「やっ、た!!」
状況が目まぐるしすぎて、何が起きたか半分も判らなかった。
私の身に何が起こったかはさて置き、『オペレーション・マトリョーシカ』はまさに佳境だった。
『
ルーラーの斬撃も、どういう方法かよく判らないけれど多分魔術で回避した彼は、その剣を心臓の辺りへと真っすぐ突き入れた。
あれはどこからどう見ても致命傷。私のランサー、ワルキューレの復活のような奇跡でもなければ助からない。そしてルーラーのマスター、あの死徒の女は令呪を三画とも使ったって聞くし、もうどうにも──────
「…………あ、れ? 光は、まだ?」
ランサーが自害させられかけた時は、致命傷を負った直後からキラキラしていた。サーヴァントの身体──霊基が崩壊して魔力が光のかたちで散逸していくアレが、ルーラーには未だ観測できない。
復活できたランサーが特殊だっただけで、あのいかにも消滅しますよってキラキラは、普通は無いものなのだろうか? 消えるサーヴァントは本当はぱって一瞬で消えるの?
もちろん。
***
強く、ルーラーが
「な──」
「見事、だ。椎名聖……」
それはとても霊核を破壊され、消滅間際なサーヴァントが出せる
即ち、霊核を破壊したと思ったのは錯覚だったか。
もしくは霊核を破壊されても消滅しないか。
どちらであっても状況は最悪──を遥か通り越して、
『一念三千』は魔力的にも精神的にも連発できないうえに、“捕まった状態”から脱するというシチュエーションとの相性は最悪だ。あれは
他に切れそうな、有効そうな
万策尽きた。打つ手は、ない。
せめて出来ることは、あとは口を動かすくらい。どうにもならないなら、せめて理屈で納得したい──そういう感情が働いた。
「何でだ──
「消えるとも。だが負けん。勝つまでは消えん──!」
盾が存在を主張するように、いっとう強く輝いている。霊核を貫く前、『オペレーション・マトリョーシカ』決行時はあそこまでではなかった。その変化。
「ラバルム──そいつの、せいか……ッ!」
コンスタンティヌス一世の受けた啓示は”この徴にて勝利せよ”というもの。であれば、キー・ローある限り、彼に敗北はあり得ない──
宝具『
では、何故?
──単純なこと。『大帝特権』はこういうトキのためにあるのだ、なんてルーラーはわざわざ説明しないだけ。
崩壊しかけの霊基で足りない出力は『神明裁決』の残余令呪で補う。いざという時のために残しておいたものだが、アーチャーの『
どうせ、手を打たなければもろともに消えて失せてしまうもの。だったら余命を稼ぐために使って何が悪い。
そうやって創った僅かばかりの時間は、己を打倒しおおせた勇士の命を手向けに貰っていくために使うのだ──!
「ふざけんな──こんな、こんなところで……こんな終わり方をするために、生きてきた訳じゃ──」
「何を恐れる。貴様は幾度も、幾十度も、死を経てきたのだろう。今生くらいは、死にゆく大帝への供をせよ──!」
剣先は天頂を指す。
あれが地と出会えば、それで終わり。
今度こそはそのものズバリ本物の悲鳴が上がって、発砲音は『
一枚破るのにこれでは、あちこちに輝く盾すべて砕き尽くすのにどれだけ掛かるか知れたものではない。
──間に合わないな、と聖の脳の冷静な
他のサーヴァントはやる気がない。
ルーラーの現界維持は一時凌ぎで、残る全員でかかればすぐに始末できる。そんな死に体が、面倒なキャスターのマスターを始末してくれるのならば願ったり。致命傷を負ってなりふり構わなくなった英霊に手を出して火傷するなど馬鹿馬鹿しい。
殺す理由はあれど助ける理由などない。
ただ一騎を除いて。
「私、の────」
剣より早く、銃弾より早く。
魔銀の槍すらかなぐり捨てて、ランサーが戦場に舞い降りた。
「