魔物に転生した俺は、優しい彼女と人間に戻る旅へ出る〜たとえ合成されても、心は俺のまま〜   作:犬型大

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64名付け2

「炎の神、フェルニド。フェルとかどうですかね?」

 

「‘ほう? なかなかいいな’」

 

「大地の神、オリネア」

 

「‘うーん、ちょっと女性っぽいな’」

 

「‘ちょっと早くしてくださいよー。自分も名前欲しいっす’」

 

 うるせえ、コブンリン。

 コブンリンは知らないのかもしれないが、俺にとって名前は重要だ。

 

 合成で俺は消えないということが分かった。

 つまり一度つけた名前は、今後も使われるということになる。

 

 ダサい名前なんて、つけられない。

 そりゃ慎重にもなるさ。

 

「フェルが反応良かったですね。あとは……功績が語り継がれて人から神になったと言われる戦いの神様、ラークエリド……」

 

「‘クリアス! 今なんて言った’」

 

「え、ええ? どうしたんですか、ウルフさん」

 

 俺は目の色を変えて、クリアスに顔を寄せる。

 突然の行動にクリアスは驚いて目を丸くする。

 

「ラークエリド様がどうかした……のですか?」

 

「‘いい名前だ! それからとってくれ!’」

 

 俺、興奮。

 これはチャンスだ!

 

 ラークエリドという名前に俺はすごく惹かれた。

 

「‘上手くいけば……俺の名前に辿り着けるかもしれない! クリアス! この名前からどうにか俺の名前を導くんだ!’」

 

「ど、どうやらこのお名前が気に入ったようですね」

 

 俺のハァハァとした荒い息でクリアスの前髪が揺れる。

 もちろんラークエリドという名前そのものがいいというわけじゃない。

 

「‘ラク、だ! いけるだろ!’」

 

 俺の名前はラクである。

 ラークエリドという名前は上手くいじれば俺の名前に辿り着く可能性が高い。

 

 むしろここで俺の名前に辿り着かずして、いつ辿り着くのだ。

 ここを逃すことはない。

 

 クリアスと築いてきた絆を発揮する時がきた!

 

「じゃあ……お名前そのままラークエリド……違います?」

 

「‘違う!’」

 

 ラークエリドもそれなりにかっこいい名前だとは思う。

 だが、今の第一候補は名前そのままじゃない。

 

 俺はブンブンと首を振って否定する。

 

「‘アニキ、必死っすね’」

 

「‘るせぇ!’」

 

 俺の名前に辿り着くチャンスなのだから、必死にもなる。

 

「じゃあ……エルドさんというのはどうですか?」

 

「‘ちがーう!’」

 

 なんでここにきて後ろの方を取るのだ。

 前でいい。

 

 なんならラークでもほぼ俺の名前である。

 

「うーん? ではでは……ラークさん? ラクさん、ていうのも……」

 

「‘それだぁ!’」

 

「きゃあっ!?」

 

 体勢としてはクリアスは俺に寄りかかっていた。

 興奮して急に動いたせいで、クリアスはバランスを崩してベッドに倒れ込む。

 

 俺はそのまま倒れたクリアスに覆い被さるようにして目を見つめる。

 

「‘むほほ! アニキ積極的!’」

 

 形的には俺がクリアスを押し倒している。

 コブンリンはそんな様子をニヤニヤして見ている。

 

 お前はおっさんか。

 

「ど、どっちですか? ラークさん? ラクさん?」

 

「‘ラク、だ’」

 

 真っ直ぐに目を見つめるとクリアスは少し頬を赤くする。

 もはや正解は出ている。

 

 伝われ、俺の思い。

 

「………………ラークさんですね!」

 

「‘違うわい!’」

 

「うにゅ!?」

 

 なんで二択で外すかな。

 俺は違うという意思を示すためにクリアスの顔面に肉球を押し付ける。

 

「ラ、ラクさんでふか〜?」

 

 グルグリと肉球を押し付けてやると、やっとクリアスに俺の意図が伝わった。

 

「‘そうだ。俺は、ラクって言うんだ’」

 

「ラクさん……がいいんですね?」

 

 尻尾が勝手に振られてしまう。

 ようやく、クリアスに俺の名前を伝えることができた。

 

 クリアスにとっては俺が気に入った程度に考えているのかもしれないけど、ラクというのが俺なのだ。

 

「じゃあ、これからラクさんとお呼びしますね」

 

 この期に及んでもさんをつけて呼ぶのか。

 周りの人からしたらちょっと不思議だろう。

 

 だがそれもクリアスっぽい。

 

「‘次はコブンリン……あっ’」

 

「‘なんすかその呼び方!’」

 

 つい口が滑った。

 その後、コブンリンの名前はヘルンというものに決まった。

 

 オスかメスかもわからないような名前だが、コブンリンはそれが気に入ったらしい。

 やはり手があると便利なのはそれがいい、それは嫌という意思を伝えやすいところにもある。

 

 ともあれコブンリンと呼ぶと怒られるので、ヘルンと呼んでやることにはした。

 俺も名前がラクになってご機嫌だから、そうしてやろう。

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