作戦決行、少し前。
──必要なのは大きさ、それと俺を傷つけずに体内に収容してくれる性質だ。
──ルーラーにチンタラ歩いて近付いたら命がいくつあっても足りやしない。距離詰めるのに盾が要るけど、その盾がデカすぎて近付けないんじゃ話にならねえ。
──呑まれて中から近付く、そのために──
「──『
「正気で英霊に挑めるかってんだ。口より足動かせ、置いてくぞ」
「わっ、待ってってば!」
目標ポイントはフユキ大橋……とだけ聞けばすぐ近くだが、大暴れしているルーラーに巻き込まれないよう、かつ発見されないよう迂回しつつ、ランサーたちの誘導よりも先に着いて準備しておかなければならないのだから楽な移動じゃない。
私はそこから更に橋を渡り切った先で、見つからないように隠れる工程も
聖は
「いやこんなん作戦じゃないし。自殺行為そのものだって」
悠長に話しているヒマなどこれっぽっちもないのだが、どうしても物申したくなるのは私のせいじゃないと思いたい。
だって、無茶だし。無茶過ぎるし。
「『ヨナ書』はあれ、ヨナ様は預言者だから呑み込まれても無事だっただけだから。出られたのも悔い改めて主の命を遂行すると誓ったからでしょ。聖、まさか自分のことを預言者だって思ってるの? 自惚れすぎじゃない?」
「まさか。そもそも俺は信教はないよ。呑まれる部分、内部での保全はキャスターに任せてる。何でも『
預言者ではない椎名聖を呑み込み、喰らわずにおいておく理由は本来ない。それをキャスターの改変能力で無理やり捻じ曲げるということか。聞いている感じ、そう長い期間でもないならイケる……か?
閑散とした通りのど真ん中を突っ切る彼に、必死でついていく。かなりのペースだけれど、それでも私が付いてこれる程度に抑えてくれているのは察せられる。本気なら私のことなんかブッちぎって、とっくに目標地点に着いてるだろう。
「吐き出しも心配いらない、
そう語る聖の真意は判らないけれど、その横顔を見て思い知る。彼の中には既に確固とした作戦、筋道の流れが出来ている。
私の心配など、どれだけあっても結局のところはその計画を取り下げさせるどころか、揺るがすこともできないくらい
……そう思いはしても、けれど、やっぱり寂しい。
「──……同盟なのに。私は遠くで、見てるだけ?」
「それがマスターの役目で、仕事だろ。俺はそれを放り出してる側さ」
聖が立ち止まる。
フユキ大橋の車道は、向こうからこっちまで完全に見通せる無人状態。英霊たちの激突の余波は、フユキ中に恐怖をまき散らしている。
もうすぐ、ここも戦火に巻き込まれるだろう。聖が「巨大魚を上から落としてブツケんのにビルあったら邪魔だろ。開けた場所でやる」と決めたから。幾度も利用したこの橋は、きっと取り返しのつかない破壊に晒される。
けれど、ここで止めなければ。ルーラーはフユキ全体を焼け野原にする。
きっと、やる。
それは誰かが止めねばならないことで、
「……気を付けてね。死なないで、…………」
聖がルーラー討伐を決意したのは、きっと私と同じ理由からじゃない。けれど、私が託せる人間はそう多くなくて、そんな人に私はありきたりな言葉しか手向けられない。
聖は
アーチと立てる硬い足音が、無機質に響く。
カン。カン。カン。カン……。