なるほど、と思う。
かなり荒唐無稽な話だったが、これがすべて事実ならばミシェル・ドーソンという人間が臙条美青に執着するのも肯けた。それまで魔術や聖堂教会、死徒のことなど知らず生きてきた幼き日のミシェル・ドーソン。彼女が直面した“災厄”を単独で見事解決してみせたのならば、それはもうヒーローと称するにふさわしい、か。憧れて同じ道を歩むことを選ぶのも、その道が後ろ暗く血腥いことを除けば、まあ順当。
そして、私への執着の理由も、なんとなく推し量れるというもの。
私とミシェルは同じ人種。つまり、臙条美青に救われたという一点で。
異なるのは──その後の関与密度。
死徒の暴虐に巻き込まれ、代行者としての臙条美青に救われ、彼女の後を追って代行者になったミシェル・ドーソン。
未曽有の大災害の渦中から臙条美青に救助され、彼女の過去を知らされず、魔術や神秘から遠ざけられて育てられた、
「私が代行者としてあの方の情報にアクセスできるようになった時点で、あの方は代行者を引退していました。現住所はフユキ、会いに行くことを考えましたが──この街への代行者の立入は、厳重に管理されておりましたから」
……フユキ聖杯戦争。
今まさに開催されている、この街を舞台とした魔術儀式。アメリカ合衆国と聖堂教会と、他にも魔術協会だとか何だとか、あれやこれや複数組織が注視している一大イベント。
代行者という存在が魔術世界においてどれくらいの地位とか影響力があるのかは知らないけれど、この街──フユキはとても重要で、刺激するのはマズいみたいな政治的判断が求められるっぽい。
──こうして聖杯戦争が始まるまでは、ご対面できる機会がございませんでしたので──
大聖堂の初対面。ミシェルが嬉しそうにそう言っていたのを思い出す。
「聖杯戦争に参加することで、この街に──?」
ミシェル・ドーソンはそっと目を閉じる。その姿は、祈る聖女のように美しく──
「ええ、はい。第五次聖杯戦争のマスターたち、協会の参加枠に入ればフユキ入りは叶います。そうすれば貴女とこうしてお会いすることも──
……そして、
そのために、私はこの街にやってきた」
「──────」
きっぱりと言い切った言葉は、私に驚きのない衝撃を与えたのだった。
そう、か。
やっぱりそうなるか。
──教会の代行者ミシェル・ドーソンも容易く訪れることの出来ない、この街。
──『第一次フユキ大火』から私を救ってくれた、あの人。
──そんな人間が、片腕を失い、屋敷の敷地から一歩も出ないくらい弱り果てていたということ。
「…………そ、っか」
だから、驚きはない。
ミシェルの言葉がすべて真実かどうかなんて関係なく、臙条
……ぱち、ぱち、ぱち。
まばらな音は、柔らかな拍手。
その主は、ライダー。講談か何かを聞いた客のように、大仰に。どちらかと言えばかったるそうに。
「いやはや、長かった。実に長い話、ご苦労だった、マスター。大変興味深かったよ」
「…………、貴方が私に興味があるとは思いませんでした、ライダー」
「フ、まあそうだな。実のところ余に関係があるのは、ここからなのだ」
ライダーの目線が、こちらへ向く。
昆虫が“これは食べられるものか?”と見分する無感情の瞳。
「代行者・臙条美青。その忘れ形見、臙条叶──」
「貴様は