魔物に転生した俺は、優しい彼女と人間に戻る旅へ出る〜たとえ合成されても、心は俺のまま〜   作:犬型大

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「うひゃああああ!」

 

「‘クリアスはもうちょっと食べた方がいいな’」

 

 薬草を手に入れた俺たちはすぐにダンジョンを脱出した。

 帰り道は覚えていたので、オークもネズミも無視してともかくダンジョンから出たのだ。

 

 外はもう日が傾いていた。

 茜色に染まる空はダンジョンの重苦しさを忘れさせてくれるようだった。

 

 だがそんな感傷に浸っている暇もない。

 今ならまだ薬屋も空いてるかもしれないとクリアスが言ったのだ。

 

 一刻も早く薬を作ってもらいたい俺たちは、急いで町に戻ることにした。

 そこで俺はクリアスを背中に乗せて走ることを思いついた。

 

 意図が伝わらなくて苦労したけど、なんとかクリアスを背中に乗せることに成功し、疾走も使って俺は町まで走っていた。

 クリアスは俺の背中に抱きつくようにして、振り落とされないように必死になっている。

 

 ダンジョンの中では自分のスピードというものが分かりにくかった。

 しかしこうして外に出て走ってみるとよく分かる。

 

 景色が流れるように過ぎ去っていく。

 クリアスの足なら町に着く頃には薄暗くなっていただろうが、俺の足なら日が沈む前に辿り着きそうだ。

 

「‘落ちんなよ!’」

 

「あ、握力無くなっちゃいます!」

 

「‘その前に町に運んでやるよ!’」

 

「なぁんで加速するんですかぁ!」

 

 俺は地面を蹴る。

 ここまで戦闘で疾走にファイヤーボールと力を使ってきた。

 

 自分の中にある魔力がもう底を尽き掛けている。

 俺も最後の力を振り絞って走る。

 

「あそこ左です!」

 

 遠くに見えていた町もいつの間にか目の前に迫り、俺はそのまま町中に入っていく。

 あまり爆走して人にぶつかるといけないから、疾走は使わず自前の力で駆け抜けていく。

 

 少し投げやりになったクリアスも、速度が緩んで余裕がちょっとだけできた。

 

「着きました!」

 

 クリアスの指示に従って町の中を走ると、緑の液体が入った瓶の絵が描かれた看板がかけられた建物の前に着いた。

 ここが怪しい医者のやっている薬屋だった。

 

 ほんのりと薬の青臭い臭いが漂ってくる。

 

「あっ……」

 

「‘おっと、大丈夫か?’」

 

「ありがとうございます、ウルフさん」

 

 俺から降りたクリアスは足元をふらつかせた。

 体を押し当てるようにして支えてやる。

 

「すいません!」

 

 クリアスはドアをノックする。

 この世界は日と共に生きている。

 

 店をいつ閉めるかは時間で決められているのではなく、店主の裁量に任されている。

 早く閉めてようが誰にも文句は言えない。

 

 まだお店を開けていてもおかしくないが、閉めていてもおかしくないというぐらい時間だった。

 

「なんですか? もう閉店です……おや、クリアスさん。どうかなさいましたか?」

 

 クリアスの思いが通じたのか薬屋のドアが開く。

 相変わらず怪しいサングラスをかけた医者がひょっこりと顔を出す。

 

 クリアスを見て眉を少し上げているが、サングラスのため目は見えなくて感情は読めない。

 声色的には少し驚いているようだ。

 

 ドアが開くと薬の臭いがより強く感じられる。

 俺は薬屋から少し距離をとって待機する。

 

「薬草……採ってきました!」

 

 クリアスは腰の袋を漁って、中からオークの頭に生えていた白い花を取り出した。

 

「ほぅ……本当に採ってきたのですね」

 

 あたかも期待していなかったようにも聞こえる。

 やっぱりなんだか信頼できない。

 

「お金は後で持ってきます! お支払いできますので!」

 

 本当なら冒険者ギルドに先に寄って、素材を換金してお金を確保してからここに来るべきだった。

 ただやはり店を閉めるつもりだったようだし、こちらを先にして正解だ。

 

「…………それを採ってきたということは三階まで行ったということですもんね。お金の問題も、解決できるでしょう」

 

「じゃあ……」

 

「お薬作らせていただきます」

 

「ありがとうございます!」

 

 今すぐ渡せるお金はないけど、三階まで攻略したなら今はなくともお金を稼ぐことはできる。

 医者の温情にクリアスは深々と頭を下げる。

 

「では三日後にまた来てください」

 

「えっ!」

 

「‘三日もかかるのか……’」

 

 医者の言葉にクリアスは驚いた声をあげてしまう。

 

「薬もすぐできるものではありません。成分を抽出し、適正に調合するのにそれぐらいかかってしまいます」

 

「あっ……すいません」

 

 薬を作るのに数日かかってしまうことはしょうがないだろう。

 俺としてはあまり驚くことでもなかったが、クリアスとしてはそんなことも頭から抜け落ちていたようだ。

 

 カリンのことを思えば、今日中に薬草を渡せたのはよかったのかもしれない。

 

「お金は明日でも……薬の受け取り時でも構いません。それでは失礼しまう」

 

「あっ、はい。ありがとう……ございます」

 

 優しいんだか、冷徹なんだか分からない。

 医者は薬草を受け取ってドアをバタンと閉めてしまった。

 

「……冒険者ギルドに行きましょうか」

 

 三日と言われた以上クリアスにはもうどうすることもできない。

 医者の機嫌を損ねてもいいことなどないので、クリアスは素直に引き下がることにした。

 

 俺とクリアスは冒険者ギルドに向かった。

 冒険者ギルドの方は酒場も併設しているので遅くまでやっていて、一仕事終えた人でごった返している。

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