Fate/second to none   作:吉田一味

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カーマイン⑧

 

 ──大空洞の戦い。あるいは空無き果ての決戦。

 

 死徒フェリシア=エヴリン・モンデンフェルトと、第四次聖杯戦争のキャスターによって繰り広げられた死闘は、おおよそキャスター優勢で運んでいた。

 

 いくらフェリシアが千年を(けみ)した上級死徒と言えど、頼みの『赫世異産(クオリアレッド)』を使えない状況。しかも膨大な魔力をルーラー・オルタに消費され続ければ、両腕をもがれたに等しいハンディキャップ。

 

 対するキャスター、その宝具『十を指折れ、扁桃の導(シェケディーム)』はすでに三度の発動を経て、いよいよ最終段階に至ったのはフェリシアにも見て取れる。

 

 ──次が、最後。

 

「──『十を指折れ、扁桃の導(シェケディーム)(アサラー)』──」

 

 真名解放の言葉と共に、彼の掲げる長杖から魔力の波導が拡散し──そして、それきり何も起こらない。

 

「──?」

 

「…………『十を指折れ、扁桃の導(シェケディーム)』は、一度限りの災厄十種を順繰りに発動する宝具です。番号を飛ばしたり、同じ番号を複数回発動したり、そういうことは出来ません」

 

 唐突に、キャスターは自らの宝具の解説を始める。

 

 おろした杖の石突がカツンと音を立てた。

 

「ボクの宝具であってボクの宝具ではないですから。これは主の定める災い。ボクはそれを地へ導くだけの観測手(スポッター)なんです」

 

「……だから、何だ」

 

「だから、この十番目──何が起こるか、ボクにも読めないんですよ。この『被災者の最も大事なものを奪う』災いが、どう作用するかは」

 

「────」

 

 フェリシアは愕然として自らの額に右手の人差し指と中指、二本を当てる。何かを思い出すような、確かめるようなポーズの彼女の顔が、見る見るうちに蒼褪めてゆく。

 

「そ、そんな──、まさか──!」

 

 胸元を掻き抱く、死相の麗嬢。

 

 そこからは、心臓でも潰れたかのように、濁った赫い液体が止めどなく。

 

「その様子だと、予想通りだったようで何よりです」

 

「貴様、貴様──私の、わたしの、『赫世異産(クオリアレッド)』を……ッ!!」

 

「驚きましたよ。貴女、自分の命よりも何よりも、その汚らしい血の塊が大事だったんですね」

 

「────」

 

 その揶揄には、キャスターの純粋な感慨だけがあった。彼は心底からフェリシアの悲願を蔑んでいた。

 

 フェリシアも侮蔑(それ)は咎めない。彼女の完成させようとしていた『赫世異産(クオリアレッド)』は人理と決して相容れない。サーヴァントとして召喚された英霊たちが悪し様に言ったところで、何を憤ることがあろうか。むしろ“その通りだ”と胸を張ってこその死徒の業。

 

 彼女が憤死しかけたのは、彼奴が宝具の対象を絞り込みきれていなかったこと。

 

 私が、この私ともあろうものが、命なんかのために、渇望する世界の到来を差し出す程度の器だと思われていたこと。

 

 それが何より赦せない。

 

 こいつはここで、必ず殺す──そう決意した。

 

「貴様ァァァアアア!!」

 

「ああ、その眼です。やっと貴女もボクを憎悪しましたね。──それで対等です。そうでなくては、終わらせる甲斐がない」

 

 ──そんな決意。とっくの昔に、目前の相手も決めていることなど、露とも思わずに。

 




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