「な──元に戻ってるって、そんな……! じゃあシラフでこんな、大暴れしてるって事……!? そんなことするはず──」
「……いや、やるだろうな、それは。元々、ホテルに呼び出した俺たちを斬る気で──つまりは抵抗されることも織り込み済みで暴れようとしてたヤツだ。隠匿なんざ考えていない。戦る時は思い切り──てのは納得できる」
解除の契機はアーチャーの宝具だ、と言われて私の口から「あっ」と叫びが漏れる。
ルーラーが
「けど、だったらどうしてここで暴れる……! 好き勝手した死徒、フェリシアを討ちに行くべきだろ……!」
戦場から距離を置いている聖の言葉を、キャスターが伝言めいてルーラーに伝える。それを受けて、戦場の中心──堕ちていたはずの大帝は観念したように瞠目した。
「──確信されているのあらば、欺騙する意味もない、か」
ルーラーがそう呟くと、あっさりと彼の容姿が戻る。瞳は金から青に、纏う装飾はさほど華美ではなく。私たちの目前に初めて姿を現した時と同じ姿そのまま。
以前、廃サナトリウムで聖が行使した幻術の類いだろうか。私には詳しいところは判らないけれど、問題は手段よりも動機。何故そんなことをしていたのか──それが掴めない不気味さは、塗り替えられて暴れていた時の比じゃない。
彼は嘆息すると、
「敵の国庫で別の敵を潰せるのなら、やらない王がどこに居る」
なんて、至極当然といった顔で言ってのけた。
「
徹底的に自分の利だけを追求して、すべてを敵に回すことを厭わないエゴの塊。誰にも負けないと固く信じていなければ歩もうなどと思わない道を一切躊躇せず踏破せんとする
──その時のルーラー、コンスタンティヌス一世の瞳を、私は一生忘れないだろう。
「──だが、露見したならば目論見も破談だ。もう要らん、
彼の瞳に、感情らしきものは何ひとつなかった。心底から無関心な、命を命とも思わず
人類史に刻まれた英霊たちは、そんな目を向けられれば憤激するらしかった。それ以上口を開くなとばかりに、不快な話は終わりだと告げる代わりに、戦闘が再開された。
けれど、私は──無理だった。
あんなの、恐ろしい。
もう一度あの瞳が刺さったらと想像するだけで、力が抜けて立てなくなりそう。
きっと、普通の人間なら皆そうだと思う。燃える市街地で“ふざけんな”と言わんばかりにドンパチやっている連中は、どこかネジが外れているんだと思い知らされる。
そんなバカが────ここに、もう一人居た。
「ムカつくなァ。言われっぱなしは腹が立つぜ。だけど、それ以上に許せない理由が
覆う手の下で、ぶつぶつと口が忙しなく動く。言葉に反して、表情は判りやすい“怒”の表情って訳ではなかった。
思考を巡らせているときの、表面張力のように決壊寸前の、何度も見た聖の表情。
こういう顔の彼は、いつも決まって無茶を言い出す。
「だったら──やる価値はある。俺もようやっと覚悟が出来た」
だって、ほら──その瞳。
顔を上げて、彼方の獲物を真っすぐ睨む、ぞくっとするくらい力強い視線。
「覚悟って…………なんの」
「
……止まるワケないって感じ。
「ルーラーは──俺が殺す」
彼は宣言して、どこからか一振りの長剣を抜き放った。
赤錆だらけの鉄剣を。