「貴様は、
「──何の、話だ」
幾度目かのランサーの推進突撃。百枚単位の『
その声に宿るは確信。──これは露見しているなとランサーは判断するも、肯定する義理もないので適当に相槌つ。
返す剣と光る盾の猛襲を凌ぎながら離脱する槍の乙女。
足場を作って追いすがりながら、敵は尚も言葉を紡いだ。
「当初は錯覚かと思った。それほど貴様らは似通っている。真名を看破しても、同一の名──『ワルキューレ』としか読み取れん。おそらくは宝具すらも同一だろう。身体性も──さほど異なってはいまい。
だが、
他のサーヴァントたちの攻撃を物ともせずランサーと斬り合うルーラー・オルタ。
いいや、違う。援護の勢いが目に見えて弱まっている。
(さては、耳を澄ませているな)
ルーラー・オルタの危険性からなし崩し的に戦線を構築してはいても、サーヴァントたちは本来敵同士。ランサーが脱落するのは今は困るから援護はするけれど、いつかは脱落してもらうために情報は欲しい。だからルーラー・オルタを黙らせるまでは、しなくてもいいだろう。そう考えても不思議はない──ランサーとて、同じ状況ならばそうしただろうから。
堕ちた裁定者の口は淀みなく続く。
「貴様以外のサーヴァントは未だ矛盾令呪により十全に動けずにいる。貴様だけだ、ランサー。一度死に、命令を完遂したことで自由を得た別個体のサーヴァント。貴様から、堕とす──」
斬り結ぶルーラー・オルタの頭上。
そこに、ランサーは王冠を見た。
「貴様、まだ力を──!」
いいや、あるいはそれは光帯だったろうか。それとも天使の輪か。
いずれにせよ、天より授かった冠に違いはない。ルーラー・オルタの権威を示すそれの出現は、彼の霊基性能を著しく引き上げる。サーヴァント同士の一対一ならば互角とはいかずとも、ややルーラー・オルタ有利程度で拮抗していた。それが冠が現れてからはどうだ。
間一髪で防御が間に合わなければ、終わっていたかも知れない。
「自明のこと。王冠が敵対者の力を削ぐだけで終わるはずがなかろう」
──『
ルーラー・オルタの一振りは、野球のボールか何かのようにランサーを吹き飛ばした。飛行宝具による制動も間に合わず、勢いよく背後のビルに突き刺さって瓦礫をまき散らす。神秘で構築されたサーヴァントはあの程度の衝突でやられはしないが、鉄とコンクリートからなる現代建造物はそうもいかない。
亀裂が、ゆっくりと衝突ビルに走ってゆく。建材が濁流となって地面に降り注ぎ、轟音を奏でるがさほど目立ちはしない。
なにせすでに騒乱は極限値。
フユキ・ハイアットホテルなどは完全に倒壊し、周辺一帯に被害をまき散らしている。駅前の繁華街は火の海だ。いまさら追加の瓦礫の山が出来たところで、文句を言うのは潰れた自動車のクラクションくらいのもの。泣き喚く民草の嘆きなど誰にも届きはしない。
──新都は今や、地獄だった。