷はない。攻撃を受けた彼はあえて勢いを殺さず、地上へと向かうこととしたのだ。
やはり上空、空中戦ではいくら宙に立てるといっても、空を自由に舞える二騎相手では優位には立てないと理解した。降ろしてくれるというのならいいだろう、ビルと群衆のひしめく地上戦でその戦力を削ぐまで──
「「「オオオオオオオ──!!!」」」
「む──!?」
──判断して向かった地上に、これほどの敵戦力が
繁華街の大通り。コンクリート舗装の道路が全く見えなくなるほどの
それはライダーの騎馬と組成を同じくする、無数の魔なるものども。軍勢と呼ぶべき総数のそれらは主の下賜したエモノに群がり、その身を貪らんと牙を、爪を、その他ありとあらゆる殺傷能力を剥き出しに襲い掛かる。
これなるはライダーの使役する魔たち。王の縛鎖を恐れ、命に従う哀れなるものども。
──悪魔の軍勢と、光盾の防壁が。衝突して拮抗する。
黒蟻の群れか、どす黒いマグマの噴炎か。的確な指揮はそれらすべてを捌き切る、が。
「余を忘れたか無礼者め──!」
「ッ、────」
上空から追撃の
これまでさんざん振りかざしてきた数の優位が、今度は彼に牙を剥く。自分で考える頭を持つ軍魔は手の中に堕ちてきた獲物を貪らんと覆いつくし、ルーラー・オルタの歪んだ顔はすぐに見えなくなった。
これであの大英雄が終わるはずはない。ライダーは手綱を繰り、地上に追いついた
「認めよう、英霊ども。
彼は呼んだ。それはランサーの、アーチャーの、ライダーの真名。
三騎の猛攻に晒されながらも、裁定騎は彼らが何者かを『真名看破』し、そして──冷静に
無意味に真名を暴露したのではない。彼らはここで殺すから、せめてもの
タフムーラスの配下たる悪魔たちの攻勢は悉く『
「
決然たる言の葉と共に、彼に横溢していた魔力が特異な形を執る。
それは、輪。
サーヴァント召喚の折に見られる魔法円上の奔流にも似た、地より天へと踊る王冠の如き──
「『
「──ッ!」
──真名解放と同時、
あっという間の全方位。悪魔の軍勢も、ライダーとその乗騎も、ランサーも、アーチャーも。拡がる“王冠”の波に晒された。