天より一人、惨火を睥睨するアーチャー。
──もう、限界だった。
既に彼の真名は露呈している。情報や戦力を、ルーラー・オルタ戦後を見据えて温存なんて皮算用は、口にするのも憚られるほどの鉄火場だ。もはや参戦しているサーヴァント全騎でかかっても負ける公算の方が高くなってきたのだから。
だから、彼は我慢しないことにした。
『マスター、宝具を使う。魔力消費を覚悟して欲しい』
『アーチャー、それは──』
一方的に告げて返事は待たない。パスから魔力を汲み上げて二つある心臓の一方へと注ぎ込む。それと並行して見えざる翼を駆ると、あるサーヴァントのもとへと一直線に急行した。
「使い魔を一時的に消すことは可能か、ライダー」
「な──にを、する気だ。アーチャー」
「簡潔に答えろ、時間が無い」
悪魔を指揮して『
「────可能だ。『
限定的とはいえ素直な情報開示を実現させた。アーチャーは十分だとばかりに頷くと、
「そう、か。…………機が来たら、即座に戻らせろ」
「アーチャー、貴様、何を──」
ライダーの疑問にも、念話で未だ会話を求めるマスターにも、双方に言葉を返さずにアーチャーは飛翔する。ルーラー・オルタの元へ、ではない。
目的地はこの戦場の中心。
急がねばならない。こんな中途半端な位置に滞空している意図は読まれずとも、不審がられれば位置取りすら難しくなる。
それでも、一度だけ。大きく深呼吸すると炎の匂いがした──戦場の匂いは、彼の生きた時代のそれとは異なるものだ、とアーチャーは思う。これも、郷愁なのだろうか。
すべてを腹に収めて、朗々とアーチャーは告げる。
「──ここに、私、ベンジャミン・フランクリンただ個人のもとに、この宣言を行うことを心苦しく思う。どうかお許しいただきたい。
ここはフィラデルフィアでなく、今は1776年でなく、各地より集った代議員55名は居ない」
これは彼のみの功績に非ず。彼と同様の政治的プロセスを経て集った各植民地の代表たちによる、極めて民主的に採決された歴史的文書。
正しく発動しようと思ったなら、あの日あの場所に居た署名者たち全員が揃うことが不可欠となる。そんなことはあり得ず、故にこの宝具はあの決意をなぞるだけの紛い物。
「……されど、ここに記されたるは正しきことと私は信ずる。それゆえ、ここに再び宣言する!」
そこに神は亡く、神秘も無く、王による支配も存在しない。
そこにあるのは、その時代に至るまでの人間が積み上げてきた問答。
誰もに認められるべき権利とは、侵すべからざるものとは、何ぞや。
「“
その宝具の名は『