三度の生を戦乙女として全うした魂が授かった、転生宝具である。
一騎目のスヴァーヴァとしての霊基が崩壊すればニ騎目のシグルーンが、それが退去すれば三騎目のカーラが、順番に召喚され現界する。霊核が破壊されることで発動する、極めて特異な宝具だ。
実質的に命のストックとなる有用な宝具を、
一つにはアドバンテージ維持のため。
死んでも復活できる特性を最大限に活かすには、その情報を知られないことが必須条件。死んだフリをして退場し奇襲することを考えたら、マスターが本気で死んだと思い込んでいた方が都合は良い。敵を欺くにはまず味方よりせよ──心情はどうであれ、だ。
そして二つ目の──そして最大の理由。
発動するか、
この宝具はランサーの感情に呼応して発動率が変動する。より感情的になればなるほど高まるが、どこまで突き詰めても精神性に依存するし、絶対に発動する保証はない。本来は。
100%まで引き上げられるのは、彼女の愛した男性が居る時だけ。
椎名聖が当代のヘルギだと知らなかったランサー自身でさえも、宝具不発の可能性を捨てきれずにいた。
『
……
彼女が求めたのは、椎名聖。
召喚に応じて、聖杯を求めて、戦って──命を散らしさえした、愛するひと。
「──────」
ふたりは、固く抱き合う。
話したいことは山ほどにある。これまでのコトだけでも、過ごしてきたのと同じくらいの時間が必要なくらいだ。これからのことなんてどれだけ必要か想像もつかない。
けれど、今だけは。
互いに捧げる愛を、ただ確かめたかった──
***
──そして、その感動的であろう光景を目の当たりにして、私はとうとう思い知る。
「────私じゃ、なかったんだね」
ランサーが聖杯にかける願い。
椎名聖が同盟を申し入れてきた理由。
聖の隠していた
ランサーが奇跡みたいに蘇った理由。彼が彼女の真名を知っていたコト。
すべてが繋がって、私の無価値さを突きつけ、嘲って責め立てる。
「聖の、理由の全部は──ランサー………………」
ヘルギってひとは、ワルキューレと同じ時代・地域のひと。ううん、もっと近く、親密な──きっと、愛する人。あの夢で見た彼の生まれ変わりが、今を生きる椎名聖で、彼も彼女をきっと探し求めていたんだってあのハグを見れば誰だって判る。
ふたりは愛し合っている。
ふたりに必要なのはお互いのみ。
その間に、私が居れば邪魔なだけ。
「はは……なんだ、無価値どころじゃないじゃないか」
居ても居なくても同じ、ですらない。想い合うふたりに挟まって、迷惑をかけて、それを自覚すらせず思い上がって。
なんて、自意識過剰。
場違いさに底はないんだって初めて知ったよ。
考えてみれば当たり前。聖と私なんて聖杯戦争でもなければ接点は皆無だったんだ。それを私なんかを気にかけて、同盟を提案してきたなんて一瞬でも考える方がどうかしている。
舞い上がった私は、さぞや鬱陶しかったことだろう。皆んなさっさと消えて欲しいと思っていたに違いない。それを隠して優しくして、助けたりなんかして……。
「良え恰好しい。放っておけよ……」
この期に及んで責めるみたいな言葉。
きっと誰にも届かなかったのはせめてもの救い、なんだろう。