魔物に転生した俺は、優しい彼女と人間に戻る旅へ出る〜たとえ合成されても、心は俺のまま〜   作:犬型大

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45薬草のために4

「ああっ!?」

 

「‘えっ!?’」

 

 襲いかかるタイミングを窺っていると、共食いのオークはまだ動く。

 オークの死体の頭を鷲掴みにする。

 

 頭に生えていた花もグシャリと潰れてしまって、思わず驚きの声を漏らしてしまう。

 

「あ……あぁ……」

 

 共食いのオークは花が潰れるのも構わずオークの頭をねじ切ると、頭蓋骨を引き裂くように割って中身をジュルジュルとすする。

 流石にあれは俺でも気持ち悪いと言わざるを得ない。

 

「花が……」

 

 共食いのオークがオークの脳みそをすすることはまあいい。

 体も食ってるのだから、それぐらいのことだってあり得ないことでもないのかもしれない。

 

 いや、ないな。

 流石に脳みそはすすらない。

 

 ただ、今は共食いのオークが脳みそをすすったことよりも、頭の花が潰されてしまったことの方が問題だ。

 せめて花引っこ抜いて横に投げ捨ててくれたらいいのに、わざわざ握りつぶしてしまった。

 

 ぶっ飛ばしてやりたいぐらいの気持ちだが、花がないならわざわざ共食いのオークと戦う必要もない。

 

「せっかく薬草を見つけたのに……」

 

 クリアスは悲しそうな顔をしている。

 まさか共食いのオークがあんなことするだなんて予想もできなかった。

 

 分かっていたら多少無理にでも攻撃していたのに。

 

「どうしましょうか? あそこは諦めて別を探してみますか?」

 

 共食いのオークの雰囲気は異様だ。

 あまり戦いたいとも思えない。

 

 戦いを避けるという判断を正しくできることも、冒険者として必要な資質である。

 

「‘いや、待て……’」

 

 俺は体を低く、音を立てないように角から体を出す。

 

「‘他にもオークの死体がある’」

 

 通路の先に部屋があるので、様子が見えていないところもある。

 見えている範囲のギリギリのところに何かが見えていた。

 

 足の先のように見えるものがあると思っていたので、少し体を出して確認していた。

 おそらく倒れたオークの足のようだった。

 

 他にもオークの死体がある。

 ならば花がある可能性も十分にありうる。

 

「オーク……ぽそうですね」

 

 クリアスも俺の真似をして部屋を覗き込む。

 俺に隠れるように、背中の上から目だけを出してオークの死体を見つけた。

 

「……うーん、希望はありそうですね」

 

 他にオークの死体があるなら花がある希望があるとクリアスも考えた。

 

「‘さて、どうする?’」

 

 再び角に隠れ、俺はクリアスの判断を待つ。

 きっと今度の判断は正しいはずだと信じている。

 

「……やりしょう。あのオークを倒して、部屋を調べてみましょう」

 

 目を閉じて考えるクリアス。

 少しの沈黙の後、ゆっくりと開いたクリアスの目には決意が見て取れた。

 

「‘よし’」

 

 俺は頷いてクリアスの決意に応える。

 やるなら、やる。

 

「お願いしますね、ウルフさん」

 

 幸いにして、まだ共食いのオークは俺たちに気付いてない。

 今なら先手を取れる。

 

 最初に戦ったオークと同じく、俺が先に奇襲する。

 やると決めたら心臓の鼓動が速くなった。

 

 緊張、不安、戦いの高揚。

 負けるつもりはない。

 

 だが戦いにおいて、絶対なんて言葉はないのだ。

 絶対に勝てるとも言えない。

 

「ウルフさん! 絶対に勝ちましょうね!」

 

「‘…………そうだな’」

 

 絶対はない。

 でも、クリアスと二人なら絶対に勝てるような気になれる。

 

 俺は無邪気に絶対と口にしたクリアスのことを微笑ましい目で見ていた。

 

「‘絶対にしてみようか’」

 

 絶対にしてみせる。

 要するに勝てばいい。

 

 俺は角から体を出して、体を低くして走る力を溜める。

 共食いのオークは吸い終わったオークの頭を片手にぼんやりとしている。

 

 完全に背中向きではなく横向きの共食いのオークは、口の周りが汚く汚れていた。

 

「‘疾走!’」

 

 俺は疾走を使って一気に加速して走り始める。

 部屋まではまっすぐ。

 

 助走はたっぷり取れる。

 一撃で終わらせる。

 

 それぐらいの気持ちで突っ込む。

 

「‘なに!?’」

 

 風と一つになったような速度で走る。

 全く共食いのオークは俺に気付いていない様子だった。

 

 なのに急に赤い目が俺の方を向く。

 共食いのオークの異常な赤い目と俺の目が合ってしまう。

 

 もう俺は止まれない。

 このまま行くしかない。

 

 共食いのオークはぐるりと俺の方に体を向けると、真っ赤な目を見開いて拳を振るった。

 

「‘ファイヤーボール!’」

 

 俺はツノに魔力を集める。

 ツノの周りに炎が渦巻き、視界の上の方に赤がチラつく。

 

 少しでも勢いをつけようと首を振ってファイヤーボールを放つ。

 

「‘くっ!’」

 

「ウルフさん!」

 

 最初のオークのように手を破裂させてやろうとした。

 だが共食いのオークの拳は勢いよく俺のファイヤーボールを突き破る。

 

 目の前に拳が迫ってきて、俺はとっさに首を曲げて拳をかわした。

 このままじゃ先に見つけて奇襲した意味がなくなってしまう。

 

 俺は首を曲げた勢いそのまま体を横に回転させる。

 共食いのオークの足に齧り付いて、疾走と回転の勢いで一気に食いちぎった。

 

 着地が上手くいかなくて地面を少し転がることになったけれど、ダメージはほとんどない。

 

「‘チッ……まずい肉だぜ’」

 

 俺は素早く起き上がると共食いのオークの肉をペッと吐き出す。

 普通のオークの肉は美味かったのに、共食いのオークの肉はまずい。

 

 なんだが腐っているみたいな味がする。

 

「‘……なんかここもくせえな’」

 

 それに部屋の中は臭う。

 肉が腐りかけているみたいな酷い臭いがしている。

 

 鼻にまとわりついてくる臭いはずっと嗅いでいると具合が悪くなりそうだ。

 

「‘あいつらのせいか?’」

 

 部屋の中にはオークの死体がいくつも転がっている。

 花を確認している暇はないが、多分オークの死体から漂ってくる臭いなのだろうことは分かった。

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