Fate/second to none   作:吉田一味

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誰も⑤

 

「ライダー……!」

 

 私の言葉は当然のように無視されるけれど、彼のマスターであるミシェルの言葉であれば、と期待する。

 

 けれど。

 

「止めるのか、マスター。それでいいのか。それが貴女の決断でいいのか。知りたいのではなかったのか。臙条美青が何をしたのか、確かめたいと思ったからこの街へ来たのでは無かったのか! 貴様の願いは、その程度のものだったのか!! マスター!!」

 

「…………ッ」

 

 従者として喚ばれようとも、彼は王。

 

 上に立つ者の覇気が、動こうとしたシスターを圧する。蛇に睨まれた蛙のように痺れ、動けなくなったのをみて片が付いたと考えたか、彼は立ち上がり歩いてゆく──ずっと、最初からそこにあった魔法円へと。

 

 連行されていく私も、行先は同じだ。

 

「く、このッ」

 

 ぶっちゃけた話、とっくの昔に理解していた。抵抗なんて、無意味だって。

 

 銃を取り上げられ、両脇を神秘の存在たるライダーの使い魔(あくま)に抱えられてしまえば、ひ弱な私に出来ることなんてない。

 

誰も気づかない。

 

急速に接近する物体は二つ。

 

木立など無いかのように優美に飛翔する(いち)

 

それに追従する、激しいエンジン音を響かせる地上移動物が(いち)

 

誰も気づかない。

 

 ……ライダーの詰問だって、正直信じちゃいないのだ。

 

 私がそんな、狙う価値のあるほど大層なものに、どうしても思えない。“そんなわけないだろ”が率直な感想。

 

 そもそもそう思っていたからこそ、私は無抵抗でライダーに拉致されることを選んだのだから。

 

 令呪も念話も一切使用せず、唯々諾々とリムジンに乗り込み、ザクロジュースを飲んで、まんまと眠らされて。まともな生存本能の備わった人ならば正気を疑うだろうことは、理解している。

 

 理解しているけれど、実感できない。

 

 良くて死ぬだけ。それならば、別に構わなかった。

 

 そりゃあ、出来れば意味のある死に方をしたい。したかったよ。だから悪魔から逃げて、ランサーと契約して、聖と同盟して──誰かの役に立てて死ぬなんて、私にしては上等すぎる末路と憧れた。

 

 ──こんな、約束された二人の間に挟まる邪魔ものになるなんて。想像もしていなかったんだから許して欲しい、なんて。なんて──傲慢。

 

 謝れば、赦されるのか。

 

 罪は罪ではないのか。

 

 ──私は、あの夜にさっさと、死ぬべきでは、なかったのか。

 

誰も気づかない。

 

駆動するはBMW S1000RR。

 

独逸が造り出した時速300㎞の黒鉄の馬。

 

本来はサーキット用のそれを、ルーン改造にて無理矢理に私道疾駆。

 

誰も気づかない。

 




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