魔物に転生した俺は、優しい彼女と人間に戻る旅へ出る〜たとえ合成されても、心は俺のまま〜   作:犬型大

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14初めての共闘1

 薬を飲んでカリンの状態も落ち着いた。

 病気だとは聞いていたけれど、思っていたよりも危険な病気であるようだ。

 

 薬の飲み忘れか、なんて言っていたが、これまではあれぐらいの時間ならまだ薬を飲んでいなくとも平気だった。

 いうならば発作の感覚が短くなっている。

 

 それはクリアスに焦燥感を抱かせるには十分すぎる出来事であった。

 

「町の近くにあるダンジョンはオプリクアと名付けられています」

 

 カリンが暴れた次の日、俺とクリアスはダンジョンに向かった。

 クリアスも落ち着いているようには見えるが、カリンに残された時間が少ないことを感じて焦っているのは隠しきれていない。

 

 なかなか今の状況を網羅して教えてくれるような本はなく、移動しながらクリアスが教えてくれるのが一番の情報となっている。

 この世界にはダンジョンというものがある。

 

 中には摩訶不思議な空間が広がっていて、魔物がいる。

 他にも不思議な植物が生えていたり、様々なものが落ちていたりするのだ。

 

 危険はあるものの、時に人に富と名声をもたらす。

 攻略しても消えないというダンジョンも多く、ダンジョンからもたらされる利益を目的に近くに町ができていることもあるらしい。

 

 実はクリアスが住んでいるタストーの町も、そうした経緯から発展した町なのだ。

 

「一応そんなに難しくないダンジョンだと言われてますけど……それでも初心者が挑むのには大変かもしれません」

 

 だがいかに難しくともやるのだという決意が、クリアスの横顔から感じられる。

 

「ダンジョンは三階層になっていて、目的の薬草は一番下の三階にあるらしいんです」

 

「‘つまり少なくとも一番下まではいかなきゃいけないってわけだな’」

 

「ただ薬草だけが目的じゃないです。お金も稼がなきゃいけません」

 

 薬草は薬を作るために必要だ。

 だが薬草があればタダで薬を作ってくれるわけじゃなく、他の材料を含めた材料費や工費などの料金もかかってくる。

 

 普段の生活にだってお金は必要なので、三階層に向かいつつお金も稼がねばならない。

 話を聞けば聞くほど大変で、クリアスには同情してしまう。

 

「あの先がダンジョンですね」

 

 道の脇に看板が立っている。

 『この先ダンジョン。冒険者同士の争い厳禁!』と書いてある。

 

 流石にダンジョンに近づいてくると緊張が強くなってきた。

 ここまで魔物に対しては逃げてばかりで、まともに立ち向かったことなどない。

 

 カリンの件も経て、クリアスがまともに魔法を使えることが分かった。

 そのおかげで自分がどうにかしなきゃいけない、というよりある程度相手を引きつけていれば、クリアスが魔法で倒してくれる可能性があると計画も修正した。

 

「ここがダンジョンオプリクア……実際私も見るの初めてなんです」

 

 家ぐらいの高さしかない小山のふもとに、白い石材を積み重ねて作ったような入り口がある。

 周りの環境からするとあまりにも唐突な人工物だ。

 

 だがそれがダンジョンの入り口だった。

 異様な点はもう一つ。

 

 入り口から奥が見通せない。

 まだ日中の外は明るい。

 

 日は当たっているのに入り口から向こうは闇が広がるように真っ暗なのだ。

 あとはほんの少しだけ不思議な気配を感じる。

 

 ヒゲがザワザワするような、そんな変な感じがする。

 

「結構人もいますね」

 

 ダンジョンに挑む冒険者は俺たちだけじゃない。

 明日の生活のためや未来の一攫千金を狙って、多くの冒険者がダンジョンに入る。

 

 ダンジョンの前にも冒険者の姿が見える。

 他にも布を敷いて、その上に物を広げている人もいた。

 

 ダンジョンに入る冒険者が何か忘れ物をしたとしても、いちいち取りに戻るのはめんどう。

 こうした人はそんな時に必要な物を少し高値で売ってくれるのだ。

 

「‘魔物がいると倍に見えるな……’」

 

 思っていたよりも人がいる。

 ただそれは魔獣がいるからさらに多く見えている側面が否めない。

 

「早速いきましょうか!」

 

 いきなり最下層の三階を目指しはしない。

 クリアスも焦っていてもそこまでのバカではない。

 

 今日は一階から回っていくつもりだ。

 

「‘全く……無茶だけはするなよ?’」

 

「おい、見ろよ……」

 

「女の子一人……はいいとして、連れてる魔物、コボルトだぞ」

 

「‘んっ?’」

 

「止めた方がいいんじゃないか?」

 

「知るかよ。不審者扱いされたらどうすんだ?」

 

 ダンジョンの前に向かっていると、他の人の会話が聞こえてきた。

 クリアスには聞こえておらず、コボルトである俺にはギリギリ聞こえている。

 

「だがコボルトじゃ厳しいだろ」

 

「さあな。それも一つの選択だ。運が良ければ帰ってくるし、運が悪ければ帰ってこない。誰でも同じだよ」

 

 どうやら俺とクリアスのことを話しているらしい。

 クリアスはともかく、コボルトである俺の評価は低い。

 

 コボルトと一緒にダンジョンに入ってクリアスは大丈夫なのかという趣旨の話をしている。

 正直、俺も心配だ。

 

 ダンジョンがどこまで難しく、魔物がどれだけ強く、俺がどれだけ戦えて、クリアスがどれほど動けるのか分かっていない。

 本来ならば時間をかけてダンジョン以外のところで実力を確かめてから挑むべき。

 

 しかしやはり時間がないのだ。

 行くしかない。

 

 俺は俺に戻るため、進む。

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