「──何故、貴様が」
そこに在るは美しい鞘。滑らかな表面に織り成す絢模様が、それだけで超一級の一品であると直感させる。
長剣を納めたままのそれを盾のように翳して聖槍を防ぎ切ったのは──栗毛の青年剣士。
「『
「余を助けた、セイバー──!」
小柄な彼は無表情のまま、背後──問い叫ぶライダーに淡々と告げる。
彼は振り返りもせず、
「貴様と貴様の軍勢抜きでは、ルーラーを止められない」
以前の交戦で友情に目覚めていたとか、実は近親者な縁で、とか。そんな温かみのある理由ではなく、在るのはただ戦場の冷たい
ルーラー・オルタの
ゆえにすっと腑に落ちるのか、王は舌打ちするとその理由を受け入れた。
「……下級どもを縛り直す。その間、アレを止めておけ」
「言われずとも──」
セイバーは鞘からそっと長剣を抜いていく。漏れ出づるは太陽に匹敵するほどの耀き。その刀身は黄金色。一目瞭然に、あのセイバーの得物は聖剣に分類される超一級品──!
なるほど、とミシェル・ドーソンは合点する。
以前、ライダーの使い魔とセイバーが小競り合いになった際、彼は剣を抜かず鞘すら見せず、外套にくるまれた鞘入りの剣という
何せこの一分にも満たない時間で、セイバーの真名は呼ばれるまでもなく明らかだ。
「アーサー王──アーサー・ペンドラゴン……! ブリテンの騎士王……!」
ブリテンに存在するとされる理想郷の名を冠した鞘。
そして、抜き放たれた黄金の長剣、星の息吹が武器のカタチを得たとしか思えない聖剣。
どちらかだけであればまだしも、両方を兼ね備えるサーヴァントなど、他に居まい。
「──『
青年剣士はぐっと剣を自らの後ろに引いた。
──まさか、聖剣もこの間合いを凌駕するというのか。投影魔術によって造り出された
「『
咆哮と共に、セイバーは剣を振ら──なかった。
「は?」
彼の引いたままの剣からは黄金の光の奔流が噴出する。ライダーの脇のあたりの地面にぶち当たるそのエネルギーを推進力としてセイバーは文字通りカッ飛び、一瞬でルーラー・オルタに肉薄した。
宝具出力によるジェット移動。急激な加速は光帯の如き軌跡の残像を描き出し、縦横無尽にルーラーを翻弄する。
十分すぎる加速をつけたセイバーが全身で回転しながら斬りかかる。『
「これなら防げない、そうだなルーラー!!」
大回転斬りの勢い余って地面に深々と聖剣をめり込ませた状態のセイバーに、ルーラー・オルタは剣を振り上げた。
「……、……調子に──」
──その背後。誰よりも何よりも迅く、“侍”が白刃煌めかせて馳す。
狙うは裁定者、その首ただ一つ。
「シッッ!!」
突きが真っすぐに奔り──
「無駄だ。
『
“侍”のサーヴァント──バーサーカーの参戦を予期していたわけではないが、そうでなくてもアサシンがいる。常に奇襲を警戒していたルーラー・オルタにまんまと飛び込んだ形なのだから、防がれるのは道理。
バーサーカーも覚悟していたか、渋い表情で笑う。
「やっぱ、三段突き……とは行かないか」
「冷静だな。バーサー、カー!!」
日本刀を止めていた『
彼もここで欲を出すことは避けたらしい。そこまでしなくても、目的は果たしたのだから。
「借りとは思うなよ、貴様ら!」
セイバー、そしてバーサーカーの攪乱は時間稼ぎとして有効に機能した。悪魔の軍勢を再支配し、更に強化を施したライダーが襲い掛かる。
姿の見えないアサシンは不在故にルーラー・オルタの意識リソースを常に奪い続け、キャスターは姿を現さずとも戦場に干渉する。
アーチャーとランサーも航空支援に回り、ここに戦線は再定義された。
ルーラー・オルタ対
マスターたちも、またいつルーラー・オルタが令呪を発動しても対応できるよう、常に気を張っている。
ミシェル・ドーソンもまた、その一人。
「こちらは何とかします。だから──」
……だが緊張状態のその最中、彼女の意識はその一時だけ戦場から遊離した。
「そちらは、
彼方、見やる先は──