「──おい!! てめぇら、もう一戦おっ始めるのはいいけどよ! マスターは放っておいていいのか!?」
「────」
はっとしたのは、多分……私だけではなかった。
「アサシンの使い魔が何匹居るか知れたもんじゃないってのに、よく戦る気になるな! えェ、おい!」
言われるまで気づかなかったけれど、ここまで戦場に出ているマスターなんて私たちくらいのものだろう。まあ偉そうなことを言うつもりはなく、私たちはルーラーに呼び出された先で巻き込まれたクチだから、自ら望んでではないけれど──
他の陣営からすれば、長時間マスターとサーヴァントが引き離されたに等しい状況なのは事実だ。
サーヴァントたちの意識が散った、気がした。目前の私たちではなく、
……やがて、一騎、また一騎とその場から去ってゆく。
バーサーカーが烏の鳴き声と黒羽を残して。
アーチャーは紫電を弾けさせて。
セイバーは目立つこともせず、静かに。
そして最後のライダーは──何故か、私を一瞥してから。登場したときの
後に残されたのは、私たちだけ。
「……何とか、なった?」
聖がフウ、と吐息を漏らす。さすがの彼にも緊張があったのか、わずかに汗をかいていた。
「だろう、な。まあ言わずともあそこから本気でもう一戦構えようってことは無かったと思うが──」
「え、バリバリ戦る気っぽくなかった?」
「そりゃあ
「────あ……ッ」
極限状態、だったんだろう。
刻一刻と移り変わる状況、そのすべての曲面で誰かの命が天秤にかけられ続けてて。意識がガーッと一点に集中するのは生存のための必然で、聖の言葉でそれが広く遠くに向けられて。
被害が目に入ってくる。
主戦場となっていた川向こうは赫々たる惨状。サーヴァント同士の激突の余波は、現代軍の市街戦もかくやの破壊をまき散らしていた。サイレンが重なり過ぎて、どれが救急車でパトカーで消防車か判別がつかない。倒壊の粉塵と火災の黒煙は、もうもうと夜空の黒と溶けて境界線を不確かにする。
十年前のフユキ大火災が、脳裏にリフレインした。
私がすべてを喪ったあの火。
トラウマそのもののはず、なのに。どうしてか……私はそこまでショックを受けていない。
何かが違うのだろうか。疑問はあれど記憶が無いから比較は不可能で、少なくとも今考えることではないから脇に置いておく。
それよりも、今は。
「ここも被害域です。戦闘が終わった以上、すぐに救難活動が押し寄せてくるでしょう」
「そう、だな。さっさと──」
ガッ。
床に何かの落ちる音で振り返ると、聖が荒い息で膝をついていた。俯いて表情の見えない顔、汗は滝のよう。触れずとも震えているのも判るほど。見るからに何か問題発生だ……それも深刻な。
「ちょっ……どうしたの、聖!」
「……あー、もう少し……保つと思ったん、だが──」
それ以上の言葉を繋ぐことすらできず。碌に受け身も取れないまま。
椎名聖は前のめりに倒れ伏した。
「──聖ッッ!!」「ヘルギ!!」