Fate/second to none   作:吉田一味

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カーマイン③

 

「貴様は、()()だな」

 

「──何の、話だ」

 

 幾度目かのランサーの推進突撃。百枚単位の『我この徴にて勝てり(ラバルム)』をブチ割って肉薄する戦乙女を、ルーラー・オルタは長剣で防ぎながらそう言った。

 

 その声に宿るは確信。──これは露見しているなとランサーは判断するも、肯定する義理もないので適当に相槌つ。

 

 返す剣と光る盾の猛襲を凌ぎながら離脱する槍の乙女。

 

 足場を作って追いすがりながら、敵は尚も言葉を紡いだ。

 

「当初は錯覚かと思った。それほど貴様らは似通っている。真名を看破しても、同一の名──『ワルキューレ』としか読み取れん。おそらくは宝具すらも同一だろう。身体性も──さほど異なってはいまい。

 

 だが、(ローマ)が自死を命じたワルキューレと、貴様は別個体だ。宝具や性能ではない、もっと根幹の部分──()()からして異なる」

 

 他のサーヴァントたちの攻撃を物ともせずランサーと斬り合うルーラー・オルタ。

 

 いいや、違う。援護の勢いが目に見えて弱まっている。

 

(さては、耳を澄ませているな)

 

 ルーラー・オルタの危険性からなし崩し的に戦線を構築してはいても、サーヴァントたちは本来敵同士。ランサーが脱落するのは今は困るから援護はするけれど、いつかは脱落してもらうために情報は欲しい。だからルーラー・オルタを黙らせるまでは、しなくてもいいだろう。そう考えても不思議はない──ランサーとて、同じ状況ならばそうしただろうから。

 

 堕ちた裁定者の口は淀みなく続く。

 

「貴様以外のサーヴァントは未だ矛盾令呪により十全に動けずにいる。貴様だけだ、ランサー。一度死に、命令を完遂したことで自由を得た別個体のサーヴァント。貴様から、堕とす──」

 

 斬り結ぶルーラー・オルタの頭上。

 

 そこに、ランサーは王冠を見た。

 

「貴様、まだ力を──!」

 

 いいや、あるいはそれは光帯だったろうか。それとも天使の輪か。

 

 いずれにせよ、天より授かった冠に違いはない。ルーラー・オルタの権威を示すそれの出現は、彼の霊基性能を著しく引き上げる。サーヴァント同士の一対一ならば互角とはいかずとも、ややルーラー・オルタ有利程度で拮抗していた。それが冠が現れてからはどうだ。

 

 間一髪で防御が間に合わなければ、終わっていたかも知れない。

 

「自明のこと。王冠が敵対者の力を削ぐだけで終わるはずがなかろう」

 

 ──『威光顕す鉄王冠(コーローナ・フェッレア)』の本領。他の王の力を削減し、()()()()()()()()()

 

 ルーラー・オルタの一振りは、野球のボールか何かのようにランサーを吹き飛ばした。飛行宝具による制動も間に合わず、勢いよく背後のビルに突き刺さって瓦礫をまき散らす。神秘で構築されたサーヴァントはあの程度の衝突でやられはしないが、鉄とコンクリートからなる現代建造物はそうもいかない。

 

 亀裂が、ゆっくりと衝突ビルに走ってゆく。建材が濁流となって地面に降り注ぎ、轟音を奏でるがさほど目立ちはしない。

 

 なにせすでに騒乱は極限値。

 

 フユキ・ハイアットホテルなどは完全に倒壊し、周辺一帯に被害をまき散らしている。駅前の繁華街は火の海だ。いまさら追加の瓦礫の山が出来たところで、文句を言うのは潰れた自動車のクラクションくらいのもの。泣き喚く民草の嘆きなど誰にも届きはしない。

 

 ──新都は今や、地獄だった。

 




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