それはそうと、眠り云々で思ったコト。
「ランサーは、昨日からずっと、看病を……?」
「ええ、当然です。サーヴァントに睡眠や食事は不要ですから。そうでなくともワルキューレは人間より稼働時間も長いですし、これくらいは──」
確かに、パッと見どころか穴が開きそうなほどじっくり凝視しても、徹夜によって彼女の神秘的な美が損なわれているようには見られない。相変わらず見惚れてしまう美貌だけれど、これまではクールな無感情さの人形的な美しさだったのが、今朝はどことなく生き生きとして可愛らしく見える。
今もどことなく自慢げだったのが、はたと思い至ったらしい。
「あ、み、見張りもしっかりしていますので、ご安心を。お屋敷の結界を増強しましたので、不埒者は侵入するだけでローストです」
慌てたからか、ランサーらしからぬ語彙が飛び出してクスッとしてしまう。
「ローストって。そんな、美味しそうに表現されても食べられないでしょ」
私が、多分変な顔をしていたのは別のこと。
思い詰めているランサーが一睡もせず、昨夜から気を張ったままというのはいくらサーヴァントでも早晩限界を迎えるのではないか、ということ。“どうせ”と言ってしまうと人聞きが悪いけれど、聖が目覚めるのはあと六十時間ほど先になるのだから、それまでは適度に休み休み過ごした方が、いいのではないかと思うのだ。
あまり考えたくないことだけれど、目覚めてからが本番だろうし。
「朝御飯、食べよう。キャスターも呼んで三人だけど、一緒に」
「それは──……」
ランサーは、やはり渋った。いま彼女が何を考えているかは察しが付く。ずっとソレと知らないまま、同盟相手とはいえ油断できない存在として少なからぬ敵意を向けていたであろうランサー。罪悪感もあるのかもしれない。そんな彼女が、こんな状態の聖のもとを離れたくない心情は痛いほど理解できた。
けれど、それで聖が復活したら。ランサーの緊張の糸が切れてしまうのでは?
そんなことにはさせない。
私の役割がやっと判った。
私は
「聖が起きてきたとき、ちゃんとして居ないと。…………好きな人に会うなら、きちんとして居たいじゃない?」
「…………、マスター」
私の言葉に、彼女は硬かった表情をほんの僅か、綻ばせたように見えた。
──私は、どうだったろう。
──ちゃんと、上手くなくても、それっぽく。
──