魔物に転生した俺は、優しい彼女と人間に戻る旅へ出る〜たとえ合成されても、心は俺のまま〜   作:犬型大

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46薬草のために5

「‘お前はなぜこんなことをする……?’」

 

 よほどの危機でない限り、共食いなんてしない。

 人間も追い詰められればその可能性がゼロではないとはいっても、極限状態まで追い詰められなければならないだろう。

 

 だが共食いのオークに極限状態のような感じはない。

 むしろ脳みそをすするなんて、食事を楽しんでいるような素ぶりがあった。

 

「‘それに……’」

 

 周りに倒れているオークはどれも少し古い。

 加えてその死因はどれも同じもののように見える。

 

「‘お前が殺したのか?’」

 

 撲殺。

 ひどく殴られて死んだようなオークばかりだ。

 

 人間がこんなふうにオークを倒しはしない。

 魔獣という可能性はあるけれど、魔獣が倒したとして死体が消えないのもおかしい。

 

 となると共食いのオークが殺したのだ。

 

「‘何のために……まさか、食うためか?’」

 

 共食いのオークが俺に迫る。

 俺は共食いのオークの攻撃をかわしながら、どうしても気になる疑問を思考する。

 

 共食いのオークが仲間を殺したとしたら、何のためだ。

 殺してしまって目の前に食べられそうなものがあったから食べたのかと思ったけれど、逆なのかもしれない。

 

 食べられそうなものがあったから、仲間のオークでも殺した。

 つまりは食べるためにオークを殺したということになる。

 

「‘どの道狂ってるな’」

 

 何であれオークの中に同種の仲間を食らう異常種が現れたのだ。

 食べるために仲間を殺した。

 

「‘腐りかけが一番美味いってか?’」

 

 その上どの死体もまだ綺麗なのに、もう腐りかけている。

 すぐには死体を食わずに放置していたのだろう。

 

 新鮮なオーク肉よりも少し時間を置いてから食べるこだわりまで見せているのだ。

 俺には理解の及ばない、化け物の思考をしている。

 

「‘気持ち悪りぃ……’」

 

 赤い目をした共食いのオークのスピードやパワーは、通常のオークより一段階上だ。

 かすめる拳に擦れて俺の毛先に火でもついてしまいそう。

 

 ただそれでも知能はオーク。

 大きく腕を振り上げ、大きく振り回す攻撃は動作が読みやすい。

 

 攻撃が速い分余裕はないけれど、かわすだけなら問題はない。

 

「ファイヤーランス!」

 

 俺が共食いのオークを引きつけている間に、クリアスが魔法を放つ。

 俺のことしか見えていないオークの背中に真っ赤に燃える炎の槍が突き刺さった。

 

「‘怯みすらしないのかよ!’」

 

 炎の槍が突き刺さったほんの一瞬、ビクンと体を震わせる。

 だがそれだけで共食いのオークはすぐさま俺への攻撃を再開する。

 

 痛みに対する鈍さも一段階上のようで、非常にめんどくさい。

 

「‘はっ!’」

 

 振り下ろされた拳をかわして、爪で斬りつける。

 やや黒ずんだドロリとした血が傷口からにじむ。

 

「‘このままでもよさそうだな’」

 

 知能が相変わらずなことは助かった。

 離れたクリアスを狙うという知能はないようで、目の前の俺ばかり追いかけてくる。

 

 痛みを感じないということと、ダメージがないということは別だ。

 炎の槍は肉を焼き、背中に空いた穴からは血が流れる。

 

 普通のオークと違って焼ける臭いも臭くて、俺の鼻にもダメージはあるけれども、クリアスの魔法で確実に共食いのオークにダメージは入っているはずだ。

 

「いきますよ!」

 

 俺に当たらないようにとファイヤーストームのような広範囲の魔法は使わない。

 確実に炎の槍や玉を確実に共食いのオークに当てていく。

 

「‘うわっ!? 汚ねぇ!’」

 

 クリアスの魔法が共食いのオークの腕を貫いた。

 黒っぽい血が流れて、何を思ったのか共食いのオークは腕を振って俺に向かって血を飛ばしてきた。

 

「‘……あれ?’」

 

 共食いのオークの血が壁に当たる。

 剥き出しの茶色い枝の壁がジュワッと音を立てて、血の触れた枝が溶けてしまう。

 

 視界の端でそれを見ていた俺は思わず驚いて、自分の毛についた共食いのオークの血を見る。

 

「‘溶け……てはいないか’」

 

 壁は溶けたが、俺の毛は無事だった。

 一瞬ヒヤリとした。

 

 木が溶けて酸っぱいような臭いが漂ってくる。

 これもまた嫌な臭い。

 

「ウルフさん!」

 

「‘疾走!’」

 

 毛の無事を確認している間に共食いのオークが俺に飛びかかってきていた。

 俺は疾走で一気に加速して共食いのオークの攻撃をかわす。

 

「‘何だか知らないが俺には通じないようだぜ!’」

 

 多分共食いのオークは血で何かしようとした。

 けれども俺には通じなかったのだ。

 

 何をしようとしたのかは知らないが、飛びかかるなんて動作が大きい攻撃をしたから隙だらけになっていることは分かる。

 

「ウォーターバインド!」

 

「‘クリアス、ナイスだ!’」

 

 クリアスが魔法を使った。

 ただこれまでと同じく攻撃の魔法を放ったのではなく、相手を拘束する魔法を使ったのだ。

 

 共食いのオークの下に青く光る魔法陣が広がり、水が噴き出す。

 まるで亡霊樹の枝のように、水はしなやかに共食いのオークの体に巻き付いていく。

 

「逃しませんよ!」

 

 ギッチリと縛り上げられて拘束された共食いのオークは怒っているような鳴き声をあげて抵抗をみせるが、クリアスも魔力を込めて逃がさない。

 俺はその間に共食いのオークの後ろに回り込んでいた。

 

「‘結構頑丈だが……これならどうだ!’」

 

 クリアスの魔法で全身ボロボロになっているのに、いまだに倒れるような気配はない。

 ここは一発致命傷を狙って攻撃する。

 

「‘食らえ! 疾走!’」

 

 大きく飛び退いた俺は疾走を使って走り出す。

 

「くっ……もう…………限界です!」

 

 共食いのオークが雄叫びを上げて全身に力をみなぎらせる。

 水の拘束が引きちぎれていく中で、俺は地面を蹴って共食いのオークに低く飛びかかる。

 

 俺のツノが共食いのオークの後頭部に突き刺さった。

 けれども硬い頭蓋骨のせいなのか、ツノは半分くらい刺さったところで止まってしまう。

 

「‘これだけじゃないぜ……’」

 

 致命傷、というにはやや浅い。

 しかし俺はこれだけで終わらせるつもりじゃなかった。

 

 魔力を集めると、生き物の体温とは違う温かさをツノに感じる。

 

「‘ファイヤーボール!’」

 

 俺は共食いのオークの頭にツノを突き刺したまま、ファイヤーボールを撃ち出す。

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