眼球が裂けたかと思った。
「ッッ──なに、今の……!?」
作戦開始はもうすぐの、ルーラーと誰かの交戦の音がさほど遠くないどこかから聞こえてくる時のこと。避難済みの
視界がボヤける──いいや、ブレる。私の目は、今ではなく
裁定者の瞳が鋭く光る。
一太刀目は縦に。肩から入って、左半身を斬り落とす。
これは夢や幻覚じゃない。だって、血腥さは本物だ────私はあんな、見たこともない、美しいくらい見事に切り分けられた腸と骨の断面なんて。
事切れた椎名聖の破片がバラバラと零れ落ちてゆく。その凄惨な結末────天地が逆の末期の瞳とピタリ目が合ってしまったのが、とどめ。
「あ、あぁぁぁあ、ああああぁぁ──ぁぁぁぁぁああああああ!!!!」
見えているもの全てから逃れたくて、私は一人、意識を失った。
……失うと、私は一人じゃない。
「ぁ、ぁぁああ、…………あ」
そこはいつもの、廃墟の夢。
意識を失う直前の現実の幻視を
常日頃とはキレイに逆で、悪夢ではなく悪い現実から飛び
驚きはしても、少しずつ落ち着く余地はある。
──それに。自分よりももっとテンパってる人が居ると、落ち着くって言うじゃない?
「なぜ今なんだ、なぜ今
いつでもクールで、上から目線だけれど博識で、言葉を荒らげることなんて無かったのに。
身を起こした私のことを見向きもせずに、ベルはガリガリと頭を掻きむしりながら、うろうろと廃墟を歩き回っている。
その美しい、白とも銀ともつかぬ長髪に見覚えがあるけれど、生憎とそれどころではないから一旦保留しておく。それより今は今視たものの話を。
「──ベル、今のって……」
「幻覚だ、まやかしだ! お前が気にすることなど何もない! そのまま黙ってそこで寝ていろ、出来ることなどあるものか!」
吐き捨てたその言葉は、あまりにあからさまな嘘っぱち。
私の視た光景がきっと真実と成るのだと、それを覆す方法は未だあるのだと。
……私のことが心配だから、そんなことはしないで欲しいと。
否定するからこそ伝わる、真逆の言葉。
「…………ベル」
「何回も言わせるな、さっさと目を覚まして──」
「ベル」
目を合わせようとしない夢の守護者を、ただ呼ぶ。
何をすれば
「ベル。お願い」
私に出来ることは、一つだけ。教えてもらえるまで、呼びかけて頼み込むことだけ。…………って、これじゃ二つかな。
私の決意が固いと悟ったのか、ベルは渋々といった様子で正対した。
「──助けても、得るものなどないとしても」
「うん」
「この選択が、お前のためにならなくても、か」
「うん」
──それでも、あの光景を現実に見るくらいならば。
「お願い。力を貸して、ベル」
ベルは言葉にならない呻き声をあげて、
「………………今回だけだぞ」
長い髪をぐしゃぐしゃにして、人形のように整った顔をもっとくしゃくしゃにしてから、長い沈黙のあとにそう言った。
心底嫌そうだった。