「……、……?」
………………何も、変化はない。少なくとも三騎にはそう見えた。
サーヴァントたちは訝しげだ。宝具のちからが自らを駆け抜けていったにも関わらず、致命的な破壊は見られない。可視化されるほどの魔力を消費して、起こるはそよ風ばかりか?
異変が起きたのは、宝具が作用したのは、彼らではなかった。
『ライダー、使い魔が──!』
「!!」
戦場を外側から観ていたミシェルの方が気づくのは早かった。ルーラー・オルタに攻撃を加えていた悪魔たち──ライダーの使い魔もまた、攻撃の手を止め困惑している。
そんな自由を──ライダーは認めてはいなかった。
自らの王性、君臨し支配する力が弱まっている。そう把握できたのは、彼が先刻まで意のままに操っていた騎馬に振り落とされた後。
「ガ、く──!」
立ち上がるライダーに、影馬が前脚を振り下ろす。
機敏に回避し、ライダーは虚空から鈍色の鎖を呼び出す。彼の意のままに動くそれは、
「『
の叫びと共に、叛逆の乗騎へと絡みついた。
あれなるはライダー、タフムーラスの宝具。宰相シャフラースプより教わった、悪を縛り統べる魔法の鎖。
ライダーはこの宝具を持つが故に、聖杯戦争に悪魔たちを引き連れて参戦できたし、有無を言わせず命じることが出来る。……いいや、出来た。
「く、この……! 宝具の能力も、落ちて──!」
「自明のこと。貴様のそれも王ゆえの力であるなら、『
おそらく、あの宝具はコンスタンティヌス一世の絶対的な君臨の生涯を逸話として宿しているのだ、とミシェルは考えた。
コンスタンティヌス一世が産まれ育った当時分割して統治されていたローマ帝国、頂点たる正帝と副帝が東西それぞれで合計四人。その中から正当性と実力で抜きん出て、他の皇帝たちを排して唯一のローマ皇帝として君臨した絶対の王。その偉業が、『
もしもタフムーラスの『
それは王でなければ持ちえない力ではなく、王であるがゆえに必要とし、習得し行使した、彼の生涯に刻まれた彼の一部。ゆえに発動は許された。
その上でなお本来よりも弱体化している。万全のライダーであれば、乗騎を支配するのに膠着状態になることなどあり得ない。悪に対してはめっぽう強い──いっそ無体とすらいえる強制力を誇る魔法鎖は、悪性が強ければ強いほどその能力を増す特性を持つ。悪魔たちなど、ひと巻きで完全に縛り上げられるはずだ。
ライダーの乗騎にして最大戦力──
──『王冠』という概念そのものの原典。
頂に君臨するは
「直接害さないだけで、ほとんど王への特効宝具……!」
真名解放に伴って増加する魔力消費にわずかに眩暈を感じながら、ミシェルはそれ以上に悪相性にあえいだ。
令呪を発動してライダーを退避させるべきか。そう考えるも、
現在ライダーはアンリ・マユと取っ組み合っている。この状況で令呪による転移を行って、果たして影馬の使い魔はどうなるのか。
一緒に転移してくれば、ミシェルは大悪魔の
だが逆に、令呪がライダーのみを転移させたならば、アンリ・マユは野放しだ。
少なくともヤツだけでも抑え込んでくれないと、こちらからはアプローチできない。ミシェルはそう判断し、
「──無論、削いだだけで終わらせる道理もない。ライダー、貴様は念入りに殺す」
それはどうやら、ルーラー・オルタも同じだったらしい。だから状況が動く前に、更に押し込んで揺るぎない優位を獲るべく、
「────
更なる奥の手を、解禁する。