魔物に転生した俺は、優しい彼女と人間に戻る旅へ出る〜たとえ合成されても、心は俺のまま〜   作:犬型大

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42薬草のために1

「ありましたね」

 

 少数のネズミとの戦いが何回かありながらも三階に降りる階段を見つけた。

 流石に俺もクリアスも三階を前にして緊張が高まる。

 

「降りながら三階について確認しましょうか」

 

 ダンジョンにおいてもっとも安全な場所とは、階段などの階と階の間になる。

 魔物が発生しないし、追いかけても来ない。

 

 今回は階段形式となっているので途中で休むことも簡単だ。

 

「三階も一階や二階と大きく変わりません。なんていうんでしょう……迷路形式? とでもいうんでしょうか」

 

 一階や二階は複雑に通路が伸びていて、まるで迷路のようだった。

 三階に行ってもその構造は変わらない。

 

「三階に出てくる魔物はオークらしいです」

 

 やや急な階段を降りながらクリアスが三階について説明してくれる。

 四足歩行で階段を降りるのはちょっと大変で、話を聞きながらなのは意外と神経を使う。

 

「‘オークか……’」

 

 オークがどんな魔物なのかは俺にも分かっている。

 人と同じく二足歩行の魔物で、顔は豚のように鼻が潰れている。

 

 肌は緑色だったり浅黒い灰色だったりして、力が強くてコボルトやゴブリンよりも上の存在である。

 硬い相手ではないからいけるかなとオークと戦うことを少し想定し始める。

 

「そして目的は薬草です。こちらは消えないオークの死体があって、そこに生えているらしいです。白くて小さい可愛らしいお花だと医師の先生は言ってましたよ」

 

「‘消えないオークの死体……ねぇ’」

 

 死体は全て消えてしまうはずなのにオークの死体が残っていて、そこに花が生えているのも不思議な話だ。

 ついでに怪しい医者の顔も思い出してしまう。

 

「‘三階だな……’」

 

 温度などが変わった感じはないが、初めての空気感にヒゲがひくつく。

 慣れないところに来るとヒゲがピクピクするような感じがするのはコボルトでもウルフでも変わらないらしい。

 

 本能的に新たな脅威を何か感じっているのかもしれない。

 不安か、あるいは闘争本能か。

 

「‘二階よりも地味だな’」

 

 二階の壁は葉っぱが生い茂っていて、全体的に緑色に見える感じだった。

 対して三階の色味は地味だ。

 

 壁は植物と言ってしまえば同じだけど、葉っぱはなくて茶色い枝が絡み合って壁となっている。

 軽く触れてみると二階よりも硬い。

 

 仮に衝突したら二階よりも痛そうだ。

 

「‘……少し広いな’」

 

 通路の幅を見た感じでは二階よりも広い。

 部屋ほどではないが、武器を振り回せるほどの幅がある。

 

「‘今の所静かだな’」

 

 俺はミミに集中してみる。

 二階は雑多な音が色々と聞こえていたのに、三階は静かである。

 

 二階はネズミの気配とネズミを倒そうとする冒険者の気配があった。

 さらには人がいるためなのか、空気が動いて葉がほんのわずかにカサカサと音を立てていた。

 

 そうした音が無い。

 静かに何かが待ち受けているような、そんな雰囲気がある。

 

「行きますよ、ウルフさん」

 

 俺とクリアスはゆっくりと前に進み出した。

 最初は並んで歩き出したが、俺はクリアスを守るように少し速度を速めて前に出る。

 

「いましたね」

 

 角を曲がった先に小部屋がある。

 小部屋の真ん中に座ってボケーッとしているオークがいた。

 

 こちらには気づいておらず、暇そうに天井を眺めている。

 チャンスだ。

 

「行きますか、ウルフさん?」

 

「‘ああ、行かせてくれ’」

 

 頭の中でオークをどう攻撃するのか、何パターンも想定しながらクリアスの目を見つめる。

 オークにも俺の力が通じるのか試してみたい。

 

 ジッと見つめるとクリアスは俺に任せてくれるようで、深く一度頷いた。

 

「‘二足歩行……羨ましいな’」

 

 四足歩行は四足歩行で速かったり力強さもある。

 単純に発揮できる力を考えた時に、四足のパワーはバカにできないと身をもって知った。

 

 でもやっぱり手が欲しいと思う。

 ブタみたいな顔は気に入らないけど、力強さもある中で腕も使えたなら最高だろう。

 

「‘でもあの顔か……’」

 

 ボケっとしたオークの顔はお世辞にもカッコいいとは言えない。

 ウルフの顔はウルフだけど、割とキリッとしてる。

 

 多分ウルフの中でだってイケてるオスの顔だろうと勝手に思ってる。

 オークはオークだ。

 

 イケてるオークになっても見た目は好きになれないかもしれない。

 どこかの世界ではカッコいいオークがいるかもしれないので、否定はしないもののなりたい方ではない。

 

「‘ここで一発……ぶちかましてやる’」

 

 オークよりも今の俺が強ければいい。

 そうすればひとまずオークが羨ましいとか、そんな気持ちも吹き飛ぶはずだ。

 

「‘疾走……!’」

 

 俺は疾走を使って勢いをつける。

 足に魔力が集まって、地面を蹴るたびに速度が上がっていく。

 

「‘ファイヤーボール!’」

 

 オークが俺に気づいた。

 手のひらを俺に向けて、突進を防御しようとする。

 

 けれども俺もただ突撃だけしているわけじゃない。

 俺はツノの先に魔力を集める。

 

 そして火の玉を撃ち出す。

 狙いはオークの手のひら。

 

「おおっ! すごいです!」

 

 炎の玉がオークの手に当たって爆ぜる。

 オークの手のひらが爆発で弾けて、オークは悲鳴のような鳴き声をあげる。

 

 オークの肉が焼ける臭いを置き去りにして、俺は頭を下げてオークに突撃した。

 鈍い感覚がツノに伝わってくる。

 

 俺のツノはオークの左目に突き刺さった。

 メリメリと柔らかい肉を割いてツノが深くめり込んでいく。

 

 根元までずっぷりと突き刺さったことが、ツノの感覚で分かる。

 驚きなのか、オークから低い声が漏れる。

 

「‘まだまだぁ!’」

 

 致命的な一撃だろう。

 だが俺は油断しない。

 

 勢いがついて浮き上がった体をねじって一回転。

 ツノを引き抜きながらオークを飛び越える形で着地して、オークを警戒する。

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